社長の重要な仕事として、ビジョンマネジメントの徹底(理念・方針の浸透)が挙げられます。
そもそも、経営とは「社長の考えていることを、社員、組織の努力を通じて達成すること」。年齢・性別・国籍など、考え方や生活環境が違う人々を企業目標に結集することは極めて難しいものです。
社員は「物質的喜び」と「精神的喜び」を望んでいます。従業員に生命を与えるもの、総合力を発揮するものが「経営方針」であり、そこには「会社は必ず持続的に成長し、働く社員も必ず良くなる」という希望が盛り込まれていなければなりません。
加えて、「夢」を具体的な計画に乗せ「予算即決算主義」に持っていく、たくましい行動力が必要になります。企業の持続的成長(サステナブル)と社員の幸福が一致するように、経営の許す限り最大限の刺激を与えることも肝要です。
この一連の取り組みを「ビジョンマネジメント」と呼びます。ビジョンや経営方針を明文化し、インナーブランディングの工夫も必要となります。
会社の器を決めるのは、社長の器に他なりません。社長の正しい決断は、企業繁栄の原動力です。正しい決断による迅速な行動力こそが、企業の全てを制するものと断言してよいでしょう。
決断力と行動力には社長の性格が深く関係しており、「販売不振」「赤字累積」「放漫経営」など社長の性格が災いして倒産したケースは数え切れません。
性格のタイプには「有言実行」「不言実行」「有言不実行」「不言不実行」の4つがあります。経営で大切なことは実行です。「何を言ったのか」以上に「何をやったのか」でその人の本質は見えるもの。また、感情・知性を軸とする人間の性格は「情緒的」と「知的」の2タイプに分類でき、社長は「知的行動派」が理想です。
企業にはさまざまな危機が待ち受けていますが、社長はどんな危機に見舞われようとも微動だにしない、盤石な基盤を持たねばなりません。
その大前提になるのは、資産でも金でもなく、社長の持つ経営哲学です。「何のために事業をするのか」「誰のために事業をするのか」というバックボーン(背骨)が経営哲学です。
「不易流行」という言葉の通り、世の中の移り変わり(環境変化)によって変えていくべきことと、いつの世にも絶対に変えてはならないものがあるのです。
これを企業経営に当てはめると、次のようになります。
・不易=経営理念、創業の精神、経営哲学、企業文化など
・流行=内外の変化に対応(組織、制度、システムなど)
不易に属するものが社長の最も心すべき部分であり、企業のバックボーンです。これさえしっかりしていれば、どんなに外部環境が変わっても、また危機に陥っても会社の屋台骨が揺らぐことはありません。
「自己の哲学は何か」とあらためて考え、確認しながら社員に伝えていくべきものです。事業、人、商品、顧客、金に対する確固たる哲学があってこそ、企業の繁栄は約束されると言えるでしょう。
※本文・図はタナベ経営主催「社長教室」のテキストを抜粋して制作しています。