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コラム 2023.09.19

イノベーションが未来をつくる~建設イノベーションフォーラム~ ゲスト:住友林業、竹中工務店、ヤマダホールディングス

タナベコンサルティングは2023年8月「第6回建設イノベーションフォーラム」を開催。 ※

タナベコンサルティングは2023年8月24日、「第6回建設イノベーションフォーラム」を開催。建設業の多様な課題に向き合いながら、企業変革・イノベーションを進めてきた特別ゲストによる各社事例、そしてタナベコンサルティングによる講演をリアルタイムで配信した。

※登壇者の所属・役職などは開催当時のものです。

住友林業:建物のCO2の見える化に向けて

住友林業 木材建材事業本部 ソリューション営業部長 北川 喜夫 氏

住友林業 木材建材事業本部 ソリューション営業部長 北川 喜夫 氏 1990年住友林業入社。インドネシアでの合板の仕入れ業務などに従事後、住宅事業における資材調達の責任者として、資材の選定や調達の意思決定に携わる。2022年1月、One Click LCA販売部門が発足し、脱炭素化に向けた建物のCO2見える化の事業責任者として、統括、推進を担っている。

脱炭素に向けた長期ビジョンを策定・推進

住友林業グループの長期ビジョン「Mission TREEING 2030」では、事業を通じた地球環境、人々の暮らしや社会、市場や経済活動への価値提供を目指している。

【図表1】住友林業グループの脱炭素事業

【図表1】住友林業グループの脱炭素事業

出所:住友林業講演資料

木には炭素固定という機能が備わっている。炭素固定とは、木が吸収したCO2(二酸化炭素)を炭素として内部に貯留する機能。伐採した木を木造建築や家具などの木材製品に活用することでCO2を長期間、大気に排出せずに済む。

木造建築により、鉄筋コンクリート造で建てた場合に排出していたはずのCO2が削減される。木くずや廃材はバイオマス発電に活用することでCO2を削減できる。つまり、木を計画的に伐採して再植林し、社会全体での木材活用を推し進めることで、炭素固定量が増えて脱炭素に貢献できる。

伐採・再植林は森林全体で行わず、保全拡大を行う保護林と、木材生産を行う経済林にゾーニングする(循環型森林経営)。例えば、国内のスギの森林では、50年を目安に森林が若返るサイクルを回し、CO2吸収量を増加させる。伐採・再植林する経済林は、年間で全体の2%のみにとどめており、生態系を守りながら森林を若返らせ、CO2吸収量が増加する仕組みを構築している。

【図表2】循環型森林経営

【図表2】循環型森林経営

出所:住友林業講演資料

このように、森林の適切な伐採・植林に加え、伐採した木材の建築や再エネへの活用により、脱炭素化に貢献している。

建物のCO2に関する現状と課題

建設セクターから排出されるCO2のうち、約70%を占めるオペレーショナルカーボン※1はZEH※2やZEB※3の普及により削減が進んでいる。一方、エンボディドカーボン※4をいかに削減できるかが今後は重視される。

エンボディドカーボン算定の際は、ライフサイクルアセスメント(LCA)※5に沿って、建築物の一生涯の環境負荷を評価することが必要となる。ここで、国際的なエンボディドカーボン算定・開示の動きを見ておこう。

■EU全域:2025年以降全ての資材のCO2開示が求められる見通し。建物のライフサイクルカーボンの報告義務化が開始予定。(2027年~2000㎡以上の建物、2030年~全ての建物が対象)

■米国:特定のエリアで、2023年よりグリーンビルディング認証LEED※6が必須化。

■カナダ:バンクーバーで2017年よりエンボディドカーボンの開示が義務化され、現在10~20%の削減が求められている。

一方、日本の省官庁のエンボディドカーボンに関する取り組みは、次の通りである。

■国土交通省:2022年12月にエンボディドカーボンの評価手法整備などを目的とする「ゼロカーボンビル推進会議」を設置。また、2023年5月の報告書で「2030年エンボディドカーボン算定義務化」が言及されている。

