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【コンサル事例】

チームコンサルティング事例

クライアント企業とタナベコンサルティンググループのコンサルチームが取り組んだ経営改善の事例。施策と成果を紹介します。
コンサル事例2023.01.26

どんたく:社員が育つ「仕組み」をつくり、成長し続ける企業へ

ポイント


1 次世代幹部で中計を策定し、経営の目線・ベクトルを一致
2 「どんたくキャリアパス」を策定。人が育つ「仕組み」をつくる
3 異業種の事例やノウハウを学び、自社の成長に生かす

 

 

お話を伺った人


株式会社どんたく 代表取締役社長 山口 宗大 氏

 

 

 

 

“ワクワク&楽しさ”を提供
驚異の集客力を誇るどんたくの強み

 

——石川県七尾市に本社を置くどんたく様は、市内を中心に食品スーパーマーケット「どんたく」を展開され、地域の暮らしを力強く支えています。活気とにぎわいのある元気な店づくりで注目を集め、2023年には創業60周年を迎えられます。

 

山口社長:先代社長の父(山口成俊氏)が七尾市から能登半島、さらに金沢市にも出店しました。父は当初3億円程度だった売上を、自らの代で年商140億円規模へ拡大させてきました。

 

現在、七尾市内でのシェアは50%を占めており、地域の暮らしを力強く支えています。また、七尾市内の「どんたくアスティ店」、金沢市内の西南部店は、年商20億円規模であり、業界のモデル店舗です。

 

手頃価格で品揃えの質がいい「高質型店舗」で成長してきました。現在はさらにそれを進化させた、食を通じてたくさんの人が楽しむ空間、話題を提供する「イーターテイメント型店舗」を拡大しており、同業他社のスーパーマーケットと差別化を図ることで、感度の高いお客様に、離れたエリアからも来店いただいています。

 


“イーターテイメント”型の売り場で、お客様にワクワク感と楽しい体験を提供

 

32歳で急きょ社長に就任

 

——山口社長は同業他社で経験を積まれた後、後継者として入社され、店長職のキャリアを経て専務に就任されました。その経緯や当時の課題について教えてください。

 

山口社長:順調な経営が続いていたのですが、2016年3月、先代が急逝してしまいました。まさに青天の霹靂でした。年明けに将来の事業承継を見据え専務になったばかりでしたが私が急きょ、32歳で社長に就任しました。

 

そのとき、急逝した先代はまだ60歳で自ら陣頭指揮に立ち、引き継ぎなど何もない状態でした。当時の私には店長の経験はありましたが会社経営の経験はなく、会社全体の掌握が大変でした。特に、地域とのつながりや付き合いなど対外的なことは全く分からず、しばらくは余裕もなく毎日が過ぎていきました。

 

——創業家の後継者として、いきなり経営者に就任されるということですから、ご苦労も多かったと思います。

 

山口社長:先代は実質的な創業者であり、何事も即断即決。いわば「スーパートップダウン型」の経営者でした。だからこそ急成長できたのですが、その反面、当時の役員・幹部を含め社員は皆、受け身体質で、先代の指示を待ち、出された指示に基づき実行面では頑張る“イエスマン型”だったと思います。また、取締役や部長は全員、私より年上。自分自身が社長になると、次代の経営幹部候補となる30代~40代を育成する必要がある、と気づきました。

 

そこで、以前「総合経営診断」をお願いし、その後も人事処遇制度構築などの支援を受けていたタナベコンサルティングに相談しました。そして2020年秋から半年間、次期営業部門経営者を育成する「次世代役員・経営幹部養成スクール」(次世代スクール)を実施しました。

 


社長に就任し、「次代を担う経営幹部候補育成の必要性に気付いた」と語る山口社長。そこで、次世代役員・経営幹部養成スクールの活用を決めたという

 

 

次世代の幹部が中期経営計画を策定。
経営の目線・ベクトルを合わせる機会に

 

——次世代スクールで、2030年までの中期ビジョンと2024年までの3カ年中期経営計画を策定しました。

 

山口社長:当社は「100周年に売上高1000億円、日本全国から人が集まる会社、地域」を目指しています。そこを起点に、まずは10年後の2030年にありたい姿を中期ビジョンとしてイメージし、さらに目の前の3カ年の中期経営計画を描いてもらおう、と考えました。

 

次世代スクールは、未来の役員・経営幹部を育てる「ジュニアボード」の位置づけで、30~40代の部長・課長が参加しました。役員や幹部の自覚を持って自らビジョンや事業計画をつくることで、経営者や役員・経営幹部の視点を身につけ、事業と経営を革新する力を高めるのが狙いです。

 

スクールでは1泊2日の合宿を計5回、役員・経営幹部になるための事業センスや経営センスなどテーマ別に掘り下げていきました。自社の未来について語り合うことで、価値観やベクトルを合わせることができたと思います。未来に視点を置き、そこに向けてみんなで考え、行動を起こし、進んでいこうという雰囲気も生まれ、とても有意義な時間でした。

 

——2030年の中期ビジョンでは売上高300億円を目指しています。

 

山口社長:中期ビジョンにおける食品スーパー事業の成長戦略は、「出店(スクラップ&ビルド)」と「イーターテイメント店舗によるダントツ高質化」の2軸で構成しています。

 

