オフィスの改善を続けることが働き方改革につながるわけだが、そうした改善の成果を見られる場所がある。コクヨの「ライブオフィス」だ。
現在、全国28カ所にあるライブオフィスは、50年前の1969年に大阪本社オフィスを全館ショールームにしたことに端を発する。同社では、自社商品の活用方法などがひと目で分かる「生きたショールーム」を見学してもらうことにより、オフィスのトータル提案を長らく行ってきた。
その後、全国の拠点にも展開して、より良いオフィスづくりの一助になるよう社外からの見学を受け付けてきた。そんな全国にあるライブオフィスの中心的な役割を担うのが、霞が関ライブオフィスだ。
「『オフィスカイゼン委員会』のメンバーが中心になって、働く環境の改善を推進しています。月1回の会議を開いて意見交換をしたり、従業員の意見やアイデアを吸い上げて実践することで、働きやすい環境づくりを行っています。この委員会が、より良い働く環境をつくるための『運用』の中核を担う組織と言えます」(田島氏)
霞が関オフィスを見学すると、ちょっとした配慮や気遣いが至る所に散りばめられていることに気付く。例えば、営業担当者が利用するフリーアドレスデスクの至近に、商品の受発注担当者の固定席を配置。この配置も、両者がコミュニケーションを図りやすいようにと考えられたレイアウトの一例だ。
「ツール」の使い方もユニークである。ハサミやパンチング、ステープラーなど使用頻度の少ない文具は個人所有ではなく共有化している。ウレタンを各ツールの型に切り取った台を用意し、収納場所を固定。すると使用後は元に戻す習慣がつく。また、この場所には自然に人が集まり、コミュニケーションが自然と促される。
その他にも、立って会議ができるデスクをオフィスの中央に配置したり、逆にオフィスの隅には集中して業務ができるよう、外部から遮断された小さなブースを設けたりしている。
このように、従業員が働きやすくなる工夫や配慮を「見える化」しているため、社外からの見学者は自社の改善策のヒントを得やすいのだ。
霞が関ライブオフィスは従業員約500名が働く大規模なオフィスだが、同社には20~50名規模や100名前後の拠点など、さまざまな規模のライブオフィスがある。自社の規模に近いライブオフィスを見学してもらい、働く環境づくりのヒントを得てほしい、という考えからだ。
自社のオフィス改革を進めるには、オフィスカイゼン委員会のようなセクションの設置も必要不可欠になる。そうした活動を継続していくには、いくつかのポイントがあると田島氏はアドバイスする。
「まずは上司が理解を示すこと。オフィスの改善は働く一人一人が日頃に感じている不便などを改善していくための活動ですから、ボトムアップで行います。その改善活動に上司が理解を示さないとなかなかうまくいきませんので、上司の支援は不可欠。加えて予算も獲得して活動していただきたいですね。予算といってもお菓子代程度で十分。打ち合わせ時の飲食費があれば、打ち解けた雰囲気で改善活動を始められます」(田島氏)
さらに、「活動を続けるには堅苦しい雰囲気ではなく、ユーモアを交え、楽しみながら改善していくことも大切」と田島氏は指摘する。指摘の通り、コクヨの霞が関ライブオフィスでは、従業員に協力を依頼する事柄は動物の「サイ」をキャラクターに用いたカードを貼り、「○○○をしてくだサイ」といったようにお願いをする。
逆に、ルールが守られていない場合はデビルマークがついたカードで「デビル多発地帯危険サイン」を示すなど、ユーモアに富んだ表現でコミュニケーションを取りながら、働く環境の改善を促す。こうした遊び心が、従業員の協力を仰ぎやすい雰囲気づくりに役立つというのだ。
働き方改革には制度やITツールだけでなく、「働く環境」が重要であることをコクヨの取り組みは教えてくれる。
PROFILE
- コクヨ㈱
- 所在地:大阪府大阪市東成区大今里南6-1-1
- 創業:1905年
- 代表者:代表取締役社長 黒田 英邦
- 売上高:3151億円(連結、2018年12月期)
- 従業員数:6784名(連結、2018年12月末現在)