■経済産業省(環境省):カーボンニュートラル実現に向けたサプライチェーン全体でのCO2排出量削減に向けて、製品ベースのCO2排出量算定・開示を推進。

■林野庁:2023年4月に「令和4年度CLT・LVLなどの建築物への利用環境整備報告書」を公表。木材の利活用や建物のCO2算定の必要性などを発信している。

次に、日本の民間企業におけるエンボディドカーボン算定の取り組みについて見ておきたい。

■デベロッパー(不動産協会):2023年6月不動産協会が「建設時GHG(温室効果ガス)排出量算出マニュアル」を提供開始。自社の物件でエンボディドカーボン算定を公表する事例も出てきている。

■設計事務所、ゼネコン:一部企業は、「建物のLCA指針」をベースにエンボディドカーボン算定ツールを自社開発している。エンボディドカーボンをいかに効率的に算定するか検討を開始。

■テナント:外資系企業が日本で入居する建物に対してLEED取得物件を求め、その取得を要請する動きがある。

上記の通り、建設セクターにおける脱炭素化に向けたエンボディドカーボンの重要性は世界中で高まっている。海外では欧州を中心に算定や開示が義務付けられる見通しであり、日本でもエンボディドカーボンの算定・開示に対する関心やニーズが急激に高まっている。

一方、日本国内の課題として、「エンボディドカーボン算定ツールの普及」「日本市場に合致した資材ごとのCO2データ拡充」が挙げられる。

建物のCO2の見える化に向けた取り組み

住友林業は、2022年にエンボディドカーボン算定ソフトウエア「One Click LCA」の日本販売代理店となり、建設業界全体の脱炭素建築の普及に取り組んでいる。

【図表3】「One Click LCA」により短時間で精緻にライフサイクル全体のCO2算定が可能

【図表3】「One Click LCA」により短時間で精緻にライフサイクル全体のCO2算定が可能

住友林業「One Click LCA」サイト

すでに世界140か国以上で導入されており、2022年8月、日本版ツールの販売を開始。以来、多くのデベロッパー、ゼネコン、設計事務所などで導入が進んでいる。

One Click LCAにより、建物の資材数量を元に、短時間で精緻にライフサイクル全体のCO2を算定できる。One Click LCAは、コンセプト段階の簡易算定機能(カーボンデザイナ3D)と、主機能である詳細算定機能を併せ持つ。

簡易算定機能(カーボンデザイナ3D)は、設計の初期段階で利用できるCO2の算定機能。建物の延床面積、階数、用途などの情報のみで概算排出量を算出できる。一方、詳細算定機能は、実施設計段階での部材情報に基づき、エンボディドカーボンの算定を行う。

One Click LCAの特長は3つある。

① CO2排出量の精緻な算定

・ISO準拠の汎用データや環境認証ラベル「EPD」が利用可能。

・「施工」時の省エネなどさまざまな企業努力を結果に反映できる。

② 国際認証との高い適合性

・国際規格ISOや60以上の世界のグリーンビルディング認証に適合。

③効率的なデータ算定が可能

・資材データはBIM※7・エクセルから取り入れることができる。

・ライフステージごとのCO2を自動計算で効率良く算定できる。

今後は、①日本の建築現場の実態に合わせた自動算定の条件設定、②BIM・エクセルデータ作成の効率化、③日本市場に合致したISO準拠の原単位の整備・拡充に向けてEPDの普及に注力していく。

EPDとは、原材料調達から廃棄・リサイクルまでの、製品の全ライフサイクルにわたる環境影響を見える化したISO準拠の環境認証ラベルである。

日本ではEPDの取得件数が少ないのが現状だ。メーカー側のEPD取得に関わる負担(データ作成、申請作業、取得・維持コストなど)を軽減し、取得促進するサービスが必要となる。

EPDの普及拡大に向けて、住友林業は2023年2月に、メーカーのEPD取得を支援するソフトウエア「EPDジェネレータ」の販売を開始。EPD ジェネレータにより、煩雑なEPDプロセスの自動化、時間・費用・労力の削減が可能となる。

