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【コンサル事例】

チームコンサルティング事例

クライアント企業とタナベコンサルティンググループのコンサルチームが取り組んだ経営改善の事例。施策と成果を紹介します。
コンサル事例2024.03.29

マルオリグループ:「手を離して、目を離さない」ホールディング経営で成長し続ける

お話を伺った人


マルオリグループ
代表取締役会長CEO 宮本 徹 氏
代表取締役社長COO 宮本 好雄 氏

 

ポイント


1 持続的成長や迅速で柔軟な経営判断、ガバナンス強化のためホールディングス化を決断
2 ホールディングス化の専門家がチームで推進
3 次代を担う経営人材をジュニアボードで育成

 

 

 

事業を成長させ永続的に発展するための決断

 

――マルオリグループは合繊織物で国内最大シェアを誇り、織染連携の一貫体制による独自技術や高機能・高品質のテキスタイル製品開発の他、ITを使った新業態であるBtoC向けオンデマンド事業の開発にも成功され、高成長・高収益企業へと成長を遂げられました。

また、時代や環境の変化に適応しながら永続と成長を両立させるため、新たにホールディング経営体制に移行されました。

ホールディング体制移行の背景、タナベコンサルティングとの関係をお聞かせ下さい。

 

宮本徹:宮米織物と丸井織物の兄弟会社(祖業2社)を中核に、当初は繊維メーカーから原糸の供給を受け、織物に仕上げる委託賃加工の機屋からスタートしました。自社で商品開発提案や原糸手配も手掛けるように変革を行い、さらにITとM&Aを積極的に活用して事業領域を拡大し新たな成長エンジンを増やすことに成功ました。

 

国内の繊維産業は10年間で市場が半減する厳しい経営環境下ですが、この10年間で売上高・利益ともに4倍に成長し、自己資本比率は90%を超えています。

 

今後の事業継承や事業を持続的な成長で会社を長期的に発展させていくとともに、迅速で柔軟な経営判断やガバナンス強化を可能にし、グループ各事業会社が事業に専念しやすいようホールディングス化を決めました。

 

宮本好雄:ホールディング経営体制を目指す理由はもう1つありました。これまで会長の強力なリーダーシップとマネジメント力で着実に成長してきましたが、会長と私、副会長(宮本米蔵氏)のオーナー家(宮本3家)出身の経営陣から将来的に会長は子息である専務(宮本智行氏)を中心とする次世代経営体制へ、スムーズな事業承継を実現する必要があります。また、グループ各事業会社を任せる経営人材の質と量の確保も課題でした。

 

祖業2社はオーナー家以外の個人株主が多く、将来の株式分散を防ぐためにも見直しが必要でした。一般的に高い自己資本比率で優良企業と呼ばれるほど株価が高くなり、後継者が巨額な相続税に苦しむというのが良くあります。次世代がスムーズに事業承継でき、リーダーシップが発揮しやすい経営体制を確立するためにも、ホールディングス化を上手に活用したいと考えていました。

 

――2022年7月から「ホールディング経営体制構築プロジェクト」が始動し、タナベコンサルティングが一緒に支援させていただきました。

 

宮本徹:私が社長だった頃から経営診断を始め経営全般の支援、人事制度の構築、社員教育、各種セミナーなど、幅広いコンサルティングでずっと経営支援をいただいています。

今回も迷うことなく依頼しました。

 

――コンサルティングはどのような体制で進められましたか

 

宮本徹:長年の総合的な経営支援で当社を知り尽くすコンサルタントに加え、ホールディングス化専門のコンサルタントのみならず、税務の専門家であるグローウィン・パートナーズ社(タナベコンサルティンググループ)にも参画いただき、そこに税理士・司法書士を加えたメンバーで一緒にホールディング経営・組織だけでなく株主構成やかかるコストなどの実行スキームの検討やディスカッションを重ねました。事例や知見が豊富なチームコンサルティングは、とても頼もしかったですね。

 


経糸(たていと)準備工場の様子。整経・サイジングされた経糸を、製品の規格に合った経糸本数に巻き取る

 

事業会社8社をホールディングスグループ経営体制へ移行

 

――株式交換および現物分配によって、宮米織物(現、マルオリグループ)をホールディングにする新しい経営体制へ移行されました。

 

宮本好雄:2023年7月1日に持株会社・マルオリグループが発足し、株式交換で丸井織物の100%親会社となり、グループ企業の所有不動産も現物分配しました。ホールディングスカンパニーの下に、子会社として丸井織物など事業会社8社で構成するグループ体制となり、さらに新事業会社を増やしていく予定です。

 

ホールディング経営体制は、持株会社のマルオリグループが事業会社の支援やガバナンス強化で、中長期的な視点で全体最適となるグループ経営を担います。また事業会社は、事業に集中することでより高い付加価値の創出と経営スピードを高めていきます。発足したホールディングスの組織体制は、当面、経営企画室と情報システム部、総務部、そして宮米織物の生産部門というシンプルな構造でスタートし、祖業2社から社員55名が移籍しました。将来的には類似の事業会社をビジネスユニットとしてくくり、よりシナジー効果を出して行くつもりです。

 

――スムーズな事業継承を可能にする、資本戦略にも検討を重ねられました。

 

宮本好雄:後継者である智行専務に、オーナー3家以外の非同族少数株主の株式を譲渡してもらうことが望ましいと考えました。これにより安定的な経営基盤を築き、グループを永続発展へと導いてほしいと思っています。

