ジュニアボードの取り組み方法は、大きく4つのタイプに分かれている。(【図表3】)
【図表3】ジュニアボードの目的別4タイプ
1つ目は、中長期ビジョンを策定する「ビジョン構築型」である。簡単に言えば、自社のミッションや今後の方向性と市場動向を押さえた上で、中長期ビジョンを描くものだ。
2つ目は、「インプット重視型」のジュニアボード。「働き方改革」など、会社の抱える具体的な経営テーマを定め、全社活動として取り組むためにジュニアボードを活用する方法である。
3つ目は、「アウトプット重視型」のジュニアボードである。新規事業などの事業戦略の構築にウエートを置いたもので、自社の強みを明確にして市場調査を行い、新規事業を提案するタイプだ。この場合、ジュニアボードでの提案後も、新規事業の立ち上げ・推進段階まで展開するため、事業経営者・経営者チームをつくるのに適している。
4つ目は「ビジネススクール型」のジュニアボードである。経営のイロハから事業戦略・計画の立案方法のノウハウまでをインプットし、最終的にはボードメンバー各人が中期のロードマップを作成する。自社の課題に応じ、会社単位で考えるケースや、自部門に絞ってロードマップを描くケースなどがある。
次に、ジュニアボード運用の際の5つの留意事項について押さえておきたい。
❶ジュニアボードメンバーの選任
基本的に社長が人選し、役員会が承認する。選任基準を文書化し定着させる。
❷各部門とのコンセンサスと優遇措置
メンバーは原則、ジュニアボード職務が優先できるように各部門との合意を取り付ける。これにより実務業務を下位者に委譲し、組織力の向上にもつなげる。
❸メンバー構成
6~8名程度が望ましい(コーディネーターとして外部コンサルタントなどを活用)。
❹取締役会の対応
取締役は必要に応じてオブザーバーとして参加し、ジュニアボードの目的を統轄する。また、ジュニアボードからの提言事項は役員会で討議し、ジュニアボードに回答する。
❺情報の共有化
ジュニアボードの進捗状況を定期的に社内へ広報する活動を行い、情報の共有化を図る。
これまで「目的別」の4タイプを見てきたが、最後に「自社の特性別」のパターンを紹介したい。ここでは、現社長が創業者か後継者か、またオーナー経営(同族経営)かそうではないか、の4パターンについて見ていく。(【図表4】)
【図表4】自社の特性に合ったジュニアボードが必要
まず1つ目は、創業者でありオーナーのパターンだ。この場合、社長は「自分以外には事業戦略を考えることはできない」と思っていることが多い。そのため、事業戦略ではなく「経営戦略」についてテーマセットをしたジュニアボードがお勧めである。
2つ目は、創業者で非オーナーのパターンだ。具体的には、社内ベンチャーや新規事業で創業した社長などが該当する。この場合、社長は自分自身が事業戦略を立案し、経営も実践してきているので、社員にも同様の経験をさせたいと思っていることが多い。そのため、事業戦略立案から経営までを経験できるジュニアボードが適している。
3つ目は、オーナー家の後継経営者のパターンである。この場合、オーナーの後継経営者だけではなく、先代経営者にも配慮した内容のジュニアボードが良いだろう(先代経営者の考えや意思を落とし込んだ内容など)。
最後に4つ目は、非オーナーの後継経営者のパターンである。上場・中堅企業に多いパターンだが、経営者はオーナーではないため一存で物事を決めず、会社の意思決定機能である「取締役会」などを経て取り組んでいる。そのためジュニアボードでのアウトプットも、取締役会などに提言する必要がある。
この4パターンを踏まえ、自社の特性に合った取り組み方を検討していただきたい。