また、2023年にはOne Click LCAを活用したCO2(GHG)排出量算定業務を受託し、精緻かつ国際認証に適合した算定結果を提供するサービスを開始している。

建設セクターの脱炭素化に向けて、今後はエンボディドカーボン削減の重要度が増していく。エンボディドカーボン削減には、CO2排出量の精緻な見える化が求められ、CO2排出量の精緻な把握には、EPDの普及が必要不可欠となる。

当社は日本版One Click LCAソフトウエア普及やメーカーに対するEPD取得推進事業の展開により、建設セクターの脱炭素化に向けて、業界の皆様と連携・協業していく。

※1 居住時・使用時に発生するCO2

※2 Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略。家庭で使用するエネルギーと、太陽光発電などで創るエネルギーをバランスして、1年間で消費するエネルギーの量を実質的にゼロ以下にする家

※3 Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略。快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物

※4 一連の建設プロセスで発生するCO2

※5 製品・サービスのライフサイクル全体、またはその特定段階における環境負荷を定量的に評価する手法

※6 環境配慮された優れた建築物を作るため先導的な取り組みを評価するグリーンビルディングの国際的な認証プログラム(環境性能評価認証システム)

※7 ビルディング インフォメーション モデリングの略。コンピューター上に現実と同じ建物の立体モデル(BIMモデル)を再現し、建築ビジネスの業務を効率化などに活用していく仕組み

竹中工務店:竹中工務店におけるデジタル人材育成

竹中工務店 デジタル室 管理・教育グループ長 田邊 紀光 氏

竹中工務店 デジタル室 管理・教育グループ長 田邊 紀光 氏 1992年4月入社。作業所、技術研究所勤務を経て、インフォメーションマネジメントセンター(情報システム部門)に配属。全社ICT関連費用の予算計画、実績管理などを担当し、2022年4月より現職。全社的なデジタル人材育成計画の立案・運営をはじめ、デジタル専門人材の採用、全社デジタル関連費用管理などを担当。

竹中工務店におけるデジタル変革の取り組み

竹中工務店は、建設工事および土木工事に関する請負、設計、監理を主事業としている。売り上げ(単体)の9割以上を建設事業が占める“建設専業”である点は、他社と異なる当社の特徴である。

神社仏閣の造営を業として1610年に創業。従業員数7751名(2023年1月)、グループ会社55社を擁する。

現在はグループ会社と一体となった成長戦略として、「グループで、グローバルに、まちづくりにかかわる」を掲げた「2025年グループ成長戦略」に取り組んでいる。デジタル部門としては、「まちのライフサイクルの企画・計画、建設、維持運営」に関するデジタル変革をはじめ、これを支えるアプリケーションやインフラの構築・運用を担っている。

【図表1】2025年グループ成長戦略

【図表1】2025年グループ成長戦略

出所:竹中工務店講演資料

竹中工務店がデジタル変革に取り組む背景として、建設業における課題や環境変化が挙げられる。他産業に比べて低い生産性、建設技能労働者の減少、改正労働基準法の適用など、従来のやり方を根本的に見直さなければ、とても対応しきれない状況にあり、デジタルの力が求められた。

デジタル化の推進にあたっては、やみくもに取り組むのではなく、全社で、整合性を持って進める必要がある。具体的には、次の8項目を同時並行で進めていく。

1.デジタル化によって目指す姿を設定、バックキャスト

2.デジタルデータを活用するためのデジタル基盤整備、クラウド化

3.デジタル化進展に伴うサイバーセキュリティーリスク低減、安定稼働への対応

4.AIなど先進的なデジタル技術適用

5.データ利活用のための組織・人材

6.デジタルを積極的に活用する業務・働き方改革

7.グループ・グローバルを視野に、デジタル化推進

8.上記のための投資

これらを通じ、デジタル化による業務の効率化、さらにはデジタル化による業務の変革に取り組む形となる。

竹中工務店では「2030年にデジタル変革で目指す姿」として、「お客様の課題解決と事業機会の創出」「圧倒的なお客様満足を生み出すものづくり」「建築とそのプロセスでのサステナブルな価値提供」を策定。この「目指す姿」を関係者全員で共有し、推進している。

