課題が浮き彫りになったら、次に解決策を打つ。エンゲージメントを持続させるには、働き方を含めた業務改善や適切な人材マネジメントが必須である。その際に重要なのが、経営者のリーダーシップだ。
「リーダーに期待される三つの行動は、『コミュニケーション』『従業員の巻き込み』『従業員に対するサポート』です。まずはリーダーが将来の展望を示し、企業ビジョンを繰り返し共有して従業員に浸透させる。次に、意思決定の機会になるべく従業員を参加させ、対話を重ねることが重要です。そして、業務の阻害要因を取り除くとともに、将来に向けたスキル向上の機会を提供するような支援を行うことが期待されます」(市川氏)
このような取り組みを積極的に行うことが、金銭的な報酬のみならず、仕事そのものの面白さや働きやすい環境、組織文化、能力・キャリア開発、ワークライフバランスといった非金銭的な報酬を合わせた、魅力あるトータル・リワード※の提供につながり、結果として持続可能なエンゲージメントが実現する。
「設問項目の設計、調査サイトのセットアップ、分析・集計、調査結果の活用までうまく回そうと考えると、実施に向けてのハードルが高い」と思う経営者もいるだろう。その場合、調査サイトのセットアップや調査結果の表示などを容易にコントロールできる調査システムを活用し、設問数や調査対象社員を絞って、短期的に注目テーマを定点観測する調査も選択肢となる。WTWが提供する調査システムでは、一般的な設問項目のテンプレートや、他社との比較を可能にするベンチマークデータを柔軟に活用できるので、さまざまな視点から自社の従業員エンゲージメントや職場環境の現状を知ることができる。
従業員に残業削減を無理強いするといった表層的な改善ではなく、従業員がやりがいを持って主体的に働くことで業績を向上させる。そんな働き方改革に挑戦したい企業にとって、従業員エンゲージメント調査は有効的なアプローチと言える。
※従業員への報酬(リワード)において、金銭と非金銭的なものをうまく組み合わせる考え方
Column
意外と低い日本企業の従業員エンゲージメント
WTWが世界中で実施している従業員エンゲージメント調査結果を見ると、残念ながら日本企業のレベルはそう高くない。例えば、「自社を『良い職場だ』と他人に推奨できるか?」との設問に対する肯定的な回答率の平均は、欧米主要国のみならず、アジアの他国と比較しても7割程度の水準にとどまっている。
また、同社のグローバル調査によると、従業員エンゲージメントに影響を与えると判断される上位五つのテーマは、「経営トップのリーダーシップ」「ゴールや目標の明確さ」「直属上司」「企業イメージと信頼性」「ワークライフバランスと柔軟性」。だが、日本の調査結果では「経営トップのリーダーシップ」がトップ5に入っていない。
「回答には国民性も影響していると思います。例えば、日本人は実際の状況を想定しながら、他人に自社を推奨する機会は『ない』と回答。一方、海外の企業では、知人を採用候補者として推薦する制度があったりしますので、より日常的なこととして捉えていると思われます。他の設問についても、日本で働いている方々のポジティブな回答は総じて低めになる傾向がありますが、それだけで日本の従業員エンゲージメントに問題がある、職場環境や評価・報酬制度に問題がある、とは一概に言い切れません。ただし、それを考慮しても、リーダーシップや権限委譲、評価・報酬、業務の生産性などについて、日本が世界に後れを取っているのは否めないのではないでしょうか。特にリーダーシップについては、もっと経営者が自社の将来像をしっかりと把握して、目標やミッションを従業員に伝える必要があるのかもしれません」(市川氏)
【エンゲージメントと相関の高いテーマ】
1.経営トップのリーダーシップ
2.ゴールや目標の明確さ
3.直属上司
4.企業イメージと信頼性
5.ワークライフバランスと柔軟性
PROFILE
- ウイリス・タワーズワトソン(Willis Towers Watson PLC)
- 所在地(東京オフィス):東京都千代田区内幸町2-1-6 日比谷パークフロント13F
- 設立:2016年
- 代表者:CEO ジョン・ヘイリー
- 売上高:86億USドル(2018年12月期)
- 従業員数:約4万5000名(2019年2月現在)
多様な価値観が生まれ、働き方が変わる中で、時代に合わせて企業が変化する時代になりました。その中で重要となる明確な指標を、タナベコンサルティングがエンゲージメントの分析・診断・コンサルティングを通して、人的資本経営への変革を支援します。
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