その他 2024.02.28

DXフォーラム2024(キタムラ、リコージャパン、リーディング・ソリューションのデジタルトランスフォーメーション)

リコージャパン:“バックオフィスから始めるDX”と“経営の可視化”の同時実現への挑戦

 

リコージャパン:“バックオフィスから始めるDX”と“経営の可視化”の同時実現への挑戦 リコージャパン 執行役員 デジタルサービス企画本部 副本部長 服部 伸吾 氏

 

リコージャパン株式会社

執行役員 デジタルサービス企画本部 副本部長
服部 伸吾 氏

1986年リコーグループ入社、20年余りをシステム営業部門で従事。2009年にリコージャパンの中小企業向けITサービス「ITKeeper」、2019年には「スクラムアセット」を責任者として立ち上げる。2022年に執行役員に就任し、リコージャパンのSEサービス全般を担当。2023年からはRDPSおよびマネージドサービス全般を担当。

 

 

経営の可視化とDX推進は表裏一体

 

経営戦略とDXの推進は、表裏一体で切り離せない関係にある。経営にITを使い自社のビジョンや目的、あるべき姿を可視化することが、DXに向けた戦略になる。経営戦略の立案、年度別計画・方針の策定・立案(Plan)が重要であるとともに、計画の実行(Do)をチェック(Check)しながら改善(Action)のサイクルが回っているか、適正化する外部からの評価も大事である。デジタルがなければ戦略を実行できないから「使いこなす」、あるいはデジタル「だからこそ」可能な戦略によって、新たな顧客価値を提供できる。

 

従来のITは業務の改善・改革ツールだったが、DXは企業の圧倒的な生産性向上を狙った投資であり、狙い通りの生産性向上が見られなければ、投資に見合わない。生産性向上には、成果物の最大化と投入資源の最小化の両方が必要である。ITにつぎ込むリソースを最小・最適化し、最大の成果を得る視点が重要で、経営機構がビジネス主体で推進すべきである。

 

一方で、業務効率化は成果よりも投入資源を減少する視点で、IT部門主体でも推進可能になる。2つの視点と主体の違いを頭に入れ、生産性向上を狙うDXを進めることが重要である。

 

 

リコージャパンのデジタルサービスとDX

 

リコーグループはシステムインテグレーターとしての歴史は長く、独自のオフコンをつくった時代から、中堅・中小企業の課題解決のサポートを続けてきた。現在は、データドリブン経営を支援するソリューションモデル「スクラムアセット」、クラウド型のアプリケーションのベースとなる「Empowering Digital Workplaces(EDW)プラットフォーム」などのデジタルサービスを、100万事業所の顧客に寄り添いながら、約350拠点・約1万8500人の従業員が提供している。

 

リコージャパンは、ITのエンドポイント(デジタル機器)、アプリ、インフラにサポート&サービスを組み合わせ、企業規模ごとに最適な業種・業務課題解決モデルを展開。近年は、インボイス制度や改正電子帳簿保存法などの法律対応、企業間取引や現場のデジタル化、社内ビジネスプロセスの効率化など、多様なDX推進を支援。新たに、タナベコンサルティングとの協業により、システムにとどまらず経営そのものを変えるソリューションも展開している。

 

リコージャパンのDX推進体制としては、経営機構のDX委員会とIT部門主体のDX推進センターの両輪を回して運用している。DX委員会は社長がトップの直轄組織で、DXに関する全社活動方針の策定、顧客へのDX提供価値の創造など、デジタル化の大方針を決める。

 

その方針に基づき、DX推進センターは社内システムの企画及び構築システムの運用改善を担う。

 

DXの実現に向け、4つのフレームで戦略テーマを設定する。特に重要なのは「顧客」「価値創出」の2軸である。顧客により多くの価値を迅速に届け、満足いただけるかを視野に、顧客に向かうプロセス改革である。

 

 

リコージャパンのDX実現に向けたテーマ設定

リコージャパンのDX実現に向けたテーマ設定

DX時代にふさわしいシステム構築・開発としては、4つの基本方針を設定している。

 

① BizDevOps:ビジネス部門とIT部門が一体となって事業方針、システム化方針を理解し事業目標を達成する。

 

② Cloud First/Fit To Standard:クラウドを活用し、カスタマイズではなく標準システムに運用を合わせ、効果をいかに早く出すかを重視する。

 

③ アジャイル:反復型開発で、戦略KPI(重要業績評価指標)のPDCAサイクルを回すまでを迅速化する。

 

④ UI/UX:エンドユーザーである社員が心地良く直感的に使えることを重視し、日常に溶け込むことを目指す。

 

 

戦略の評価指標は、戦略に基づくKGI(重要目標達成指標)・KPIを設定し可視化する。職種ごとに、セールス(営業)はアポ獲得数や受注数、平均利益率、マーケティングはページビュー数、コンバージョン率、リード数、システム開発やカスタマーサクセスもそれぞれにKPIを設定する。ROIC(投下資本利益率)をはじめとする財務指標のKGIにどう関与し、連動しているのかが分かるKPIを設定することも重要になる。

