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コラム
イベント開催リポート
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コラム 2022.09.22

物流フォーラム(ゲスト:フジトランスポート、日立物流)

   
ビジョンを描き、サステナブルなロジスティクスを目指す 働き手不足や業務の自動化に関する課題、「働き方改革関連法」の適用に伴う2024年問題など、物流業界は激しい変化にさらされている。これらの課題解決に取り組む物流企業や物流部門を持つ製造・卸売・小売企業に向け、タナベコンサルティングは2022年8月22日、「物流フォーラム」を開催。特別ゲストによる講演と、タナベ経営のコンサルタントによる講演をリアルタイムで配信した。
※登壇者の所属・役職などは開催当時のものです。  

フジトランスポート株式会社

 

コロナ禍でも成長する運送会社~M&Aで全国ネットワークを構築~

フジトランスポート株式会社 代表取締役 松岡 弘晃 氏 1969年奈良県生まれ。奈良三菱ふそう自動車販売(株)で営業や整備に携わったのち、2001年に富士運輸(株)代表取締役に就任。大型トラックによる長距離輸送を強みとした事業展開と、ITの積極導入で全国に拠点ネットワークを拡大する。2013年にMBAを取得。趣味はスキューバダイビング。
 
 

買収企業の価値を見極め、自社の競争力を高める

 

大型トラックによる都市間の幹線輸送を専門に手掛けるフジトランスポート。2022年のグループ年商は前年比72億円増の485億円と、コロナ禍でも持続的に成長を続けている。成長の鍵となったのは積極的なM&A戦略だ。

 

M&Aの案件が来た際には、資料をうのみにせず、次の6点を判断基準にしている。 ①フジグループとのシナジー効果があるか ②管理者やドライバーなどに問題を起こしそうな従業員がいないか ③主要取引先の信用調査 ④代表者の人間性や世間の評判 ⑤トラック・事務所・倉庫・トイレなど設備のチェック ⑥債務超過でも内容によってはM&Aを決断

 

現場で働く社員を大切にするM&Aを実践

 

また、これまでM&Aを成功してきた秘訣は次の6点がポイントである。 ①グループインした企業の社長に就任し、問題を解決 ②従業員全員との個人面談で意見を聞く ③自社の配車システム(MALL)を導入し、グループと連携 ④トラックにGPSを搭載し、動態管理 ⑤従業員とLINE友達になる ⑥トラック・設備・備品など、必要な投資は積極的に行う

 

コロナ禍以前は77拠点だったが、M&Aによって116拠点(2022年7月)にまで増えた。また、全国に拠点ができ、ドライバーの長時間労働削減や、取引先が増えるなど、自社の可能性を広げることができた。

         

株式会社日立物流

 

輸送事業の課題解決に向けて~DXによる事故リスク低減と輸配送業務効率化の取り組み~

株式会社日立物流 営業統括本部 輸送事業強化PJ SSCV強化グループ長 南雲 秀明 氏 1986年日立物流入社。2012年に京浜営業部部長に就任し、情報・通信ソリューションサービスを立ち上げる。2019年にデジタルビジネス開発部部長に就任、翌年より現職に従事。輸送デジタルプラットフォームの開発・導入を統括し、先進のデジタルテクノロジーによる輸送業界の課題解決に尽力している。
 

ドライバー不足や脱炭素、「働き方改革関連法」の適用に伴う2024年問題など、課題が山積する物流業界。業界が抱える課題を解決し、持続可能な物流を実現するため、日立物流では「安全」「効率化」「車両管理」を切り口に、輸送のDXを推進するソリューションを提供している。そのうち、安全と効率化に関するソリューションについて今回はご紹介したい。

 

事故未然防止への取り組み

 

事業用貨物自動車の交通事故発生要因の60%は、居眠り・脇見運転ではなく、集中力や注意力が低下した状態で運転をする「漫然運転」であると言われている。漫然運転になり得る体調の変化は、ドライバー本人にも自覚がないため、教育や事前の注意ができない。そこで、最新のテクノロジーを活用してドライバーの健康と安全を見守り、事故リスクを予測するソリューション「SSCV-Safety」を開発した。

 

SSCV-Safetyは、ドライバーが業務前に行うバイタル測定の結果を基に事故リスクを予測し、また、ドライバーの危険運転・危険状態を検知してドライバーへ注意喚起したり、管理者にメールで通知したりする。導入の効果として、法令違反減少によるドライバーの安全意識の高まりや教育の質の向上、エコドライブによる温室効果ガス排出の削減が期待できる。

     

コンプライアンス強化への取り組み

 

運行管理・ドライバー労務管理が熟練担当者の属人的な業務になっていること、事務作業がアナログ処理のため非効率的であること、それに伴いコンプライアンス強化が進まないことなど、物流業界はバックオフィスにも課題がある。そこで、案件の獲得から配車、運行指示書発行、請求までを1つのウェブシステムで行える「SSCV-Smart」を開発した。

 

