その他 2022.11.16

人事戦略フォーラム2022リポート 山形大学 学術研究院 産学連携教授 岩本隆氏、日本オラクル、日立ソリューションズ

 

 

日立ソリューションズ:EX(従業員体験)の向上に舵を切った当社の取り組み

 

 

株式会社日立ソリューションズ
経営戦略統括本部 チーフエバンジェリスト 兼 人事総務本部 本部員
伊藤 直子 氏
1990年津田塾大学卒業。日立中部ソフトウェア(現日立ソリューションズ)に入社。ソフトウェア製品開発、ネットワーク・セキュリティSEを経て、2004年管理職へ。2015年から働き方改革のプロジェクトに入り、自社の改革推進とともに、企業の働き方改革をITで支援する事業に携わっている。

 

 

 

人的資本経営が注目される中、働き方の本質が見直されつつある。人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営の在り方。人的資本の価値を最大限に引き出すために、会社と個人の関係性が変わる(人財マネジメントは「コスト」から「投資」、雇用コミュニティーは終身雇用を前提とした「囲い込み型」から「選び選ばれる関係」へシフト)。

 

当社は、全社運動として2016年から働き方改革を推進(柔軟な働き方、残業削減、コミュニケーション強化など)。2020年以降、感染症対策のため全社員が原則在宅勤務へ移行(全社員のうち出勤週2日以下が88%)。これまでの取り組みにより働きやすさは大きく前進した。次に力を入れるべきは「働きがい」と「成長実感」(2022年からEX向上を推進)。

 

EX向上に向け、個の自律・主体的なチャレンジを促す施策を強化している。さまざまな仕事・従業員体験を通じて、多様な一人一人が成長や働きがいの実感を高めることを目指す。(人財と職務の可視化によるキャリア形成、若年層向けジョブ・マッチング制度、新常態の働き方&多様な働き場所の提供など)

 

2022年度の重点方針は、①ジョブ型人財マネジメント施策の推進、②新常態に向けた働き方の見直し、環境整備。①の具体的施策はジョブ定義の整備、社内公募・異動の推進、1on1の定着と質の向上、②の具体的施策はオフィスの整備、「働き方グランドルール」の整備など。(各施策により、どのようにEXが向上するか検討の上で方針策定・実行)

 

2022年10月から、管理職にジョブ型人財マネジメントを導入。ジョブ型の場合、職務を基準に人を採用し、職務に人を割り当てる(仕事基軸)。メンバーシップ型に比べ、自律とプロ意識が求められる。組織マネジャーだけでなく、専門職としてのジョブも定義している。

 

自律的なキャリア形成に向け、手上げ異動・ローテーションの活性化、適正な評価・キャリア支援、専門職人財に向けた処遇の複線化などを実施。こうした制度もEX向上の視点で構築・推進している。

 

2021年以降、タウンホールミーティングを強化。社長や役員との直接対話で会社の理念や方針を理解し、エンゲージメントを高めるのが目的。オープンな対話で、納得感や共感、モチベーション向上につながる。

 

研修受講・自己啓発の支援も行っている(キャリア形成支援で社員の成長機会を提供)。社員のチャレンジ意思による研修受講・自己啓発で自己の成長実感を高め、人との交流機会を増やすことが可能。グローバルシフト、外部環境変化への対応、多様性の獲得、社外との交流、会社業務に関する専門知識の向上など、自己啓発意欲のある社員を応援している。

 

このほか、効果的な1on1による安心と意欲の創出を推奨。1on1は部下と上長が1対1で定期的に行う対話であり、主役は部下、上長は「壁打ちの壁」の役割。自発的な上長とのコミュニケーションで信頼関係を深め、心理的安全性および仕事への意欲を高めている。

 

また、テレワークで課題となっている「コミュニケーション」をさまざまな施策で活性化。コミュニケーションのきっかけづくりと、褒める風土醸成の仕組みを導入している(コミュニケーションのきっかけを提供し、テレワーク環境での不安を解消。社員同士のつながりを創出)。

 

従業員エンゲージメントを上げるためにはジョブ・クラフティング(従業員が主体的に働き方を見直し、仕事を生き生きとしたやりがいのあるものに変えていく手法)が有効。やりがいを持って働けるように、その人自身が働き方を工夫する(仕事のやり方、周りの人、考え方への工夫)。日々の業務で感じている「悩み」「困りごと」「もやもや」などを洗い出し、自ら1カ月間の工夫の実行計画を作成して実践することで、より良い働き方を習慣づける。さらに、ジョブ・クラフティングの実践を支援するサービスを開発。取り組むハードルを下げる(アクティビティーの準備)、取り組む意欲の喚起(活用事例のシェア)などにより、活用してもらう工夫を施している。

 

その他、オフィス環境の見直し、仮想オフィスの提供など、新常態に向けた環境を整備している(ハイブリッド環境でのコミュニケーション活性化)。