デジタル変革の推進体制は、役員が委員を務めるデジタル中央委員会の下にデジタル変革推進タスクフォースを編成。メンバーは本社の管理系(経営企画、総務など)・プロジェクト系(営業、設計、生産など)のメンバーと、事業部門のメンバー(本支店のデジタル化推進責任者)をアサインしている。

デジタル室は全体事務局を務めながら、デジタル化推進副責任者として、事業部門(各店)にも兼務配置されている。このように、デジタル部門と事業部門が二人三脚でデジタル変革を推進できる体制が特徴である。

【図表2】デジタル変革の推進体制

【図表2】デジタル変革の推進体制

出所:竹中工務店講演資料

竹中工務店は「働き方改革」について、トップから全社員へメッセージを発信している。「労働生産性と知的生産性の向上のために、働き方改革を断行しよう」という内容で、その中には「すべての業務のデジタル化」を掲げている。

デジタル化されたデータをデータベースに集約し、そのデータを使って効率よく物事を判断できるようにしていくために、全社のデータ蓄積・活用の仕組みである「建設デジタルプラットフォーム」を構築し、運用を実施。また、データ基盤と業務をサポートする「DXアプリケーション群」の開発を順次進めている。

【図表3】建設デジタルプラットフォームの構築

【図表3】建設デジタルプラットフォームの構築

出所:竹中工務店講演資料

デジタル変革の効果をより高めるには、従業員がデータ基盤に蓄積されたデータをアプリケーションを介して扱うだけでなく、従業員が自由に扱える状況にしなければならない。当社の場合、全従業員がアプリケーションにあるデジタル情報を有効活用するためのリテラシー向上が課題となっていた。

デジタル人材育成の取り組み

従来、情報系の部門に配属された社員はデジタルエキスパート、それ以外の部門だと担当事業のエキスパートとして教育されてきた。しかしながら今後は、デジタルと事業のどちらの専門性も身につけているハイブリッド人材を育成していく必要がある。

この考えのもと、社員を4つのカテゴリーに分け、デジタル人材育成を進めている。デジタルで業務を行う「一般社員」(カテゴリーⅠ)、デジタル化活動をリードする「部門キーマン」(カテゴリーⅡ)、デジタル変革を主導する「デジタル技術専門人材」(カテゴリーⅢ)、「デジタル技術&事業エキスパート」(カテゴリーⅣ)である。

各カテゴリーにおいて、目指すスキル・リテラシーを設定し、どういった狙いでどのような向上策を、どのような手段で行うかをまとめている。カテゴリーⅠの場合、2022年入社の新入社員(新社員)から、この育成方法を本格運用している。

カリキュラムの内容は、経済産業省「デジタルスキル標準ver.1.0」を参考にした。「ビジネスパーソン一人一人がDXに関するリテラシーを身につけることで、DXを自分事ととらえ、変革に向けて行動できるようになる」という同標準策定の狙いに共感できたこと、事前に検討していたカリキュラムの内容にも非常に近かったことが、参考にした理由となる。

加えて、「デジタルスキル標準」は順次アップデートされるので、内容の取りこぼしがないことも参考にした理由となる。

新入社員教育プログラムの受講者の学び・気づきとしては、DXの推進・生産性向上は喫緊の課題であること、建設デジタルプラットフォームの整備を進め、全社的にデジタル変革を進める必要があること、データを活用できる力が求められること、業務のデジタル変革はデジタル室だけが取り組むものではないこと、の4つ。これまでの取り組みや成果発表を通じ、スキルだけでなくマインドも含めて向上しており、着実に成果が上がっていると実感している。

また、情報部門の風土・文化も変わってきている。これまで情報システム部門は受け身の姿勢で仕事を進めていたところがあったが、デジタル変革の責任部門として、一人一人が変革をけん引する意識を醸成する必要があった。

そこで、文化風土改革を行うことを室長に宣言してもらい、部門外にも周知。部門長・上司は、メンバーの意見に対する良しあしの判断だけでなく、メンバーに熟考させ、行動につなげていくよう問いかける手法へ変更し、意識改革を行った。

