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コンサルティング メソッド
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タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
コンサルティング メソッド 2023.07.10

ブランドビジョンで実現する価値の最大化 ストラテジー&コンサルティング事業部

世の中にあふれる「ブランド」

ブランドという言葉を聞かない日はない。ブランドは元々、「牧場の所有者が他者の家畜と自分の家畜を区別するために焼き印を施す行為」を表す北欧の言葉に由来すると言われている。古くから自社と他社を何らかの情報によって区別するということは多く行われてきた。しかし、インターネットやスマートフォンが発達した現在において、ブランドに関する情報はあまりに多く、ブランドは世の中にあふれている。 ナショナルブランド、プライベートブランド、ハイブランドなど、ブランドの種類は数多く存在し、それぞれのブランドによって表現される企業・商品・サービスは数え切れないほど世の中に提供されている。 そのため、コモディティー化(一般化)しているブランドも多く存在するのが実情だ。企業が提示するブランド固有の付加価値の多くが、顧客(ユーザー)からはうまく認識されず、競争優位性を生み出せていない。その結果、同一仕様のブランドが価格の優劣のみで選択される状況になっている。つまり、企業の提示している「ブランド」はその意味を成していないものが多いのである。

差別化されたブランドの共通点

多くのブランドがコモディティー化している一方で、顧客から愛され、付加価値を有し、他と明確な差別化を図れているブランドも存在する。なぜその企業は、差別化を実現できているのか。それは、ブランドの目指す姿を明確にすることで理解してもらい、社内外に浸透させているからである。その目指す姿を「ブランドコンセプト」または「ブランドビジョン」と言う。 ブランドコンセプトとは、自ブランドが約束する顧客ベネフィット(顧客が感じる知覚価値)や実現したい世界観を一言でまとめた言葉である。コーヒーチェーン店のスターバックスは「サードプレイス」、日用衣料品のグンゼは「明日をもっと、ここちよく」、キャンプ用品のスノーピークは「人生に、野遊びを。」というコンセプトを掲げている。このコンセプトを全ての活動の軸にすることによって、顧客に愛される付加価値の高いブランドを実現しているのである。 ブランドビジョンとは、ブランドのコンセプト、目指す未来像や理念・ミッション、価値創造ストーリーを言語化したものである。 例えば、飲料・医薬品メーカーのキリンホールディングスは、2027年に目指す姿を「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる」、大手ゼネコンの大林組は「MAKE BEYOND つくるを拓く」、通信機器事業のNTTドコモは「あなたと世界を変えていく。」というビジョンを掲げている。ブランドコンセプト同様、このビジョンを企業活動の軸に据えることで、顧客に愛される唯一無二のブランドを築いている。 顧客へのメッセージ要素が強いブランドコンセプトに比べて、ブランドビジョンは自ブランドがどのような姿になりたいかという社員向けのメッセージ要素が強い。どちらを用いるかはブランドの目的や考え方によって異なるが、成功するブランドの共通点は、目指す姿であるブランドコンセプトやブランドビジョンが社内外に浸透し、それに基づく企業活動が日々実践されていることにある。好例としてカトープレジャーグループが挙げられるだろう。

ブランド価値を最大化するブランドバリューチェーン

前述の通り、ブランドコンセプトやブランドビジョンを定義し、社内外の人々とコミュニケーションを取ることにより、価値の高いブランドを築くことができる。しかし、それらを企業活動に落とし込み、一貫性を持たせることは容易ではない。実際、コモディティー化しているブランドの多くが、この一貫した活動を実現できていない。 では、ブランドビジョンを企業活動に実装する際に考えるべきポイントは何か。これを定義したものが「TCGブランドバリューチェーン(新・ブランディングの7つのステップ)」(【図表1】)である。

【図表1】ブランド価値を最大化する「TCGブランドバリューチェーン(新・ブランディングの7つのステップ)」 ブランド価値を最大化する「TCGブランドバリューチェーン(新・ブランディングの7つのステップ)」 出所:タナベコンサルティング作成

自ブランドが保有するブランドバリューを基に、ブランド価値を整理し、自ブランドの目指す姿としてブランドビジョン(ブランドの目指す姿・価値創造ストーリー)を新しく設定する。このブランドビジョンを企業としてデザイン化するため、ブランドのビジネスモデルとブランド名・ロゴなどのブランドアイデンティティーに落とし込む。 その後、ブランドを築くプロセスを設計した上で、インナーとアウターに向けたブランディングアクションを具体化する。 これらの手順を踏みながら、自ブランドを設計・具体化するプロセスが「TCGブランドバリューチェーン」である。この連鎖した考え方・活動を行うことにより、ブランド価値は最大化できる。

