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【コンサル事例】

チームコンサルティング事例

クライアント企業とタナベコンサルティンググループのコンサルチームが取り組んだ経営改善の事例。施策と成果を紹介します。
コンサル事例2022.09.15

タカギセイコー:新人事制度を構築し、未来ビジョンの実現へ

 

ポイント


1 次世代を担う社員(ジュニアボード)で未来ビジョンを策定
2 社員のモチベーション向上、理念・ビジョン推進に直結する人事評価制度を導入
3 新たな高収益事業・新分野へチャレンジ

 

 

お話を伺った人


株式会社タカギセイコー 代表取締役社長 社長執行役員 高木 章裕氏

 

 

 

ジュニアボードで未来ビジョンを策定

 

——タカギセイコー様の企業概要について教えてください。

 

高木社長:当社は富山県高岡市に本社を置き、プラスチック製品及びプラスチック製品製造用金型の製造販売を主な事業としています。創業は今から91年前にさかのぼり、漆器の製造販売を祖業としています。

 

伝統的に木を素材として作られていた漆器製品でしたが、1940年にベークライトによる製品開発に成功。その量産化を実現すると、その後今日につながる工業用製品へ展開し、古くは紡績機器部品、その後は家電、OA、携帯電話、車両分野としてオートバイ、自動車、トラック、建設機械等々、様々な分野・用途へのプラスチック製品の開発を続けてまいりました。

 

当社の特徴の一つが「TS生産一貫システム」です。製品設計段階からお客様と製品情報を共有する「コンカレント・エンジニアリング」をベースに、金型設計・製作、成形、塗装、組立・検査までの各プロセスを管理し、高精度・短納期かつ「共創」型のものづくりを実現しています。

 

プラスチック成形に関する卓越した技術蓄積を生かし、プロダクト・イノベーションとプロセス・イノベーションを両立させることで、「顧客ニーズを捉えた開発先行型企業」として高い信頼を頂いています。

 

 

漆器の製造販売を祖業とするタカギセイコーの創業は1931年。「TS生産一貫システム」を強みに、「顧客ニーズを捉えた開発先行型企業」として高い信頼を得ている

 

 

——2019年の社長ご就任以前から、将来のあるべき姿を描く取り組みを進めてこられました。

 

高木社長:かねてから、社員が将来に向け日々働く気持ちの拠り所として、自社が目指す未来ビジョンを持っておく必要があると思っていました。業績も厳しく、社員の士気が上がりにくい時期ではありましたが、そうした時だからこそ、未来の姿を明確にし、鮮明に旗を掲げていくことが大事。あわせて、ビジョン実現の原動力となる「人」がモチベーション高く働ける環境を整えることが必要だと感じていました。

 

——2018年からジュニアボード(JB)によるプロジェクト(PJ)が始動し、創業100周年に向けた未来ビジョンが検討されました。

 

高木社長:次世代を担うジュニアボードメンバーで、来る創業100周年(2031年)の「あるべき姿」を描きました。また、これからの人たちが原動力となって未来へ向かうイメージを表すものとして、「NEXTAGE 1∞」というフレーズを採用しました。

 

ここに込められているのは、Next + Stage次のステージへ進み続ける思い、そしてNext + Age次の100年を担う人たちへの期待、そして右側は1、お客様から1番に相談される会社、ファースト・コール・カンパニーになること、右のインフィニティはプラスチックの無限の可能性、1とインフィニティを合わせて数字の100に見立ててこれからも100年続く永続企業というものです。

 

 

 

これからの世代の社員が原動力となり、未来へ向かうイメージを表す言葉として「NEXTAGE1∞」を採用。次世代を担うジュニアボードメンバーで、未来ビジョンを検討する中で生まれたという

 

 

——「ありたい姿」を目指す為、新人事制度の構築が決まりました。

 

高木社長:「ありたい姿」を目指すためには、実現に向け行動する社員の成長が不可欠。その成長を目指せる仕組みを持った人事制度を人事制度改革ワーキングチームで検討し、その後プロジェクトチームを編成して、新人事制度構築にあたっています。

 

まずは人事制度改革に向けたビジョンボード研修会の一日教育からスタートしました。研修会やWTでは、モチベーション向上につながる人事フレーム、業績や労働分配率と連動性がある柔軟な賃金体系、チャレンジを妨げない思い切った人材登用が可能な昇進・昇格制度、多様な働き方の選択肢と評価などが検討テーマに上がりました。

 

タナベコンサルティングには、後継者向け経営セミナーに参加したことをきっかけに、研修会のスポット講師の依頼から始まり、引き続きPJ推進のコンサルティングもお願いしました。

 

 

経営理念に基づく人事ビジョン・評価項目を策定

 

——2021年春、新人事制度構築PJがスタートしました。

 

高木社長:経営幹部や管理職を中心とするPJメンバーで、まずは経営理念に基づく人事基本方針を策定しました。「お客様から信頼される」「常に挑戦を続ける」など、経営理念で掲げる原点に立ち返ったうえで、「求める人材像」と「人事ポリシー」を合わせて、人事基本方針としています。そのうえで、人事制度設計の基本概念として人事制度方針を決め、新人事制度構築のベースとしています。

 

