タナベ経営:10年先を見据えたグループ経営の在り方
コーポレートファイナンス大阪本部長
福元 章士
2007年タナベ経営入社。2021年度より現職。収益・財務戦略構築を専門分野として、建設、住宅、製造、小売業など幅広い業界でコンサルティングを実施。企業再生、組織再編、事業承継などのターンアラウンド支援も数多く手掛けてきた。「1社でも多く企業の成長を誠心誠意サポートする」をモットーに、さまざまな経営課題を解決に導く経営者のパートナーとして高い信頼を得ている。
1.今、なぜホールディングス・グループ経営が重視されているのか
①経営環境の激変・マーケットニーズの多様化・意思決定できない官僚型組織による中央集権体制(ワンマン経営)の限界、②中堅・中小企業の事業承継期、③M&Aマーケットの活性化、④各種法改正
→事業ポートフォリオと経営システムの刷新が不可欠。ホールディングス・グループ経営によるマーケット直結の変化対応体制づくりが求められる。持続的成長のためにはミッションを軸に、ソリューション(事業や事業会社)の数を増やす必要がある。
2.ホールディングス・グループ経営とは
ホールディング経営とは、「存続の技術」と「成長の技術」を兼ね備えた経営スタイル。「企業の持続性(存続の技術)」とは、継続した経営者育成を可能とし、常に次世代経営体制を確立できる経営スタイル。一方、「企業の成長性(成長の技術)」とは、フレキシブルな戦略判断(M&A)や、新たな成長エンジンの創造を可能とする経営スタイル。
→10年先を見据えた企業の「持続的成長」を実現する経営スタイル
ホールディングス・グループ経営における原理原則
ホールディングス・グループ経営の組織、財務・収益モデル
「組織モデル」とは、一貫したグループ経営理念・方針の下に、スピード経営が実現する“不易流行”体制。また「財務・収益モデル」とは、ファイナンスとオペレーションが分離したシンプルかつオープンな財務構造。
3.ホールディングス・グループ経営の課題
中堅・中小企業のグループ経営では、グループとしての経営方針や戦略が不在のままグループ経営が行われているケースが多く見られる。背景として、その時々の判断で分社化やM&Aを進めた結果、子会社数が増加する一方、その管理が難しくなっていると考えられる。
日本の多角化企業においては、各事業会社の権限・影響力が強く、各事業会社の「部分最適」が優先される傾向がある。グループ本社(ホールディングカンパニー)において、グループ全体の司令塔として各事業会社に「横串」を通し、経営資源の最適配分や事業評価などの実効的な経営管理のための共通プラットフォーム機能が十分に発揮されていないという組織構造上の課題もある。
グループ経営のスタイルの選択についても、グループとしての基本的な方向性と、実際の取り組みに整合性のない場合が多く、「自律分権」を掲げながらも、実際には「放任」に陥っているケースが多く見られる。
4.ホールディングス・グループ経営における原理原則
グループ経営とは、複数の企業(事業)がグループとして活動することにより競争力を高める経営スタイル。分社化やM&Aでグループ会社(事業会社)数を増やすだけではグループ経営とは言えない。
資本的なつながりだけでなく、本当の意味でのグループ経営を実践するには、グループ会社をコントロールするための経営システム導入が必要。特に、海外子会社を有している企業や上場企業レベルの体制構築を目指す企業には不可欠。
5.ホールディングス・グループ経営の5つの機能と判断基準
【図表】ホールディングス・グループ経営の5つの機能
ホールディングス・グループ経営の判断基準は、「何を目的にホールディングス化するのか」とひも付く。一般に、事業承継対策、グループシナジーの発揮、キャッシュアウトが発生しない、経営の効率化などの切り口がある。