 

ホールディングスの本体であるマルオリグループの利益が増えると株価が上がり相続にも影響するため、事業会社により多くの利益を計上して上昇を抑え、同時に子会社の所有不動産をホールディングスに移すことで、安定的にキャッシュがホールディングスに入るようになります。新たな資本戦略はまだ現在進行形ですが、株価が安い時にどう手を打つか、どの資産を現物分配するか、その結果として各社がどんな資産内容になるのかを見極めることはとても重要でした。配当で株主が損をしないようにといった配慮も含めて、タナベコンサルティングにうまく導いてもらいました。

 

――ブレない企業の価値観作りのために取り組んだことをお聞かせ下さい。

 

宮本好雄:経営理念とMVV(Mission:使命、Vision:目指す姿、Value:行動指針)も刷新し、新たに「クレドカード」を作成してグループ全社員に配布しました。

 

経営理念やMVVの解説とともに、ホールディングス化の目的や何が変わるか、グループの一員として求められることなども明文化しています。社内報もグループ全体の人と動きを知るグループ報に刷新し、対外的にもグループロゴマークを定め、名刺デザインなどを一新しています。

 

以前から「丸井伝聞録」という冊子をつくり、創業以来の価値観を語り継ぎ、伝え残す取り組みを続けてきました。「仕事とは顧客のためにするもの」など、どんな価値観で仕事し経営を判断するのかを浸透させてきましたし、それはホールディングス化しても変わらないだけでなく、より重要になっていくと思っています。


マルオリグループのクレドカード。ロゴマークは、さまざまな事業会社が手を取り合い、シナジーを発揮しながらイノベーションを創り上げる姿勢を示している

 

次代のグループ事業を担う経営人材を育成

 

――後継者である智行専務と一緒に、次代を担う経営人材の育成は継続的なジュニアボードとホールディングス化で加速させておられます。

 

宮本好雄:これまでも、4期目を迎えるジュニアボード研修、経営戦略セミナーや幹部候補生スクールなどに継続的に参加しお世話になっています。

 

今回のジュニアボードには各事業会社の経営者や幹部、智行専務が参加し、創業100周年に売上1000億円のビジョン、2026年売上高320億円を目指す中期経営計画を策定しました。

 

この推進についてもホールディング経営体制によって、事業会社にしっかりと権限を委譲しつつも、最適な戦略と人事配置ができるようになります。これらが目標達成の原動力となり、さらなる成長の可能性も高まっていくと考えています。

 

「まだない答えを、織りあげる。」チャレンジングなグループに

 

――ホールディング経営体制はゴールではなく、さらなる高みへの土台となるスタートラインです。2023年1月には「次代を担う繊維産業企業100選」(経済産業省)にも選定され、今後の飛躍を見据えておられます。

 

宮本徹:繊維産業は暮らしに欠かせない「衣食住」の衣を支え、安定的に収益が得られる事業です。売上高1000億円は、委託加工や自販など繊維関連が5割、残りの5割はITやM&Aを駆使した新事業開発で達成していく計画です。智行専務が自ら立ち上げ55億円規模に育てたUP-Tなどのオンデマンド事業は年率3割で伸びていますし、その他「繊維×デジタル」のX-Techで次世代のモノづくり変革へとできるのは、国内ではマルオリグループの他にはないと考えています。

 

また、ホールディングス化とともに、グループのブランドスローガンに「まだない答えを、織りあげる。」を定めました。求めているのは、チャレンジングな姿勢です。能登半島の風土に根ざした「地味にコツコツとまじめに取り組むものづくり」が長年の社風であり強みでしたが、これからの時代には一気呵成(かせい)のスピード感が大切です。特にIT事業は日進月歩では遅く、朝令暮改こそが好ましい。トライしてみないと分からないことにもチャレンジしていくわけですから。次代もさらにその先も、オンリーワンの製品やサービス、圧倒的な価値づくりを使命として実現していくために、タナベコンサルティングにはこれまで以上の支援を期待しています。

 

チャレンジングな姿勢に変わっていくには、人事評価や処遇制度の仕組みも変えていく必要があります。創業以来、人を大切にしており経営理念には「人間成長」を掲げてきましたし、そこから倹約・勤勉の姿勢や工夫・創造が生まれ、夢や挑戦が可能になります。時間軸を少し長めに取って、チャンスを与えることが重要ですし、そんなホールディング経営の姿を私は「手を離して、目を離さない」と表現しています。

 

グループ各社の経営の自由度を高め、チャレンジが文化として根付き、人間成長を実感できる企業グループになって、ホールディングスがその仕組みとして機能して未来永劫、発展し続ける姿になっていければ嬉しいですね。

 

――タナベコンサルティングは、時流の変化に適応して進化し続けるマルオリグループを、これからも支援してまいります。本日はありがとうございました。

 


部署を横断して実施したプロジェクトの様子

 

PROFILE

    • 会社名:マルオリグループ
    • URL:https://www.maruig.co.jp/
    • 所在地:〒929-1817 石川県鹿島郡中能登町徳前12部46番地
    • 設立:2023年7月(宮米織物株式会社(1937年創業)より商号変更)
    • 従業員数:787名(連結、2023年7月現在)

※ 掲載している内容は2023年10月当時のものです。

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