メンバーに対しては、課題に対する解決案の仮説を立て、メンバー間で周知結集の場を設け、社内相談とともに先進技術や事例を学びながら、主管部門や顧客への提案を行う、といったサイクルを繰り返しながら、意識変革へつなげていった。

今後、カテゴリーⅠ(一般社員)は、新入社員向けコンテンツのダイジェスト版やeラーニング版を製作し、すきま時間などにいつでも学べる環境を整え、新入社員以外にも展開し、カテゴリーⅠ全体の底上げを図る。また、中級編・上級編を作成し、カテゴリーⅡ(部門キーマン)にも展開していく。カテゴリーⅢ(デジタル技術専門人材)は、現場配置やローテーションを拡大し、事業分野の専門性を高めていく。

事業領域の人材に関してはデジタル領域の専門性、デジタル技術の専門人材に関しては事業分野の専門性を高めるべく、それぞれのハイブリッド人材を育成する活動を今後も推進していく。

ヤマダホールディングス:ヤマダホールディングスの「くらしまるごと」コンセプトを支える住宅事業戦略

ヤマダホールディングス 執行役員 経営企画室長 清村 浩一氏

ヤマダホールディングス 執行役員 経営企画室長 清村 浩一氏 福岡県出身。1982年ベスト電器入社、2012年ヤマダ電機(現ヤマダホールディングス)グループ入りを機に、2018年に転籍。経営戦略室長を経て、2019年に執行役員経営企画室長兼サステナビリティ推進室長に着任、経営戦略、サステナビリティ戦略、経営数値管理、IR・広報の職務を行う。2023年9月ヤマダホームズ代表取締役社長。

家電量販会社が住宅事業参入した理由

2000年代以降、今後の人口減少・少子高齢化による需要や市場の縮小が懸念される中、ネット社会やIoTの進化に伴う家電と暮らしの融合を見据え、ヤマダホールディングスはその変化に対応すべく「家電」を拡大し続けていくべきかどうか、将来の事業の在り方を模索していた。

そうした中、日々を便利に楽しくする家電から暮らしの基盤である住まいまで、衣食住の“住”に特化した多様なサービスを展開する“暮らしまるごと”戦略を打ち出した。

【図表】“暮らしまるごと”戦略

【図表】“暮らしまるごと”戦略

出所:ヤマダホールディングス講演資料

“暮らしまるごと”戦略では、当社グループが有する各セグメント(デンキ・住建・金融・環境・その他)の 「つながる経営」 を推進。ヤマダ会員6000万人に対し、これまで家電を通じた「個」の付き合いであったが、住宅を手掛けることにより、家族単位、そしてさまざまなライフイベントやシーンで、「暮らし」に関わる全てにお付き合いができることとなった。

そして2011年、エスバイエルの子会社化を機に環境配慮型住宅事業へ本格参入した。以来、スマートハウスや耐震性、省エネルギー性能に優れた注文住宅をローコストで提供することを信念に、新築や建替え、中古再販住宅、住宅の品質検査・維持管理、住宅設備の製造・販売、水まわりから内装・外装までを含めたトータルリフォームを手掛けている。

その後、住宅事業者のM&Aを推進し事業を拡大していった。ヤマダホールディングスの設立とともに、2021年、住宅事業を総括して管理・事業運営を行うヤマダ住建ホールディングスを設立。住宅分野に関わる全ての会社を集約し、一元的なマネジメントを行う体制を構築した。

前述の通り、当社は5つのセグメントのシナジー効果により成長戦略を展開している。住宅を入口とした各セグメントが手掛ける商品の販売につなげていくことで、住宅業界の独自の地位を築いている。

特長として、ヤマダ電機では家電・家具・インテリア販売、テレビショッピング、リユース・リサイクル商品販売、SPA、EC、リフォームなど、金融事業では住宅・リフォームローンや電気製品購買のファイナンスなど、環境事業では使用済み家電製品のリユース・リサイクル、その他事業では飲食・旅行業、家電製品の配送設などを手掛ける。