商品・販売・店舗のすべてに高品質のサービスを、感度の高いお客様に提供するのが高質型。それをさらに進化させ、おいしい食材と楽しい買い物体験の要素を「Eat + Entertainment」として提供していくのが、イーターテイメント型戦略です。目の前で調理するライブ販売やコト販売など、お客様に積極的なアプローチで賑わいとワクワクを創出していくイメージです。

 

また、健康やおいしさ、楽しさを提供し、いのち・生活・人生の「3つのライフ」を豊かにする「Quality of Life支援業」になっていくことを、新たなミッションとして導き出しました。

 

——社員の意見をしっかり聞き、価値観を合わせて一緒に走りながら成長していこう、という山口社長のお考えがあらわれた取り組みです。次世代スクールの成果についてお聞かせください。

 

山口社長:トップダウンではなく、役員をはじめとする幹部・社員の皆さんの知見を生かす組織経営を目指していました。

 

参加メンバーにとってはこれまでにない経験であり、戸惑いもあったかもしれませんが、新たな成長戦略を実現していく経営幹部に育っていると感じています。

 


全員の力を生かす「組織経営」へ舵を切ったどんたく。「100周年に1000億円」を目指し、一歩ずつ歩みを進めている

 

 

「どんたくキャリアパス」を策定
社員が育つ「仕組み」をつくる

 

——次世代スクールに続き、2022年6月、「人材成長加速化の仕組み強化プロジェクト」(PJ)が新たに始まりました。

 

山口社長:小売業の事業の成長スピードは人材の成長スピードに直結しています。つまり持続的な成長のためには先回りをして人を育てることが大切だと考えています。

 

具体的には、個人のセンスに頼るのではなく、「人の成長を加速させる仕組み」の整備と強化が必要です。PJは人事部責任者や優秀な店長経験者、次世代の店長候補者らで構成し、タナベのコンサルタントと一緒に仕組みづくりを進めています。ステップとしては、①人材成長の課題の洗い出しと改善の方向検討、②人事マネジメントフレーム・項目の修正、③必要に応じマニュアル化、という流れを考えています。

 

——PJでは、人事戦略や課題を明確化する「人事ビジョン」を策定するとともに、目指す「チーム・人物像」を描き出している最中です。

 

山口社長:PJでは、人事ビジョンとして「Make my progress, Make all happy」を掲げており、一人ひとりの「成長」が、どんたくに関わる「すべてを幸せにする」姿を目指しています。成長とは「思いやりの心、スキルとセンス、チャレンジ精神」を兼ね備えたチームや人物になることで、「Be Professional」が合言葉です。

 

また、従来の制度をブラッシュアップした独自の成長モデル「どんたくキャリアパス」は、職種ごとに期待する役割と、そのために必要な教育を、育てる会社と育つ社員の双方にとってわかりやすく、見える化しています。タナベコンサルタントの豊富なノウハウをベースに、部門ごとに「どんたく実力基準書」も作成しました。管理層・監督層・一般層のそれぞれに、どんな価値判断の基準を持ってほしいかを整理し、明文化しています。

 

今後はさらにPJの中で評価・賃金制度や教育体系・職務決裁権限規定のブラッシュアップを進めると共に、成長のカナメである店長の労務管理マニュアルも作成予定です。

 

 

人と事業を育てながら、攻めの経営を貫く

 

——タナベコンサルティングへの評価や期待をお聞かせください。

 

山口社長:先代の時代に、金沢進出を提案いただいたことが、これからの楽しみな可能性へとつながっています。また、私も含めて多くの社員が経営戦略セミナー幹部候補生スクールチームリーダー研修などに計画的に参加してきました。

 

食品専門のコンサルティングと違い、タナベコンサルティングには経営や人材を切り口に、企業体質を強くする支援をお願いしています。他業界の知見や事例を学べるのも、大きなメリットです。違う視点から自社の経営を考えるヒントになりますから。幹部候補生スクールに参加した部長から「これまでにない視点に立つことができました」と報告を受けた時は、本当にうれしかったです。

 

経営や人材を切り口に、企業体質を強化するためタナベコンサルティングを活用。他業界の知見や事例を学ぶ機会としても活用しているという(写真はタナベコンサルティング主催、経営戦略セミナーの様子)

 

——今後の展開についてお聞かせください。

 

山口社長:石川県は全国的に見てもスーパーが乱立し、競争が激しい地域です。高質化とイーターテイメント型に磨きをかけることで中期ビジョンを実現し、さらに「100周年に1000億円」を目指します。そのためには、能登産の新鮮食材のEC販売や来店できないお客様への移動販売、海外市場への進出など、多様な新規事業の展開も必要です。次代の担い手を育てながら、「攻め」の姿勢をこれからも貫いていきます。

 

これからは、食品スーパーとしてだけでなく、地域から多様な価値を求められ、問われていく時代です。しっかりとニーズや期待に応えながら、地域を盛り上げる力になることで、存続・成長し続けていきたいですね。

 

——地域になくてはならないどんたく様の存在感と貢献価値の向上へ、これからもご支援を続けてまいります。本日はありがとうございました。

 

 

PROFILE

    • 会社名:株式会社どんたく
    • URL:https://www.dontaku.co.jp/
    • 所在地:石川県七尾市作事町80番地
    • 設立:1963年
    • 従業員数:549名(2018年3月、社員、契約社員、パート社員含む)

※ 掲載している内容は2022年12月当時のものです。

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