中長期ビジョンは10年などの長いスパンで自社のありたい姿を表すのに対し、中期経営計画は3~5年で達成を目指す計画である。
中長期ビジョンと中期経営計画の整合性を取りながら、3年×3回転、もしくは5年×2回転などで設計することにより、中期経営計画が中長期ビジョンのロードマップとして運用され、長期的な視点で活動を行っていくことができる。また、イノベーションを起こしやすい企業風土の醸成にもつながる。
事例を1つ紹介しよう。長野県岡谷市に本店を置く諏訪信用金庫は、地域に根差した営業活動を行う信用金庫である。同金庫は、以前からビジョンや中期経営計画を策定していたが、人口減少をはじめとする地域環境の変化を背景に、「第三者の視点を入れながら、自社の新しい価値観を創造していきたい」という理由で、タナベ経営のコンサルティングをスタートした。
タナベ経営が事前に実施した調査項目は、現状と将来のマーケット分析、事業・収益構造・組織マネジメントという3つの切り口からの内部分析である。その後、中長期ビジョン案と中期経営計画の戦略テーマを提示し、同金庫とディスカッションを実施した。
最終的に、同金庫は社内で話し合いを進め、意思決定を行った上で中長期ビジョンを決定した。新しいビジョンは、「ファーストコールしたくなる身近で元気な信用金庫~一歩踏み出すあなたを応援します~」である。「困ったときには諏訪信用金庫を思い出して、相談できるような信用金庫へ変革しよう」という意味が込められている。
企業のビジョンを決めるのは外部の人間ではなく、経営トップであり、幹部社員であり、一般社員であることを忘れてはならない。自社の中長期ビジョンを策定する際、ぜひこれらのポイントを取り入れ、サステナブルな未来経営モデル構築の第一歩としていただきたい。
「TCB(チームコンサルティングブランド)」とは、専門分野のスペシャリストからなる顧客最適のチームを編成し、迅速かつ的確な解決策の提案を可能とする、タナベ経営独自のコンサルティングメニューです。