住建事業では、注文住宅、建売、建て替えなどの住宅販売、中古住宅再販、住宅の品質検査・維持管理、内装・外装を含む住宅設備の製造販売などを手掛ける。

「年商3000億円・新築受注1万棟」を見据えて急成長

住宅事業については、「年商3000億円・新築受注1万棟」を見据えた事業展開を行っている。急成長の理由は次の通りだ。

1.住宅事業者の積極的M&Aによる事業拡大

さまざまな住宅ブランドを有する事業者の子会社化により、快適な住空間を提供するリソースが充実していった。

2.㈱ヒノキヤグループの完全子会社化

設計、施工、アフターフォローを全て自社完結で行う圧倒的なノウハウとブランド力を有するヒノキヤグループの完全子会社化により、最大限のシナジーを発揮できている。

3.家電・住建・環境事業等を有するヤマダホールディングスグループの経営資源活用

各都道府県における展示場統廃合による経営効率化、未出店地域への出店拡大、共通インフラ活用によるコストダウン、ヤマダデンキ店舗敷地内へのショールーム展開を推進。またグループ連携により、ウッドショックなどの市場環境の変化時にも事業成長の継続が可能となる。

4.多彩な住宅ブランド

高い品質の住宅をリーズナブルな価格で提供できる環境を整えてきた。

5.住宅・リフォーム市場の拡大

中古住宅買い取り再販の取り組みが本格化。住環境への関心の高まりもあり、需要が増加している。

6.市場および消費者の購買行動の変化に対応

環境配慮住宅、家電と親和性の高いスマートハウスの提案を進めている。

持続的成長に向けた戦略

当社は社会全体の変容を的確に捉え、より快適な住環境をご提供することをコンセプトに、単なる住宅のご提案ではなく、社会課題の解決や脱炭素なども同時に提案できる住宅を手掛けていく。持続的成長に向けた具体的戦略は次の通りだ。

■既存事業とともに成長:住建を含む5つのセグメントのシナジー効果により、家電、家具・インテリア、リフォーム、金融まで取り揃えた広範な対応力を活用する。

■M&A戦略:事業拡大、ノウハウ取り込みを前提に推進。他社との業務提携を通じたシナジー効果の向上を図る。

■中古再販事業:2020年より着手した不動産事業を拡大。最近では都市圏以外のエリアで住宅を手放す方が増えており、空き家問題も含めてこれらの社会課題解決が求められる中、着実な成長を遂げている。

■三菱自動車の電気自動車(EV)の協業:EV単体の販売に限らず、「住」に関連する商材として、スマートハウスの蓄電池代わりになる上、保険や住宅ローンなど多様な金融商品、充電設備や太陽光付カーポート等のリフォームといったさらに進化・発展した「暮らしまるごと」の提案が可能。

当社は今後も、より快適さと性能を追求した付加価値の高い住宅を提案していく。成長に向けた取り組みとしては、「住宅展示場及び営業所の新規出展」「営業拠点拡大による受注体制強化」「中古再販事業の成長」「ICTの活用による業務効率化推進で工期短縮」「消費者ニーズにあわせた商品展開」を推進する。

具体的には、ヒノキヤグループの手掛ける「Z空調」、ヤマダホームズが強みに持つ「災害に強い家」、今後の社会課題解決に向けた蓄電池代わりになるEVを中心としたスマートハウスの提案を、多彩なブランド住宅、多彩な価格帯を通じ、ヤマダ会員のアクティブユーザー6000万人、その家族の皆様に提供していく。

「電気屋で住宅が買える」という当社ならではの提案を進め、住建分野をヤマダホールディングスの持続的成長に向けた大きな役割を持つ事業へ成長させていく。

建設業におけるこれからの打つべきポイント

タナベコンサルティング 取締役 竹内 建一郎

タナベコンサルティング 取締役 竹内 建一郎 大手メーカーにて、設計・開発業務を中心とする商品開発に携わり、その後、タナベコンサルティングへ入社。企業再建から成長戦略策定まで、200 社以上のコンサルティングに携わり、企業の成長発展に向け多くの実績を挙げている。経営的視点による中長期ビジョン実現に向けた幅広いコンサルティングを展開。企業再建から、成長戦略策定まで、戦略を現場に落とし込む実践的なコンサルティングで高い評価を得ている。

