タナベコンサルティング:事業戦略推進と生産性を向上する組織デザインの手法
石丸 隆太
金融機関にて10年超の営業経験を経てタナベコンサルティングへ入社。クライアントの成長に向け、将来のマーケットシナリオ変化を踏まえたビジョン・中期経営計画・事業戦略の構築で、「今後の成長の道筋を作る」ことを得意とする。また現場においては「決めた事をやり切る」じりつ(自立・自律)した強い企業並びに社員づくりを推進し、クライアントの成長支援を数多く手掛けている。
タナベコンサルティング・土井のセッションで話した「組織構造変革」は、経営を改善するための手段の1つである。この手段は、経営の全体像から見るとどう位置付けられるのか、解説していく。
まず、経営の全体像として、タナベコンサルティングが提唱する経営の体系「経営のバックボーンシステム」(【図表】左側の水色部分)を紹介する。「経営理念」が「計画(PLAN)」まで落とし込まれており、そのPDCAを回すために「会議制度」と「業績管理」が行われ、成果が出ると「評価・分配」がある。
土井が話した「生産性を高める4つのアプローチ」をこれに当てはめると、次の通りとなる。
①組織戦略の見直し⇒中期経営計画や事業戦略を推進するために組織を見直す
②業務の見直し⇒中計や事業戦略の推進のため「実行(DO)」「改善(ACTION)」を見直す
③マネジメントの見直し⇒実行・推進のチェック機能である「業績管理」「会議制度」を見直す
④制度の見直し⇒評価や賃金は公平か、キャリアステップは明確かなど「評価・分配」の仕組みを見直す
【図表】経営のバックボーンシステム
出所:タナベコンサルティング作成
ただ、各社とも事業や戦略が異なるので「これが正しい組織戦略」という唯一の正解はない。各社に適した組織構造を探求し、成果を上げていく必要がある。タナベコンサルティングの「組織変革支援コンサルティング」でも、変化する事業戦略に適合した組織行動となっているか、マネジメントは機能しているか、基準となる生産性を有しているかの3つをポイントにクライアント企業の現状を把握し、組織戦略の見直しの端緒としている。
(1)変化する事業戦略に適合した組織構造となっているのか
事業戦略が変化するからこそ、組織戦略を見直す必要がある。そのため、まずは事業戦略の沿革と組織戦略の沿革を比較し、事業戦略に適した組織になっていたかどうかを検証する。
(2)マネジメントは機能しているか
組織の5原則(①1人の管理者が直接管理している人数は適正か、②責任に応じた権限が付与されているか、③命令系統は一元化されているか、④業務が機能別に専門化(分業化)されているか、⑤定型業務は部下が行い、上司は戦略的な意思決定などの非定型業務に専念しているか)を検証する。
(3)基準となる生産性を有しているか
直間比率などの適切な基準を有し、適切な人員配分を行っているかを検証する。
組織を変えるだけで経営課題は解決しない。大切なのは組織を変えることではなく、「組織の中の人々がしっかりと成果を上げていくこと」。組織は働く人の生産性を上げるための手段で在ることを忘れず、自社にとって最適な組織構造を考えていただきたい。