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コンサルティングケース
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TCGのクライアントが持続的成長に向け実践している取り組みをご紹介します。
コンサルティングケース 2023.10.10

タマダホールディングスグループ、ホールディングス化でグループ全体最適を実現 タマダホールディングスグループ

ポイント


1 グループシナジー追求のためホールディングス体制へ移行
2 クレドを策定し、グループ全体の価値観を統一
3 グループセミナーで次世代の社長を育成

 

 

 

お話を伺った人


株式会社タマダホールディングスグループ 代表取締役社長 玉田 善久 氏

 

 

 

 

積極的なM&Aをテコに、新しい成長を実現

 

――ガソリンスタンドの地下タンクの国内シェアトップメーカーで、防火水槽などニッチトップ事業も数多く手がけるタマダを中心に、積極的なM&Aにより事業領域を拡大して成長軌道を描き続けるタマダグループ様。永続発展する存在価値のあるグループを目指して、2023年、持株会社制によるタマダホールディングスグループ(THDG)の新たな経営体制に移行しました。

 

玉田社長:タナベコンサルティングとは、父である会長(玉田善明氏)の社長就任以前から40年来のお付き合いになります。当社は秤の卸・小売から始まり、ガソリンスタンドの建設で中日本一、そしてガソリンスタンドのタンク製造では日本一になりましたが、カーボンニュートラル時代が迫るいま、ガソリンスタンド業界は成長産業ではありません。

 

主力市場と顧客が縮小するなか、M&Aを活用しながら、エネルギーからものづくり、プラントエンジニア、空調サービス、建築土木、システム開発等の経営の新しい柱を増やしてきました。さらに「ライフラインインフラのトータルソリューションカンパニー」としてさらなる飛躍を遂げるために、ホールディング体制への移行を決め、タナベコンサルティングに支援をお願いしました。

 

グループ企業が増え、しかも業種業態が多様であるため、各社の動きがバラバラで、うまくシナジー効果を発揮できていない、と感じていました。また、当時の親会社のタマダと子会社の各グループ事業会社、あるいは子会社同士が、互いに事業会社であるために利益相反や摩擦が生じてしまい、なかなかグループとしての総合力が発揮出来ていないという問題もありました。

 

そこで、ホールディングス化によりグループの全体最適を実現しましょう、とタナベコンサルティングから提案を受けました。祖業である金沢度量衡という会社をホールディング会社にすると共に、商号変更してタマダホールディングスグループを発足し、その下に各事業会社をぶら下げる形にしました。

 

 

積極的なM&Aにより事業領域を拡大して成長軌道を描き続けるタマダグループ

 

ガソリンスタンドの地下タンク国内トップシェアを誇るタマダグループ。近年はM&Aを活用しながら成長を遂げてきた

ガソリンスタンドの地下タンク国内トップシェアを誇るタマダグループ。近年はM&Aを活用しながら成長を遂げてきた

 


全体最適で、シナジーを生み出すホールディングス経営へ。

事業ユニットをつくり、グループ連携を図る

 

――2022年1月から、ホールディング経営体制構築プロジェクト(PJ)がスタートしました。

 

玉田社長:会長と私、タナベコンサルティングに加え、タマダの経営企画・総務・経理責任者及び税理士・司法書士も参画し、PJのトップミーティングで検討会を重ねました。グループの課題や資本・財務戦略、組織・人材戦略の現状を共有し、ホールディング経営スキームやグループガバナンス体制、株式交換や会社分割による資本体制などを何度もシミュレーション・ディスカッションし、組み立てていきました。

 

ホールディングスと事業会社、親子それぞれの経営視点や判断・マネジメント機能の線引きも具体化しました。ホールディング会社は中長期の視点で、グループ全体の理念やビジョン、中期経営計画を策定し、中期の方向性及びBSに責任を持ち、各事業会社はグループ方針に沿う事業計画を立て、PLを中心に担い、収益を出すことに集中できるようにする、といった具合です。

 

――20社あったグループ企業を16社に統合整理すると共に、組織体制には独自のユニット制を導入しました。

 

玉田社長:事業会社を統合・整理する機会ととらえ、実質的な活動のない会社は清算しました。また、非完全子会社は少数株主から株式を買い取って100%子会社を目指しました。買い取りをスムーズに進めるため、この交渉はM&Aの陣頭指揮に立ってきた会長に担当してもらいました。

 

特徴としてはタマダホールディングスグループと各事業会社の間に、事業ユニット(プラント・空調・FRP製造・製造・システム)を設けたことです。各事業会社をホールディングス直下の全製造社横並び型ではなく、事業内容が近い会社同士をまとめるユニット型にすると、各事業ユニット内でのノウハウ共有、人的交流・応援などがやりやすくなり、利益相反や摩擦も生まれにくくなります。また、タマダホールディングスグループと事業会社の一体感を高めやすくなる、とも考えました。

 

 

――タマダホールディングスグループが担うコーポレート機能とシェアードサービス機能も再編成します。ユニットの推進役を担う事業ユニット推進部と内部監査室を新設し、グループ全体を管理する新規事業創造とグループとしての経営企画、技術、総務・人事、経理の各部を設置しました。

 