企業を取り巻く環境変化

2023年度の建設投資額(見込み)は68兆4000億円であり、2000年実績の66兆2000億円を上回る見込みである。ここ数年は同様の水準で推移しているが、内訳を見ると首都圏と地方の格差がかなり拡大している。首都圏では案件数も多く受注単価規模も大きいが、首都圏以外をマーケットとする企業にとっては軽視できる状況ではない。

建設業を取り巻く環境変化については、【図表1】の通りである。

【図表1】企業を取り巻く環境変化

【図表1】企業を取り巻く環境変化

出所:タナベコンサルティング作成

インフレ経済は今後も継続するだろう。特にエネルギー・資源コストの上昇については、地政学上の課題もあり終息は見通しにくく、今後も上昇する前提で想定しておく必要がある。

人手不足については、日本経済全体の課題である。コロナが5類感染症へ移行したこともあり、インバウンドを含め人の動きが戻ってきているため、人手不足の課題が顕在化してきている。

環境対策については、昨今カーボンフリーやESGなどを中心に国際的にも関心が高まっている。

こうした外部環境により、経営面では利益を出しにくい傾向にある。実際、2022年度業績を見ると、受注高の順調な推移もあり、建設業界では大手・準大手・中堅企業とも売上高が前期比5~12%程度増加している。一方、売上総利益については、大手が4.4%増、準大手は2.6%減、中堅は0.4%減を計上しており、粗利益を計上しにくい現状が分かる。

現状を踏まえ、タナベコンサルティングでは来期に向け、「クオリティリーダーシップ戦略」を打ち出している。

クオリティリーダーシップ戦略は、「コストリーダーからクオリティリーダーへの転換」「ブランディング」の2つの骨子からなる。

「コストリーダーからクオリティリーダーへの転換」は、インフレ経済下における必須の戦略である。実現には、自社の固有技術、固有の価値を見極め、磨き上げることが大切になる。ビジネスモデル、バリューチェーン、非財務資本(人材)などにおける価値提供を通じ、コストではなくクオリティでリーダーシップを発揮する戦略をとるべきである。

ただ、いくら良い固有技術や戦略があっても、ブランディングができていないと世の中には浸透しない。そのため、併せて「ブランディング」についても展開する必要がある。

建設業における打つべきポイント

これらを踏まえ、建設業における打つべきポイントをまとめると、事業ポートフォリオ確立(成長ドメイン・重点ドメインへの強化)、バリューチェーンを通じた顧客価値向上、オープンイノベーション、建設サービス事業拡大、ESG・SDGsへのアプローチという5つの事業戦略、そしてそれらを支えるDX、ブランディングという2つの経営戦略に集約される。

【図表2】建設業における打つべきポイント

【図表2】建設業における打つべきポイント

出所:タナベコンサルティング作成

事業ポートフォリオの確立については、「自社がどのドメイン(事業領域)で勝ち切るか」を戦略に落とし込んでいただきたい。その際、(衰退ではなく)成長しているドメイン、さらに、自社が固有技術を持つ重点ドメインを意識した上で展開していただきたい。

バリューチェーンを通じた顧客価値向上とは、「受注・設計・施工・引き渡しというフローのどの部分で自社の価値を発揮するか」である。例えば、施工において他社よりも強みがある場合、そこで顧客価値を発揮して成長戦略を描く、あるいは設計と「設計・施工」をセットにして成長戦略を描くことが考えられる。