ブランドバリューチェーン検討のステップ

ステップ1:ブランドバリュー分析 このプロセスのポイントは、自ブランドの現在保有するブランドバリュー(付加価値要素)を明確にすることである。自ブランドの強みと現状を正しく認識するため、どのようなブランド価値を提供するかを検討する前に、ブランドの現状を整理する。なお、新規ブランドを検討する場合は、ブランドの母体となる企業の分析を行う。 ① ブランドポジション 自ブランドの対外的・相対的な位置付けである。自ブランドと競合ブランドを、提供価値基準に基づき整理することで、自ブランドが顧客に提供する付加価値の要素を明確化する。 ② ブランドコアコンピタンス 自ブランドの付加価値を生み出す、他社にまねできない核となる能力(強み)である。バリューチェーンマッピングなどにより整理することで、付加価値の要素を明確化する。 ③ ブランディングプロセス 自ブランドの付加価値を生み出す、具体的な企業活動や仕組みである。具体的な活動を整理することで、付加価値が生まれるプロセスを明確化する。 ステップ2:ブランドキュレーション このプロセスのポイントは、棚卸ししたブランドバリューを基に、自ブランドが提供したい顧客にとっての価値を絞り込むことである。絞り込みができていないブランド価値を設定した場合、理想が高くなりがちで、机上の空論となり、実現性が低くなる。自ブランドが顧客に提供したい価値は何か、どのような存在でありたいかを具体化すべきである。 ① ブランドベネフィット 自ブランドが約束する顧客に対しての提供付加価値である。これを考えるときには、ブランドバリューの棚卸しで整理した自ブランドが現在持つ価値を、“顧客に約束する価値=利益”という視点で昇華させる。顧客にとっての提供価値・利益のうち、どの要素を重点に置くかが重要である。また、“自社・自ブランドらしい提供価値”という独自性の視点でキュレーションを行うことも重要である。 ② ブランドターゲット ブランドベネフィットを最も求めている(最も提供したい)ターゲットは誰かを定める。つまり、自ブランドが対象とするターゲットはどのような顧客なのかという視点で考えることである。一般的には、マーケティングにおけるセグメンテーション(地理的・人口動態・心理的)の考え方で設定すると良い。また、このブランドターゲットを具体化するプロセスを通して、ブランドベフィットをさらに洗練化・具体化することができる。 ③ ブランドパーソナリティー 自ブランドを人間に例え、疑似的な人格(パーソナリティー)を設定することである。これにより、ブランド価値の具体的なイメージを確認すると同時に、ブランドベネフィット、ブランドターゲットに対するキュレーションの方向性を確認できる。特に、プロジェクトなど複数のメンバーでブランドを検討する際には、このプロセスで議論を深めることで、ブランドビジョン策定以降の考えの基礎となるブランドに対しての捉え方を統一できる。 ステップ3:ブランドビジョン策定 ステップ1・ステップ2での検討内容を基に、ブランドビジョンを策定する。構成要素は、①ブランドの目指すべき姿(定性・定量目標)、②ブランドコンセプト(ブランドの目指す世界観)、③ブランド価値創造ストーリーなどである。 この際に考える「価値創造ストーリー(ブランドストーリー)」とは、ブランドビジョンを実現するための自ブランドの考え方を物語としてまとめたものである。一般的には、自ブランドのブランドにまつわる歴史、社会との関わり、創業者の思い、製品のこだわりなどを、物語として長文でまとめる。ストーリー形式でまとめることで、ブランドビジョンの具体的なイメージを社内外に認知させやすくなる。 ステップ4:ブランドデザイン ステップ4からは、ブランドビジョンを実現するための要素を具体化していく。まずは、大きなブランドの方向性を定めるためにブランドを「デザイン」する。 このプロセスでは、一般的な“デザイン”としてイメージされるブランドアイデンティティー(ネーミング・ロゴ・タグラインなど)だけではなく、ブランドビジョンを実現するためのブランドビジネスモデルも見直すべきである。既存のビジネスモデルではブランドコンセプトやブランドビジョンを実現できない場合が多くあるからだ。 この段階で、企業としてのビジネスモデルやブランドの事業戦略を見直し、ブランド価値を最大化するためのビジネスモデルと戦略を再設計すべきである。 ステップ5:ブランディングプロセス設計 このプロセスでは、ブランドビジョンを実現するためのブランドの骨格を設計する。(【図表2】)

【図表2】ブランディングプロセス設計 ブランディングプロセス設計 出所 : タナベコンサルティング作成

①顧客に提供を約束する差別化された具体的な付加価値であるブランドプロミスバリュー、②ブランドプロミスバリューを生み出すための対外的・対内的企業活動、③顧客が自ブランドを感じる主な接点。いつ・どこで・どのように・どの程度の頻度でコアタッチポイント(顧客接点)を持つかを考える、④ブランドイメージを築き上げるための、顧客とのコミュニケーション方法、⑤顧客が正しくブランドプロミスバリューを感じ、正しいブランドイメージを持つための、ブランドの品質管理・マネジメント方法などである。  一般的には、ブランドコンセプトやブランドビジョンが定まった段階で、後述のインナー・アウターブランディング活動に移行することが多い。その際にブランド価値が認知される顧客接点と、その顧客接点の質を高める機能をどのように持つか、そもそも顧客価値が具体的にどのような内容で提供されるか、どのように顧客とコミュニケーションを取りたいかの定義が曖昧だと、結果的にブランド価値を高められない場合が多い。 また、ブランディング活動の品質を管理するためのマネジメントシステムも、この時点で設計する必要がある。 ステップ6:ブランディング施策策定 ステップ7:ブランディング施策実行 最後に行うことが、社内外に向けたブランディング活動である。これは、社内向けに行われる「インナーブランディング」と、社外向けに行われる「アウターブランディング」の2つに分けることができる。 また、ブランドの位置付けにより、企業自体のブランディング活動である「コーポレートコミュニケーション」と、対象サービスブランドのブランディング活動である「サービスコミュニケーション」を行う場合があり、それぞれアクションの種類が異なる。 ブランディングアクションを行う際には、その品質管理が重要となる。特にアウターブランディングにおいては、自部門のみではなくブランド関係者全員がブランドビジョンを正しく理解し、それに沿った正しい行動を行わなければならないため、アクションの品質は常にチェックが必要である。 そのため、ブランディングアクションの前(ステップ5)において、ブランドマネジメントを行う組織とブランディングのルール策定を行うことが重要となる。そのブランドマネジメントシステムを中心に、企業の機能としてブランディングアクションを行うことにより、ブランドは日々構築されていく。 以上が、差別化されたブランドを築くためのフレームワーク「TCGブランドバリューチェーン」である。この要素・プロセスを着実に歩むことにより、唯一無二のブランド構築をしていただきたい。

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