社長には「省事(ささいで煩雑なことを切り捨てる)によって、トップにしかできない仕事へ注力する」ことが求められます。 そもそも、社長以外の人でもできる仕事は「社長の仕事」ではありません。次の7点に留意して仕事に取り組むことです。 【「社長の仕事」チェックリスト】
□ 部下の仕事をやらない
□ 部下の仕事を侵さず、部下の仕事を助ける(サーバントリーダーシップ)
□ 物的価値より利用価値を中心に考える
□ 会議の出席者に利益を与える。各自が発言できるようにする
□ 精神的な評価とともに物質的な裏付けを与える
□ 後継者を育成する
□ 自分で決断し、責任を取る覚悟を持つ 社長が持つ最大の権限は「人事権=人に関する権限」と「決裁権=金銭に関する権限」です。ただし、最大の権限を持つなら、「(権限の)使い方に細心の注意を払う」ことも忘れてはなりません。 また、社長は決断から逃れることはできません。時には判断材料がわずかしかないケースもありますが、それでも決断を下す必要があります。 決断には社長の強い意志、使命、事業に対する熱意が必要です。さらに、冷静に事実を見ることが正しい決断の鍵を握ります。そのために、「衆知独裁(多くの意見や知恵を集め、最後に社長が決断を下すこと)」が重要となります。 決断に際して求められるのが「先見力(先を読む力)」です。 社長の決断によって会社、組織の方向性が決まります。正しい決断を行うための価値判断や環境の整備を心掛ける必要があります。
事業で成功するために大事なファクターは、「4C」です。 コンディション(Condition)=外部環境
キャパシティー(Capacity)=社長の経営能力
キャラクター(Character)=社長の性格
キャピタル(Capital)=自己資本 企業環境は、順風もあれば逆風もあります。しかし、企業の盛衰を左右するものは外部ではなく、企業内部にあります。それは資本であり、経営能力であり、社長の性格です。 経営能力とは、人・物・金・設備・土地・技術・ノウハウなど、持てる経営資源をどのように活用して回転率を高め、付加価値の高い商品を生み出し、腰が低い(分岐点を押さえる)経営をしていくかであり、それが社長の腕の見せどころです。 どん底まで耐え抜き、「捨てる」「見直す」「組み合わせる」を繰り返し、試行錯誤しながら業績向上にまい進する。苦しいときほど真剣に見つめ、本質を見抜き、自社の持ち味を生かす。頭を柔軟にして、考え方の軸を動かしてみるーー。新しいものを発見する発想が必要な時代です。
タナベ経営は「100年先も一番に選ばれる会社」を意味する「FCC(ファーストコールカンパニー)」を提唱しています。その実現に不可欠なのが、「自由闊達に開発する組織」といえるでしょう。 そもそも事業経営は「顧客の創造」であり、世の中にその商品を必要とする相手を見つけて、それを満たすことです。飽くなき価値創造への意欲と、社会に奉仕せんとする事業精神が一貫していることが肝要です。 他に類を見ない独自の製品・サービスを生み出す事業精神と、それを実現するための研究開発投資への実行力が高収益を生み、その高収益を再び研究投資に回す。この善循環ができている企業は、どのような時代環境でも強いものです。 一方、「発明家は会社をつぶす」と言われる通り、社長のアイデアだけではなく、組織やチームで取り組める仕組みや社風をつくることが大切です。 100年経営の方程式は「社長<事業<会社」であり、実現には、組織で事業や製品・サービスを生み出せる仕組みが必要なのです。
社長の重要な仕事として、ビジョンマネジメントの徹底(理念・方針の浸透)が挙げられます。 そもそも、経営とは「社長の考えていることを、社員、組織の努力を通じて達成すること」。年齢・性別・国籍など、考え方や生活環境が違う人々を企業目標に結集することは極めて難しいものです。 社員は「物質的喜び」と「精神的喜び」を望んでいます。従業員に生命を与えるもの、総合力を発揮するものが「経営方針」であり、そこには「会社は必ず持続的に成長し、働く社員も必ず良くなる」という希望が盛り込まれていなければなりません。 加えて、「夢」を具体的な計画に乗せ「予算即決算主義」に持っていく、たくましい行動力が必要になります。企業の持続的成長(サステナブル)と社員の幸福が一致するように、経営の許す限り最大限の刺激を与えることも肝要です。 この一連の取り組みを「ビジョンマネジメント」と呼びます。ビジョンや経営方針を明文化し、インナーブランディングの工夫も必要となります。
会社の器を決めるのは、社長の器に他なりません。社長の正しい決断は、企業繁栄の原動力です。正しい決断による迅速な行動力こそが、企業の全てを制するものと断言してよいでしょう。 決断力と行動力には社長の性格が深く関係しており、「販売不振」「赤字累積」「放漫経営」など社長の性格が災いして倒産したケースは数え切れません。 性格のタイプには「有言実行」「不言実行」「有言不実行」「不言不実行」の4つがあります。経営で大切なことは実行です。「何を言ったのか」以上に「何をやったのか」でその人の本質は見えるもの。また、感情・知性を軸とする人間の性格は「情緒的」と「知的」の2タイプに分類でき、社長は「知的行動派」が理想です。
企業にはさまざまな危機が待ち受けていますが、社長はどんな危機に見舞われようとも微動だにしない、盤石な基盤を持たねばなりません。 その大前提になるのは、資産でも金でもなく、社長の持つ経営哲学です。「何のために事業をするのか」「誰のために事業をするのか」というバックボーン(背骨)が経営哲学です。 「不易流行」という言葉の通り、世の中の移り変わり(環境変化)によって変えていくべきことと、いつの世にも絶対に変えてはならないものがあるのです。 これを企業経営に当てはめると、次のようになります。 ・不易=経営理念、創業の精神、経営哲学、企業文化など ・流行=内外の変化に対応(組織、制度、システムなど) 不易に属するものが社長の最も心すべき部分であり、企業のバックボーンです。これさえしっかりしていれば、どんなに外部環境が変わっても、また危機に陥っても会社の屋台骨が揺らぐことはありません。 「自己の哲学は何か」とあらためて考え、確認しながら社員に伝えていくべきものです。事業、人、商品、顧客、金に対する確固たる哲学があってこそ、企業の繁栄は約束されると言えるでしょう。 ※本文・図はタナベ経営主催「社長教室」のテキストを抜粋して制作しています。



