特集1ではIoT、AIなどの先端技術を駆使し、サステナブルなアグリを追求する3社の事例を取り上げた。3社の事例を簡潔にまとめるとともに、農業総合研究所の農作物流通プラットフォームを紹介する。
グリーンリバーホールディングス
福岡県に本社を構えるグリーンリバーホールディングスは、「技術革新で人々の幸せを実現する」をミッションに、アグリ事業、再生エネルギー事業を手掛けている。
アグリ事業ではIoTを活用した水耕栽培でバジルの高品質生産を実現。また、入り口(就農)から出口(販売)までフルサポート型の農業パッケージ「SMART AGRI FACTORY」は、農業参入へのハードルを下げ、ビジネス価値を高める事業として注目を集める。同社はこの事業について「地域の農業の生産量向上、雇用創出と所得向上が目的」と位置付ける。
このように、IoTを主軸とする技術力・企画力・実行力を総合的に統合させ、地域の資源と密接にコラボレーションすることで新しい価値を提案し、さまざまな社会問題を解決できることが同社最大の強みだ。
こうした農業におけるIT化は、ここ2、3年で大きく進歩している。日本の農作物の品質は海外からの評価が高いため、人手不足を補う技術、篤農家の持つノウハウやスキルを伝承する仕組みを普及・浸透させられれば、日本農業の国際競争力は飛躍的に高まるだろう。
オプティム
東証1部上場のオプティム(本社:東京都)は、農業IT化のトップランナーと言えるだろう。オプティムの強みは、知財戦略と呼ばれる独自技術を開発・管理する仕組み。その知財戦略を軸に「〇〇×IT」をスローガンとして掲げ、さまざまな業界でイノベーションを起こしている。
その1つが「農業×IT」だ。就農者の減少、耕作放棄地の増加など多様な社会課題を抱える農業をサステナブルな事業とするために、先進技術の利活用は必須である。
例えば、担い手が少ないのであれば人材不足を前提として、生産性をいかに確保するかを考えなければならない。その際必要になるのは、人がいなくても問題のないオペレーションやシステムを確立することと、安定した収穫量を確保することだ。その支援を行っているのがオプティムのドローンサービスや、スマートグラスを使ったウエアラブルデバイス用サービスである。
前者は農薬の散布時間低減だけではなく、画像解析により害虫のいる場所だけを狙ったピンポイントでの農薬散布を実現し、散布量を抑制。これにより、肉体的負荷のみならず農薬代も抑えることができる。
一方、後者はスマートグラスを使うことで、農業に不慣れな人も遠隔地にいる熟練の農家と視覚を共有でき、目の前の作業へのアドバイスを受けられる。これにより、農業経験の浅い農家でも収穫量を高めることが可能となる。
inaho(イナホ)
農家の高齢化が進む中、AIの力で課題解決を図るべく自動野菜収穫ロボットを開発したのがアグリテックベンチャー、inahoである。同社はビニールハウスで栽培するアスパラガスの自動収穫ロボットを農家に提供し、体への負担が大きくかつ、作業時間の長い収穫作業を軽減している。
アスパラガス自動収穫ロボットは、AI画像認識で収穫に適したアスパラガスを判断し、アームで1本ずつ丁寧に刈り取る。稼働時間は最長7時間で、夜間も収穫できる。農家の実情を考慮し、導入・メンテナンス費は無料で、利用料で収益を上げるRaaS(Robot as a Service)モデルを採用している。
こうした野菜自動収穫ロボットを軸とする農業プラットフォーム展開により、農作業をAIとロボティクスでサポートすることで、人手不足や農業経営の課題解決を目指しているのである。
農業総合研究所
ITを駆使して生産者と量販店と消費者を結ぶプラットフォームをつくり、“サステナブルなアグリの実現”へ尽力する企業事例として、農業総合研究所(和歌山市)を紹介したい。
同社は2007年、代表取締役会長CEOの及川智正氏が設立した農業ベンチャーだ。及川氏が農作物の生産現場と販売(八百屋の起業・経営)の経験を持ち、どちらにも精通していることが同社の強みの源泉となっている。
自身の経験から、「“農業×八百屋”+“IT×泥臭さ”+“現場力×情熱”=農業×ITベンチャー」という独自の方程式を生み出した及川氏は、「農業を良くするために、流通を変える」との思いを胸に、農業総合研究所を起業した。農業をクリエーティブに、グランドデザインする――つまり、ITを駆使して新しい農産物流通を創造し続け、生活者(食べる人)を見据えた上での農業の活性化を常に考えていることが同社の肝と言える。
同社はビジョンに「持続可能な農産業を実現し、生活者を豊かにする」、ミッションに「ビジネスとして魅力ある農産業の確立」を掲げる。「農」ではなく「農産業」であることがポイントだ。つまり生産者は農業経営者であり、農業をビジネスとして適正利潤を確保でき、人間の成長が得られる産業にしていかなければならない。そのためには生活者を豊かにする農産物の提供が必要であり、農産業は農産物が生活者の口に入るまでをコーディネートする産業である、というのが同社の考えだ。
同社は現在、全国のスーパーマーケットなど1900カ所へ農産物を流通させている。
その流通方法は、生産者が全国2万3000カ所にある集荷場へ野菜を持ち込み、販売先・販売金額を決め、自ら値札シールを貼るというもの。9000名近い生産者のほとんどがタブレット端末を使いこなす。売れない場合、野菜は廃棄され、生産者にお金は入らない。その廃棄率は集計後、生産者へフィードバックされる。
集荷場の設定は重要な課題だ。同社の場合、生産地(農場)近くにある倉庫を安く借り、集荷場としている。これにより、農作物を高い鮮度の状態で素早く集荷できる。この優れた物流プラットフォームは同社の強みの1つとなっている。
同社は小売り業者の固有バーコードの発券システムや、店頭での販売数情報を生産者が管理・フィードバックするシステムを構築。生産者にとって有益な情報が掲載されたウェブサイトも作成し、採算性と一体の経営を推進している。
このサイトでは店舗の写真や立地情報、他の販売物の価格なども閲覧できる。また、市場からの仕入れ価格や、イベント・店頭催事などのカレンダーも閲覧でき、生産者にとってより戦略的な販売が可能になる。
その他、量販店のプラットフォームや消費者向けのアプリも構築している。生産者と量販店、消費者を結ぶ「BtoBtoC」のプラットフォームで、作業効率、売り上げ向上の仕組みや情報を提供しているのだ。ITを駆使し、サステナブルなアグリへ尽力する同社に今後も注目したい。
タナベ経営 経営コンサルティング本部 チーフコンサルタント 水谷 好伸 Yoshinobu Mizutani
クライアントの成長を支える「熱血パートナー」として、常に全力投球で熱意あるコンサルティングを展開。「現場・現品・現実主義」に基づく、活用しやすい業績先行管理の導入・定着、実践的な人材育成などが高い評価を得ている。アグリビジネスモデル研究会サブリーダーとしても活躍中。タナベ経営 経営コンサルティング本部 チーフコンサルタント 井上 禎也 Tomoya Inoue
セールスプロモーション活動支援やノベルティー・販促商品の企画提案などの営業として活躍後、コンサルティング部門に異動。これまでの実務経験を生かした販売促進活動の支援、営業力強化などを中心に、実践的なコンサルティングを展開している。アグリビジネスモデル研究会サブリーダーとしても活躍中。アグリビジネスモデル研究会
アグリビジネスモデル研究会では、地球規模での環境変化への対応や、安全・安心の追求、その上での事業の持続的成長を図っていくために、全国の先進事例から学び、未来経営モデルのポイントを探ります。