玉田社長:タマダホールディングスグループの組織図は、具体的に個人名を入れて検討しました。組織体制をどうするかは難しい選択ですが、長期的な視点を重視しました。グループ規定は最低限に留め、組織再編も無理して一気に進めず、時間をかけながら現在進行形で進めています。

 

 

クレドをつくり、グループで価値判断基準を統一。

グループのブランドとエンゲージメント向上へ

 

――PJは8カ月間の「構築フェーズ」に続き、さらにHD新体制移行後のスムーズな「本格稼働フェーズ」へと動き出しました。その中でも特徴の1つが「グループクレドの制定」です。

 

玉田社長:タナベコンサルティングからの提案もあり、タマダホールディングスグループの「クレド」をつくりました。そもそも企業数が多く業態も多様な上、M&Aでグループインした企業が多く、生い立ちや価値観もバラバラのグループ企業に統一の価値判断基準を持ってもらい、グループの総合力で永続発展することが目的です。

 

クレドでは、グループ全体が心がけるべき約束や信条を明確化しました。内容は多岐にわたりますが、一言集約するなら「タマダグループは豊かな人生を創造する集団であり、社員も家族も社会もハッピーになる未来に挑戦し続ける」ということです。

 

全従業員対象と経営陣対象の2部構成でクレドを作成。価値判断基準をそろえ、グループの総合力を発揮していく
全従業員対象と経営陣対象の2部構成でクレドを作成。価値判断基準をそろえ、グループの総合力を発揮していく

 

 

――クレドは全社員対象とグループ経営陣対象の2部構成のクレドが誕生しました。

 

玉田社長:全従業員対象のクレドは、「豊かな人生の創造、グループにおける役職・役割責任、生産性、利益・数字、事業・サービス、未来への挑戦」に対する考え方を共有しています。

 

一方、経営陣対象のクレドでは、人が経営の主体でありグループが成長するための宝であることや、グループ経営者・幹部の要件など、リーダーに不可欠な社員・顧客・品格に対する考え方を示しています。

 

――クレドは2023年4月、タマダホールディングスグループの発足式で社長自らがグループ全社員に向けて、発表し併せて詳しく説明しました。

 

玉田社長:クレドに示した価値観は、会長や私がいつも言い続けてきたことですし、これからも一人ひとりが守り、実践してほしいと伝えました。グループの一員としての誇り、やりがいや一体感、思考力を高めてもらい、自分や事業会社、グループブランドが輝きを増し、エンゲージメントの強化にもつながれば嬉しいですね。

 

グループセミナーで次世代社長を育て、連携力を育む

 

――2023年4月、タマダホールディングスグループの新体制がキックオフし、グループ売上高300億円を目指しています。

 

玉田社長:300億円は現状の約2倍規模ですが、M&Aを上手に活用すること、グループ各社の強みを掛け合わせてシナジーを発揮することで、十分に達成を見通せる数字です。

 

例えば、グループ事業会社の1つの福伸工業は圧力釜など食品メーカー向けの機械製造が強みですが、タマダのプラントエンジニアリングや全国展開の営業・施工・サービス体制と連携することで、裾野が広い食品市場での新たな事業化が見えてきます。グループ全体でアイデアや技術を生かしていきたい、と考えています。

 

――グループ企業の次の経営の担い手を育てる「グループセミナー」もタナベコンサルティングと取り組まれ、すでに2期目がスタートしています。

 

玉田社長:グループセミナーには、グループ各社から、次代の社長として育ってほしい経営幹部が参加しています。2期目からはTHDGの事業ユニット責任者も参加し、2024年春に各事業会社の中期ビジョンを発表してもらう予定です。根っこにある価値観が同じ仲間同士で、自社とグループの未来を掘り起こしていけるように、研鑽を続けています。

 

収益や事業連携だけでなく、グループ各社のリーダーにつながりが生まれることが最大の成果です。私も参加していますが、グループ全体の実像をより深く知り、どうシナジーを出していくかをより広い視野で考える機会になっています。

 

M&Aの活用に加え、グループ企業間のシナジーを発揮することで、グループ売上高300億円を目指していく
M&Aの活用に加え、グループ企業間のシナジーを発揮することで、グループ売上高300億円を目指していく

 

 

――最後に、タナベコンサルティングへの評価と期待を、教えてください。

 

玉田社長:タナベコンサルティングは全国でのホールディングス化に関する実績と知見が豊富です。ホールディングス化の専門知識を持つコンサルタントも参画いただき、チームで推進いただけるので、心強く、安心感がありました。税金対策や資本構成だけでなく経営全体のバランスを考えてくれて、将来的な事業継承や所有と経営の分離も見据えた提言も、具体的で納得できました。

 

グループがより有機的に融合・活性化し、効率的なHD経営を実現していくためにぜひ、これからも力を貸してほしいですね。

 

——いつも価値ある存在へと進化し続けるTHDG様を、力強く支援してまいります。本日はありがとうございました。

 

※掲載している内容は2023年10月当時のものです。

 

PROFILE

    • 会社名:株式会社タマダホールディングスグループ
    • URL:https://www.thdg.co.jp/
    • 所在地:石川県金沢市無量寺町ハ61-1
    • 発足:2023年4月(タマダ創業は1950年)