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コンサルティングメソッド
コンサルティング メソッド
タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
コンサルティングメソッド 2021.03.01

先端技術を駆使し、サステナブルなアグリへ:水谷 好伸 井上 禎也

 

農業総合研究所

 

ITを駆使して生産者と量販店と消費者を結ぶプラットフォームをつくり、“サステナブルなアグリの実現”へ尽力する企業事例として、農業総合研究所(和歌山市)を紹介したい。

 

同社は2007年、代表取締役会長CEOの及川智正氏が設立した農業ベンチャーだ。及川氏が農作物の生産現場と販売(八百屋の起業・経営)の経験を持ち、どちらにも精通していることが同社の強みの源泉となっている。

 

自身の経験から、「“農業×八百屋”+“IT×泥臭さ”+“現場力×情熱”=農業×ITベンチャー」という独自の方程式を生み出した及川氏は、「農業を良くするために、流通を変える」との思いを胸に、農業総合研究所を起業した。農業をクリエーティブに、グランドデザインする――つまり、ITを駆使して新しい農産物流通を創造し続け、生活者(食べる人)を見据えた上での農業の活性化を常に考えていることが同社の肝と言える。

 

同社はビジョンに「持続可能な農産業を実現し、生活者を豊かにする」、ミッションに「ビジネスとして魅力ある農産業の確立」を掲げる。「農」ではなく「農産業」であることがポイントだ。つまり生産者は農業経営者であり、農業をビジネスとして適正利潤を確保でき、人間の成長が得られる産業にしていかなければならない。そのためには生活者を豊かにする農産物の提供が必要であり、農産業は農産物が生活者の口に入るまでをコーディネートする産業である、というのが同社の考えだ。

 

同社は現在、全国のスーパーマーケットなど1900カ所へ農産物を流通させている。

 

その流通方法は、生産者が全国2万3000カ所にある集荷場へ野菜を持ち込み、販売先・販売金額を決め、自ら値札シールを貼るというもの。9000名近い生産者のほとんどがタブレット端末を使いこなす。売れない場合、野菜は廃棄され、生産者にお金は入らない。その廃棄率は集計後、生産者へフィードバックされる。

 

集荷場の設定は重要な課題だ。同社の場合、生産地(農場)近くにある倉庫を安く借り、集荷場としている。これにより、農作物を高い鮮度の状態で素早く集荷できる。この優れた物流プラットフォームは同社の強みの1つとなっている。

 

同社は小売り業者の固有バーコードの発券システムや、店頭での販売数情報を生産者が管理・フィードバックするシステムを構築。生産者にとって有益な情報が掲載されたウェブサイトも作成し、採算性と一体の経営を推進している。

 

このサイトでは店舗の写真や立地情報、他の販売物の価格なども閲覧できる。また、市場からの仕入れ価格や、イベント・店頭催事などのカレンダーも閲覧でき、生産者にとってより戦略的な販売が可能になる。

 

その他、量販店のプラットフォームや消費者向けのアプリも構築している。生産者と量販店、消費者を結ぶ「BtoBtoC」のプラットフォームで、作業効率、売り上げ向上の仕組みや情報を提供しているのだ。ITを駆使し、サステナブルなアグリへ尽力する同社に今後も注目したい。

 

 

タナベ経営 経営コンサルティング本部
チーフコンサルタント

水谷 好伸
Yoshinobu Mizutani

クライアントの成長を支える「熱血パートナー」として、常に全力投球で熱意あるコンサルティングを展開。「現場・現品・現実主義」に基づく、活用しやすい業績先行管理の導入・定着、実践的な人材育成などが高い評価を得ている。アグリビジネスモデル研究会サブリーダーとしても活躍中。

 

タナベ経営 経営コンサルティング本部
チーフコンサルタント

井上 禎也
Tomoya Inoue

セールスプロモーション活動支援やノベルティー・販促商品の企画提案などの営業として活躍後、コンサルティング部門に異動。これまでの実務経験を生かした販売促進活動の支援、営業力強化などを中心に、実践的なコンサルティングを展開している。アグリビジネスモデル研究会サブリーダーとしても活躍中。

 

アグリビジネスモデル研究会

アグリビジネスモデル研究会では、地球規模での環境変化への対応や、安全・安心の追求、その上での事業の持続的成長を図っていくために、全国の先進事例から学び、未来経営モデルのポイントを探ります。