後継経営者が知っておきたい7つの経営技術
vol.19~22では、後継経営者が身に付けておきたいスキルや知識について解説します。今回は、後継経営者が身に付けるべきマインドセットや経営技術について見ていきます。
後継経営者は、一人の社長として「志」「使命(ミッション)」と向き合う必要があります。次の「承継の7つの経営技術」をチェックしてみましょう。
1.会社をつぶさない
最も大事な判断基準は「会社をつぶさない」こと。そのためには、会社を変革し、成長の壁を乗り越えていく必要があります。特に、ピンチと思われる「赤字」「不況」「承継」は変革のチャンス。「何を変え、どう磨くか」を見極めましょう。
2.創業は新築、承継はリフォーム
住宅で例えると、承継は新築ではなくリフォーム(改修)やリノベーション(改装)です。後継経営者はまず、「家屋の構造」を分析し、正しく現状認識してください。財務諸表や組織図といった「図面」を見ながら、切っても良い柱といけない柱を見極めます。
3.アトツギベンチャースピリッツ
ゼロからの創業に比べ、「アトツギ企業」は、バトンを受けた時点ですでに歴史、信用、顧客、人材があり、スタート地点をプラスから始めることができます。会社を継いで新たなビジネスにチャレンジした方が、成功するベンチャー(スタートアップ)企業になれる確率は高まります。
ただし、新しいビジネスモデル、市場や事業を創造する「スタートアップスピリッツ」は必須。経営理念(創業の精神)を掘り下げ、それ以外は「全て変える」くらいの気持ちで変革していく技術が大切です。
4.経営能力を高める
経営能力とは、「事業センス」と「経営センス」の2つを指します。事業センスは「世の中(消費者)に受け入れられる製品やサービスを発見する能力」、経営センスは「経営におけるバランス感覚」です。この2つの能力を高めていくことが、後継経営者には求められます。
5.後継経営者としての適切な行動を身に付ける
経営者には、経営への興味、健康と体力、素直さ、真面目さ、清潔さ、若さが求められます。
6.リーダーシップと克己心
後継経営者は調整型リーダーシップ、つまり「社員から多くの意見を募り、意見を調整しつつ、長期的な視野のもとで大きな方向性を打ち出すリーダーシップ」をとりやすい傾向があります。また、後継経営者には「業績」「組織変革」へのリーダーシップが重要です。
7.変化と成長に向けた新たな取り組みに挑む
後継経営者には、自社にしかないもの、自社だけができることは何かを追求していくことが求められます。
そのために、まず自社をどのような方向へ変えていくべきか。すなわち、「自分自身のリーダーシップ、会社の事業や組織を通じて、世の中や社会的課題の何を解決するために自社は存在し、どのようなイノベーションを起こすべきなのか」という、「社長の使命(ミッション)」を問うことが重要です。
後継者の心得とは何か
次に、後継経営者の心得についてご紹介します。
まず、常日頃から「見られている」意識を持って行動すべきです。後継経営者は周囲の人から注目され、その言動は一つ一つ先代の社長と比較されるもの。特に、若いなら若いなりに「らしさ」を意識する必要があります。社員に溶け込むためには、服装や態度への注意を怠ってはなりません。
「番頭」との接し方にも注意が必要です。先代からの社員は、自分よりはるかに多くのキャリアを積んでいるものです。
後継経営者にとって、社長就任以降は、いわば旧体制との闘いの始まりでもあります。新社長は早い段階で話し合いの機会を持ち、自分の経営方針を具体的に説明し、協力を求める必要があります。実力のある「番頭」は自分の近くに引き寄せ、その能力を活用すること、好き嫌いに関係なく、自分にない能力を持つ人たちを一つの目標に向かって結集させることを心掛けたいものです。
また、経営者に求められる知識・スキルは環境の変化に合わせて幅が広がります。学ぶ機会と投資を惜しまないことはもちろん、弁護士や税理士、社会保険労務士、コンサルタントなどの専門家(外部アドバイザー)との良好な関係構築が重要になります。
ファーストコールカンパニー(FCC)宣言
タナベ経営では「ファーストコールカンパニー」を提唱しています。100年先も、顧客から一番に選ばれる会社のことであり、この価値観を社内で共有化することが大切です。それが会社のサステナブル(持続可能)な経営を約束します。
1.顧客価値のあくなき追求
業界や業際(異なる事業分野にまたがること)がなくなりつつある中、会社としての強みを磨き、時代に合わせて顧客価値を追求する取り組みが必須です。変化することで道を切り開いていく姿勢が必要となります。
2.ナンバーワンブランド事業の創造
自社が顧客に提供している付加価値を、ナンバーワンのブランド事業へ高めていく必要があります。「事業」という概念が非常に大事であり、会社のブランドを商品(製品やサービス)のレベルから、事業のレベルにレイヤー(階層)を上げていきましょう。
さらに、「会社のブランド」(コーポレートブランド)へアップデートする努力を続けるべきです。商品、事業、コーポレートというブランディングによって、一気通貫でブランド価値をデザインすることが重要です。
3.強い企業体力への意志
「強い企業体力」とは、実質無借金経営の財務体質をいいます。そのためにまず、経常利益率(経常利益÷売上高×100)は10%を目指します。それを10年連続で達成できれば、おのずと実質無借金体質が実現することになります。経常利益率を10%まで引き上げるには、必ず「ブランド価値」という付加価値を乗せる必要があります。
4.自由闊達に開発する組織
自社のビジネスモデルを変えるためには、開発力が必要となります。開発力は、みんなが自由にワイワイと開発していくことで養われます。
「開発する組織(チーム)」とは、組織で開発力を持つということ。持続的に商品や事業を新しく生み出していく力を、個人レベルではなく、会社の機能として取り込んでいるのがサステナブル企業の特徴です。
自由闊達に開発できる会社は強いものです。経営者自身は「発明家」になるのではなく、「企業家」として組織で発明を生み出していくことが大切です。
5.事業承継の経営技術
事業承継の経営技術とは、理念という志を組織で承継し、その実現に100年以上挑戦し続けるための活動に他なりません。
経営者一人では、会社は何もできません。経営者自身が志を明らかにして従業員の協力を得る「宣言マネジメント」を展開する必要があります。宣言マネジメントの一つとして、会社を100年以上存続させるためのロードマップの中に、目指す方向が明確に入っているかどうかをチェックしてください。チェックの指針として、ファーストコールカンパニーの5つの宣言を活用し、どのように高めていくかを意識していきましょう。
※本文・図はタナベ経営主催「後継経営者スクール」のテキストを抜粋して制作しています