その他 2023.07.12

組織構造変革フォーラム サノヤスホールディングス、AMS合同会社

 

タナベコンサルティング:事業戦略を推進する組織デザイン~賃金を上げ、生産性を高める組織とは~

株式会社タナベコンサルティング
執行役員 ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
土井 大輔
大手システム機器商社を経てタナベコンサルティングに入社。製造・卸・人材派遣・物流・建設業など複数の業種で中長期ビジョンや事業戦略構築の実績を持つ。“何をやるか”と同等に“誰がやるか”を重要視し組織再編や仕組み・ルールの再設計まで一貫した支援を得意とする。“やらない事を決める”を信条として意思決定を大切にしている。また、“物流が世の中を支えている”との想いで物流経営研究会を立ち上げている。

 

 

生産性を高める4つのアプローチ

 

タナベコンサルティングが2022年12月に公表した企業経営者へのアンケート結果によると、「中期経営計画や長期ビジョンを定めているが推進できていない」企業は37.2%に上った。また、未来に取り組むべき経営テーマとして最も多く挙がったのは「戦略的組織再編」(33.8%)だった。

 

つまり、4割弱の企業がビジョン・中計を構築できておらず、3割以上の企業が戦略に合わせて組織を変えられていないということだ。理由は人材不足やノウハウ不足などだが、企業は限られた条件の中で成長しなければならない。

 

厳しい条件の中で成長していくには、生産性の向上が欠かせない。しかし、新しい戦略に基づく新しい役割を既存の組織に割り当てるだけでは、現場の業務にゆがみが生じ、生産性が低下してしまうことも少なくない。そこで本フォーラムでは、事業戦略を推進し、生産性を高めて成果を出す「組織構造変革」の進め方を解説する。

 

組織構造を変革する際のアプローチ方法は4つ(【図表1】)。①制度の見直し、②業務の見直し、③マネジメントの見直し、④組織戦略の見直しである。これらの実行が、事業戦略の推進、バリューチェーンの強化、生産性の向上につながっていく。

 

【図表1】組織構造変革の4つのアプローチ

出所:タナベコンサルティング作成

 

組織構造の変革による生産性アップのポイント

 

(1)組織形態と役割分担のバランスを考える

 

組織の基本形態として、「ファンクション(機能別)組織」「ビジネスユニット(事業部制)組織」「マトリクス組織」がある。また、水平分業の基本パターンとして「フルプロセス分業」「パートプロセス分業」がある。(【図表2】)

 

【図表2】水平分業の基本パターン

出所:タナベコンサルティング作成

 

どの組織形態と分業の仕方が良いかは各社異なるが、分業の仕方は組織の生産性を左右する大きな要素である。そこで、自社に適した「人的構成比目標」(【図表3】)を設定し、フェーズをいくつかに分けて少しずつ組織を変えていくことを勧める。

 

【図表3】人的構成比目標の例

出所:タナベコンサルティング作成

 

(2)間接部門のミドルオフィス化で直接人員比率を上げる

 

1人当たりの付加価値額の目標を決めることも、生産性の向上に役立つ(【図表4】)。

 

【図表4】生産性基準の現状と目標設定

出所:タナベコンサルティング作成

 

ある商社の生産性改善の事例を紹介しよう。この商社では、直接人員比率が87.0%、労働分配率が45.8%だった。同社の社長は「社員の個人年収を500万円にする」ことを目標に掲げ、直接人員比率90.0%、労働分配率45.0%の達成を目指すこととした。つまり、1人当たりに必要な限界利益額は1234万6000円(現状の11.4%アップ)となる。(【図表5】)

 

【図表5】生産性改善の目標設定の例

出所:タナベコンサルティング作成

 

この目標達成のため、同社は直接人員数を増やすだけでなく、間接部門の「ミドルオフィス化」(【図表6】)で直接人員比率を高めた。

 

【図表6】ミドル機能による生産性向上

出所:タナベコンサルティング作成

 

人事部、経理部、総務部、営業事務といった従来の間接部門に「企画」という新しい役割を付加し、直接部門のサポート機能を担ってもらうことが、ミドルオフィス化の成功の秘訣である。そのためには、ミドルオフィスのメンバーがフロント(直接部門)や経営陣の業務と価値のポイントを理解すること、ミドルオフィスメンバーとの情報共有をリアルタイムで行うこと、フロント業務と戦略担当のタスクを分解してミドルオフィスの業務範囲を明確にすることが必要となる。

 

経営者・リーダーの皆さんには、自社の事業戦略推進に最適な組織構造の実現によって、社員一人一人の生産性を高めていただきたい。