オープンイノベーションには、連携、アライアンス、M&Aなどの施策が含まれる。事業推進のためにはどのような戦略が適切か見極め、落とし込んでほしい。

また、8~9兆円規模で安定しているリニューアル・補修マーケットにおいて、いかに自社の建設サービス事業を展開・拡大していくかを検討していただきたい。

ESG・SDGsについては、先述の通り国際的に関心が高まっている。また、社会性の観点からもぜひ推進いただきたい。

さらに、組織・人材についても戦略的に検討しておく必要がある。2060年の生産年齢人口は2020年の40%減であり、建設業の求人・採用は今後ますます厳しくなる。そのため、働き方改革、D&I戦略も踏まえ、事業・経営戦略を支えるための採用戦略・育成戦略(人材イノベーション)を重点課題と捉え、対策していくべきである。

建設業のこれからとビジネスモデルの考え方

タナベコンサルティング 執行役員 ストラテジー&ドメイン 石丸 隆太

タナベコンサルティング 執行役員 ストラテジー&ドメイン 石丸 隆太 金融機関にて10年超の営業経験を経てタナベコンサルティングへ入社。クライアントの成長に向け、将来のマーケットシナリオ変化を踏まえたビジョン・中期経営計画・事業戦略の構築で、「今後の成長の道筋を作る」ことを得意とする。また現場においては「決めた事をやり切る」じりつ(自立・自律)した強い企業並びに社員づくりを推進し、クライアントの成長支援を数多く手掛けてきた。

今後の建設業の見通し

建設業では今後、ロボット技術・AR・VR技術の高度化・遠隔化・省人化・無人化の進展と低廉化が見込まれる。そうなると建設業の在り方も大きく変わり、ロボットとヒトの協働による労働や職種の変化が生じるであろう。特に、技術分野の人材の役割の変化、デジタル技術を扱う職種の拡大が予測される。

また、「ゼブラ建設業」が増加する見通しだ。ゼブラ企業とはサステナビリティや共存性を重視する企業であり、持続的成長や持続可能な社会を目指し、ライバル企業と共存し、経営資源を共有するような価値観を持つ。

【図表1】ゼブラ建設業が増加する

【図表1】ゼブラ建設業が増加する

出所:タナベコンサルティング作成

今後、企業には社会性と経済性の両輪を併せ持つことが求められる。建設業においても、共存・共栄し、一緒に建設業を盛り上げる意識の企業の集合体が生まれると見ている。

さらに、新築の減少に伴い、建設業のビジネスモデルは変革を余儀なくされる。新しく建てるビジネスではなく、リフォームや中古住宅の買い取り再販など、既存の建設へのアプローチが増加していくだろう。

建設業のビジネスモデルの在り方

これらを踏まえた上で、建設業のビジネスモデルがどのように変わっていくのだろうか。ポイントは3つある。

1つ目は、「脱・労働集約型」である。つまり、デジタル化を通じ、労働者を増やさなくても、売り上げが上がるのが未来の建設業のビジネスモデルだ。

2つ目は「官×民連携事業」である。例として「オガールプロジェクト」を紹介したい。岩手県紫波郡紫波町では、かつて雪捨て場だった町有地を、民間企業の力を借りながら「人が集まる町」へ再生。その結果、今では年間約100万人が来訪する町となり、度々メディアでも取り上げられるようになった。地方ゼネコンでは、こうした官民連携、そして他社との連携により、いかに人の集まる町をつくれるかが重要になる。

3つ目は、例えば公園で遊ぶ際は公園の建設が必要であるように、「人・事業の活動には建設が必ず関わる」。そのため、建設業単体ではなく、「建設業×〇〇」という組み合わせで建設ビジネスを再定義し、建設業の視点や強みを生かしながら視野・市場を広げ、より社会性の高い事業へシフトしていく必要がある。

建設業を取り巻く環境が変化する中、ビジネスモデル視点で自社のビジョンを描いてみることである。既存事業の深化と、新規事業の探索を通じた「両利きの経営」でイノベーションを進めるべきである。

【図表2】ビジネスモデル視点で自社のビジョンを描く

【図表2】ビジネスモデル視点で自社のビジョンを描く

出所:タナベコンサルティング作成

既存事業と新規事業を両立させるために、ポートフォリオの考え方、そして資源(投資)配分が重要になる。既存事業と新規事業は一見相反するものだが、自分たちの意志をしっかりと反映させ、10年、20年先を見据えたビジネスモデルを構築していくべきである。