新制度のポイントとして、同一労働、同一賃金への対応は大きな改定項目の1つです。また、年功序列型の賃金体系や昇進・昇格制度の見直し、また「求める人材像」を目指せる評価制度、等級制度への切り替え、組織の役職と等級制度の切り離しがポイントになります。

 

新制度では、積極的に自己研鑽やチャレンジのしやすい環境・風土をつくり、魅力と働きがいのある姿に変えていくのが狙いです。

 

——評価項目内容について教えてください。

 

高木社長:評価項目は、「能力行動評価」と「業績評価」を設けています。

 

能力行動評価は大きく「姿勢・意欲」「業務遂行能力」に分けて定義しています。また、パワハラほかさまざまなハラスメントを防ぐ項目についても、全員で意識を高めていけるよう、あえて独立した評価項目に定めました。

 

「業績評価」は、現行制度の目標管理シートを活用し、成果と、成果を上げるためのスキルアップ項目で評価を行います。

 

評価方法は、「能力行動評価」「業績評価」ともに、自己評価から最終評価まで4段階にして、本人へのフィードバックも実施。「能力行動評価」は昇降格の処遇に、「業績評価」は賞与査定に連動し、それぞれ評価を通じて成長を目指せる仕組みになっています。

 

 

経営理念に基づく人事基本方針、人事制度方針をベースに新人事制度を構築。自己研鑽やチャレンジのしやすい風土、魅力と働きがいのある環境が整いつつある

 

 

——特に評価項目は3カ月以上かけて丁寧に創り上げました。

 

高木社長:評価項目の策定には時間をかけて丁寧に創り上げました。それは、人事基本方針との整合性をとりつつ、現場で必要な項目や課題を網羅したかったからです。また、納得性の高い評価項目が社員のモチベーションにつながると考えていたからです。

 

サーベイで浮き彫りになった課題を重点的に改善

 

——新人事制度PJの開始前に活用されたサーベイについてお聞かせください。

 

高木社長:新人事制度PJの開始前に、現状認識のため、組織活力サーベイとモラールサーベイを実施し、結果について取締役会で報告を受けました。「理念や経営ビジョンがしっかりと浸透している」などプラス評価のあった一方、「評価制度や賃金体系、職場環境や労働条件に対する不満がある」などのマイナス評価も多く、課題を重く受け止めるとともに、その改善への取り組みを決意しました。

 

——1年間にわたるPJを経て、2023年秋から新人事制度を導入予定です。新人事制度への期待についてお聞かせください。

 

高木社長:新人事制度は理念やビジョンと連動した評価ができる制度であり、社員の積極性や成長も促せる設計なので、うまく進めたいと思います。

 

また、例えばがんばってくれたことに対する言葉かけなど、風土についても改善し、高いモチベーションと自己研鑽を実践する社員を育て、未来ビジョンの実現にうまくつなげていきたいですね。

 

——タナベコンサルティングのコンサルティングを活用されてみて、率直なご意見や評価についてお聞かせください。

 

高木社長:ジュニアボードによるプロジェクトでは、約9カ月にわたってご指導をいただきました。

毎回、講義とグループワークを通じて、テーマに沿った成果物ができあがっていくスタイルで、1歩ずつ着実に前進していく実感や、ビジョンが徐々に明確になっていく感覚をメンバー全員が共有できました。

 

コンサルタントの方々には当社の一員であるかのようにメンバーに接していただき、メンバーの自主性を尊重しつつも的確なアドバイスをいただきました。回を追うごとに、コンサルタントとメンバーとの間に、深い信頼関係が醸成されていったことが、ジュニアボードの活気につながったと思います。

 

 

理念やビジョンと連動した評価ができる新人事制度を構築。高いモチベーションと自己研鑽を実践する社員を育てながら、未来ビジョンの実現につなげていくという

 

 

変革期こそ成長のチャンス
人と事業の育つ企業で100年企業へ

 

——今後の展望についてお聞かせください。

 

高木社長:当社を取り巻く事業環境は今後とも様々に変化していくことが予想されますが、そのような中にあっても常に安定して継続的に事業展開できる企業、誰からも信頼される会社をこれからも目指して参ります。

 

これからの脱炭素、自動車のEV化といった世の中の方向性にしっかり追従していくこと、そして当社の強みや固有の技術・差別化技術を以って、これまでの主力分野はもとより、航空・医療・生活・環境ほか、分野にとらわれない開発を進めてまいります。中でもSDGsや脱炭素・カーボンニュートラルの推進に連なる開発テーマはこれまで以上に取り組んでおり、早期の開発を目指しております。

 

新人事制度のもとで生産性と付加価値をバランスよく高めることで、社員とともに「ありたい姿」の実現に向かって取り組んでいきます。

 

また9年後には創業100周年を迎えますが、これからも皆さんに「タカギセイコーという会社があってよかった」と言っていただけるよう社員一同、日々の業務に励んでいきます。

 

——タナベコンサルティングは今後もサポートを続けてまいります。本日はありがとうございました。

 

PROFILE

    • 会社名:株式会社タカギセイコー
    • URL:https://www.takagi-seiko.co.jp/
    • 所在地:富山県高岡市二塚322-3
    • 創業:1931年
    • 従業員数:817名(2022年3月現在/臨時従業員含まず)

※ 掲載している内容は2022年10月当時のものです。

 

 

 

 

 

 

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