SSCV-Smartを導入した企業では、帳票作成や各種連絡などの業務工数が減り、ペーパレス化が進んだ。また、見積書や注文書などの帳票の発行漏れ・受領漏れの防止につながるなどの効果があり、コンプライアンスを強化できた。

 

今後も輸送事業者が抱える課題を解決して事業の成長を支えることで、社会インフラとしての物流の発展に寄与したい。

株式会社タナベコンサルティング

 

選ばれる物流会社になるためのサステナブルモデル

株式会社タナベコンサルティング ストラテジー&ドメインコンサルティング大阪本部 本部長代理 物流経営研究会リーダー 土井 大輔 大手システム機器商社を経て、タナベ経営(現タナベコンサルティング)に入社。2016年より物流経営研究会リーダー就任。「物流が世の中を支えている」という思いで物流経営研究会を立ち上げ、物流業のサステナブルモデルを開発。「荷主側の経営課題」を把握した上での物流会社の事業戦略構築を得意とする。また、製造・卸売・小売・サービス・建設業の経営支援も数多く手掛け、熱意あふれるクライアントファーストのコンサルティングで多くのファンを持つ。
 
 

物流業界の課題と方向性

 

物流業界の主な課題は、労働力不足(有効求人倍率の高さ・平均年収の低さ)、低い生産性(自動化の遅れ・労働時間の多さ・積載効率の低さ・無償附帯料金の不明確さ)、単独改善の限界(荷待ち時間・附帯作業の多さ)だ。

  業界の課題解決に向けた物流業の方向性としては、次の3つが挙げられる。。 ①付加価値業務へ資源配分 ②不足機能の強化 ③選ばれる理由の明確化  

荷主側の方向性は、次の3つである。 ①サプライチェーンの最適化につながるロジスティクス戦略の構築 ②全社戦略としての位置付け ③業務の標準化・統一化

 

業界の課題を解決するためには、荷主側と物流会社がそれぞれの方向性を擦り合わせ、連携する必要がある。

 

国内物流会社のサステナブルビジネスモデル

 

全国の物流会社、約900社の損益を分析したところ、高収益企業は次の4つのビジネスモデルに分類された。

 

①物流+αモデル

コンセプトは「物流“が”繋がるサービスを提供する」である。

サプライチェーンの前工程や後工程に当たる他プレーヤー業務を物流会社が提供するモデル

②サービス特化モデル

コンセプトは「集中特化による効率化」である。

特定のサービスもしくはエリアに特化して効率を高めているモデル

③ドメイン特化モデル

コンセプトは「荷主・業界や特定荷種に特化して対してワンストップで対応する」である。

調達・生産・販売・回収物流の4区分×物流6大機能においてノウハウを発揮するモデル

④本業拡大モデル

コンセプトは「自社の費用科目を活用して外部収益を得る」である。

物流会社が自社用のWMSを開発し外販するなど、自社で活用しているモノを外販するモデル

 

既存事業を核としながら、これらのビジネスモデルを構築し収益構造・組織構造転換するために、今後の10年を見据えたロードマップを策定しましょう。

       

株式会社タナベコンサルティング

 

人が集まる物流会社のビジョン構築

株式会社タナベコンサルティング 株式会社タナベコンサルティング 北陸支社 支社長 物流経営研究会サブリーダー 番匠 茂 長年にわたる営業部門での経験を生かし、各企業の経営コンサルティング、幹部人材の育成などで活躍中。トップ・幹部と一体になった実践的な取り組みにより、クライアントへの熱い思いをベースに進化を実現。数多くの成長企業を支えている。2021年より現職。
 
 

中期ビジョン策定の意義

 

時間外労働時間の上限規制で生じる2024年問題を前に、人が集まる物流会社になるためには、「自社の在るべき姿」を描き、そこから逆算してプロセスを明確化するバックキャスティングで中期ビジョン・中期経営計画を策定するべきだ。時間外労働時間の上限規制で生じる2024年問題を前に、人が集まる物流会社になるためには、「自社の在るべき姿」を描き、そこから逆算してプロセスを明確化するバックキャスティングで中期ビジョン・中期経営計画を策定するべきだ。

 

中期ビジョン・中期経営計画の意義として、次の4つが挙げられる。 ・価値観の違う社員を、目的共有の同志・パートナーとしてつなぐ ・レールを敷くから脱線が分かる ・全社員の道しるべ=未来先行経営 ・会社の思いを実現する共通ツール(目的・目標)

 

中期ビジョン・中期経営計画を策定するとともに、ビジネスモデルを見直すと良いだろう。収益力は事業構造で決まるため、「誰に」(顧客・業種・分野)、「何を」(商品・サービス)、「どのように」(販売方法・チャネル、製造・購買方法、提供方法など)といった観点で、自社の強みを明確化する。

 

戦略は「自社の強み」からしか出てこない。ビジョンを打ち出し、顧客・社員・社会に広く周知し、共感・共鳴を集め、より優秀な人材・顧客から支持される会社になっていただきたい。