ヤマダホールディングス:ヤマダホールディングスの「くらしまるごと」コンセプトを支える住宅事業戦略
執行役員 経営企画室長
清村 浩一氏
福岡県出身。1982年ベスト電器入社、2012年ヤマダ電機(現ヤマダホールディングス)グループ入りを機に、2018年に転籍。経営戦略室長を経て、2019年に執行役員経営企画室長兼サステナビリティ推進室長に着任、経営戦略、サステナビリティ戦略、経営数値管理、IR・広報の職務を行う。2023年9月ヤマダホームズ代表取締役社長。
家電量販会社が住宅事業参入した理由
2000年代以降、今後の人口減少・少子高齢化による需要や市場の縮小が懸念される中、ネット社会やIoTの進化に伴う家電と暮らしの融合を見据え、ヤマダホールディングスはその変化に対応すべく「家電」を拡大し続けていくべきかどうか、将来の事業の在り方を模索していた。
そうした中、日々を便利に楽しくする家電から暮らしの基盤である住まいまで、衣食住の“住”に特化した多様なサービスを展開する“暮らしまるごと”戦略を打ち出した。
【図表】“暮らしまるごと”戦略
出所:ヤマダホールディングス講演資料
“暮らしまるごと”戦略では、当社グループが有する各セグメント(デンキ・住建・金融・環境・その他)の 「つながる経営」 を推進。ヤマダ会員6000万人に対し、これまで家電を通じた「個」の付き合いであったが、住宅を手掛けることにより、家族単位、そしてさまざまなライフイベントやシーンで、「暮らし」に関わる全てにお付き合いができることとなった。
そして2011年、エスバイエルの子会社化を機に環境配慮型住宅事業へ本格参入した。以来、スマートハウスや耐震性、省エネルギー性能に優れた注文住宅をローコストで提供することを信念に、新築や建替え、中古再販住宅、住宅の品質検査・維持管理、住宅設備の製造・販売、水まわりから内装・外装までを含めたトータルリフォームを手掛けている。
その後、住宅事業者のM&Aを推進し事業を拡大していった。ヤマダホールディングスの設立とともに、2021年、住宅事業を総括して管理・事業運営を行うヤマダ住建ホールディングスを設立。住宅分野に関わる全ての会社を集約し、一元的なマネジメントを行う体制を構築した。
前述の通り、当社は5つのセグメントのシナジー効果により成長戦略を展開している。住宅を入口とした各セグメントが手掛ける商品の販売につなげていくことで、住宅業界の独自の地位を築いている。
特長として、ヤマダ電機では家電・家具・インテリア販売、テレビショッピング、リユース・リサイクル商品販売、SPA、EC、リフォームなど、金融事業では住宅・リフォームローンや電気製品購買のファイナンスなど、環境事業では使用済み家電製品のリユース・リサイクル、その他事業では飲食・旅行業、家電製品の配送設などを手掛ける。
住建事業では、注文住宅、建売、建て替えなどの住宅販売、中古住宅再販、住宅の品質検査・維持管理、内装・外装を含む住宅設備の製造販売などを手掛ける。
「年商3000億円・新築受注1万棟」を見据えて急成長
住宅事業については、「年商3000億円・新築受注1万棟」を見据えた事業展開を行っている。急成長の理由は次の通りだ。
1.住宅事業者の積極的M&Aによる事業拡大
さまざまな住宅ブランドを有する事業者の子会社化により、快適な住空間を提供するリソースが充実していった。
2.㈱ヒノキヤグループの完全子会社化
設計、施工、アフターフォローを全て自社完結で行う圧倒的なノウハウとブランド力を有するヒノキヤグループの完全子会社化により、最大限のシナジーを発揮できている。
3.家電・住建・環境事業等を有するヤマダホールディングスグループの経営資源活用
各都道府県における展示場統廃合による経営効率化、未出店地域への出店拡大、共通インフラ活用によるコストダウン、ヤマダデンキ店舗敷地内へのショールーム展開を推進。またグループ連携により、ウッドショックなどの市場環境の変化時にも事業成長の継続が可能となる。
4.多彩な住宅ブランド
高い品質の住宅をリーズナブルな価格で提供できる環境を整えてきた。
5.住宅・リフォーム市場の拡大
中古住宅買い取り再販の取り組みが本格化。住環境への関心の高まりもあり、需要が増加している。
6.市場および消費者の購買行動の変化に対応
環境配慮住宅、家電と親和性の高いスマートハウスの提案を進めている。
持続的成長に向けた戦略
当社は社会全体の変容を的確に捉え、より快適な住環境をご提供することをコンセプトに、単なる住宅のご提案ではなく、社会課題の解決や脱炭素なども同時に提案できる住宅を手掛けていく。持続的成長に向けた具体的戦略は次の通りだ。
■既存事業とともに成長:住建を含む5つのセグメントのシナジー効果により、家電、家具・インテリア、リフォーム、金融まで取り揃えた広範な対応力を活用する。
■M&A戦略:事業拡大、ノウハウ取り込みを前提に推進。他社との業務提携を通じたシナジー効果の向上を図る。
■中古再販事業:2020年より着手した不動産事業を拡大。最近では都市圏以外のエリアで住宅を手放す方が増えており、空き家問題も含めてこれらの社会課題解決が求められる中、着実な成長を遂げている。
■三菱自動車の電気自動車(EV)の協業:EV単体の販売に限らず、「住」に関連する商材として、スマートハウスの蓄電池代わりになる上、保険や住宅ローンなど多様な金融商品、充電設備や太陽光付カーポート等のリフォームといったさらに進化・発展した「暮らしまるごと」の提案が可能。
当社は今後も、より快適さと性能を追求した付加価値の高い住宅を提案していく。成長に向けた取り組みとしては、「住宅展示場及び営業所の新規出展」「営業拠点拡大による受注体制強化」「中古再販事業の成長」「ICTの活用による業務効率化推進で工期短縮」「消費者ニーズにあわせた商品展開」を推進する。
具体的には、ヒノキヤグループの手掛ける「Z空調」、ヤマダホームズが強みに持つ「災害に強い家」、今後の社会課題解決に向けた蓄電池代わりになるEVを中心としたスマートハウスの提案を、多彩なブランド住宅、多彩な価格帯を通じ、ヤマダ会員のアクティブユーザー6000万人、その家族の皆様に提供していく。
「電気屋で住宅が買える」という当社ならではの提案を進め、住建分野をヤマダホールディングスの持続的成長に向けた大きな役割を持つ事業へ成長させていく。