 

評価指標の可視化フローについては、戦略・方針からPDCAを回していく。日々発生するデータを収集、統合・加工、蓄積し、可視化・分析、チェックまで回す。また、策定した戦略・計画やKPIが本当に正しかったのか、分析結果をモニタリングすることで、新たな戦略に反映する。

 

特に重要なのは、データを正しく集めること、正しいサイクルでチェックを行うこと。必要な時に必要なサイクルで分析できる正しいデータ収集・チェックを目指し、普遍なサイクルとして理解しながらDXを進めることである。

 

 

評価指標の可視化フロー

評価指標の可視化フロー

 

 

評価指標の可視化基盤として、さまざまなデータ生成元が企業内に散在している。バックオフィスシステムには結果データが集まり、SFAは契約管理、各部門システムはプロセス中心のデータになる。それらのデータをETL・EAIなどのデータ連携ツールやRPAを利用して収集から活用までを構造化し、必要なKGI・KPIを、経営・事業・担当レベルがそれぞれに、適正なサイクルで、必要な人に必要なカタチで見せられることが重要である。

 

 

課題創造型へ変革し、生産性を向上

 

リコージャパンの方針・戦略は、課題創造型体質へ変革し、生産性を上げながら業績を高めること。また、顧客の理解を深め、課題を深掘りして新たなニーズも発掘し、事業成長に貢献することである。そのために、価値づくり、顧客づくり、人づくりという3つの方針を掲げている。

 

価値づくりは、顧客価値が高く競争力ある事業・ビジネスモデルの強化・創出。顧客づくりは、市場・顧客を重点化した高効率な顧客接点体制の構築。人づくりは、顧客接点で価値を創造できるプロフェッショナル人材の育成である。

 

特に、顧客づくりに向けて「顧客数・取引量を増やす」「課題創造力を上げる」「さらなる生産性向上に向けた取り組み」という3つの施策を進めている。財務計画や取引事業所数、案件(成約数、単価、事業所単価)のKGI、そのプロセスとなる面談件数などのKPIも設定している。

 

指標に対する社員の行動評価のフレームワークも確立している。営業担当者の場合、顧客との面談の質を測る「面談レベル」を6段階で指標化。顧客のニーズを聞き出し、ビジネスにつながる面談を行う「レベル4」が個々の成長目標となり、営業活動の量と質を高める工夫も各拠点でマネジメントしている。

 

社内で顧客づくりを推進するプログラムのポータルサイトも開設している。拠点・個々のレベル別面談件数や推移をグラフチャートで公表し、自他の達成度合いを可視化・共有して、スキルアップや次なるアクションにつなげている。また、マネジャー連携・支援による面談の獲得にも役立てている。属人的な営業活動から、数値でパフォーマンスやプロセスを管理する事業展開へのシフトを進めている。

 

また、生産性向上に向けて、セールスの接点活動情報の共有を進めてきた。今後はさらに、カスタマーエンジニアやシステムエンジニア、コールセンターなど、全職種の顧客接点活動の情報共有を進める。データを一元化し、リアルタイムで顧客の現状や課題を蓄積し活用を迅速化して、案件の発生率・成約率、顧客づくりの活動量・質をさらに高めていく。

 

 

リアルタイムのデータ共有で組織生産性向上と案件創造力の強化へ

 

リコージャパンは、デジタルサービス企業として「モノ軸」から「課題軸」に変革していくために、顧客接点活動の量と質を高め、組織生産性の向上と案件創造力の強化を目指している。そのためにいま、プロセスマネジメントとプロセスデータの見える化を強化している。スマートフォンでさまざまな活動情報をデータとして入力・登録・閲覧できる環境を提供し、顧客情報の一元化や顧客課題を可視化していく。

 

リコーグループには、セールス活動のさまざまなデータが各システムに記録保管されている。基盤となる同社の保管データは、顧客データ、企業データで数百万レコード(データベースを構成する単位の1つ)および売上明細は億単位のレコードと非常に多い。それらを連携させて蓄積、分析、可視化すると同時に、顧客接点の現場で正しいデータを正しいタイミングで入力・登録してもらい、効率も向上させていく。社員の入力・登録のモチベーションが上がり、円滑に日々の活動を登録できる環境を整えることが重要になる。

 

世界的な紛争や天災など予測不能なことにも対応が求められる時代になっている。物流や拠点の見直し・分散など、企業が置かれる環境は複雑・高度化していく。だからこそ、リアルタイムでデータを把握し、次の一手を迅速に意思決定することが重要になる。

 

データを蓄積・分析・活用する経営の可視化とDX化を両輪で進めることが望ましい。2020年からIT導入補助金政策が始まっている。リコージャパンは中堅・中小企業のデジタル化支援に、今後もしっかりと伴走していく。

 

※図表などのデータは各社講演資料より抜粋したものです。