事業・組織・財務のバランスをとる経営システム
※登壇者の所属・役職などは開催当時のものです。
ヤマチユナイテッド:「THE 100 VISION」達成のグループ経営手法
1.会社概要
・山地氏が28歳のとき、札幌で社員30名の事業を承継(現在設立65期目)。1996年ホールディング経営スタート。連邦経営に進化する。
・累計120以上の新規事業を起業、現在50事業を運営。起業、リストラ、大口不良債権、社員クーデターなどを経験。全員経営、ホールディング経営、多角化、理念整備により数々の環境変化を切り抜けてきた。
2.理念・ビジョンがグループ経営成功の要
・理想的な会社とは「売り上げ、利益、内容において成長し続ける」「十分な収益と、強い財務内容」「ブランド力があり自分、社員、家族が誇りを持つ」「社員がやりがい、生きがいを感じ輝いている」など。実現する方法は、「事業を多角化し、ホールディング会社中心に連邦グループ経営を行う。連邦本部をつくり、理念で会社をコントロールする」「社員参加型のシステム経営を行う」の2つ。
・「理念経営」で一貫性を持たせるためには、①グループ全体の理念をつくり浸透させる、②各事業・子会社ごとにミッション・ビジョンを作成する(グループ理念との一貫性)ことが必要。 →全社員が会社を代表するような判断と自律的行動をするには、理念の整理・浸透が大事
・理念経営による業績アップ事例として、グループ会社のジョンソンホームズの取り組みがある。リーマン・ショック時、経営不振で赤字に陥ったが、企業理念を整備したところ会社が生まれ変わり、業績が向上。今では札幌トップのハウスメーカーに成長。
3.グループ経営成功のための「システム経営」
①社長、幹部中心のトップダウンとボトムアップのミックス経営、②システム経営は仕組みにより合理的、自主的に経営される、③全社員が経営感覚を持ち、経営に一部参加する仕組み、④自主計画→自主管理→自主評価→自主分配、⑤採用に全社で取り組むため、良い人材が入社する、⑥幹部人材が急激に育つ仕組みと社員教育、⑦社長は重要決裁と情報収集のみ→新規事業開発や自己実現、自由な時間をつくる
4.人材の宝庫になった「採用と教育手法」
新卒採用成功企業になるために、①積極的に打って出る攻めの新卒採用、②学生目線の会社を研究し近づける、③楽しく、風通しのよい社風にする、④ブランディングしワクワクするビジョンを伝える、⑤多角化を企業の魅力にする→職種別採用、などを実施 →採用ファースト戦略で就職人気企業に
社長育成・幹部養成のために、①責任あるポストが多いと幹部が育つ、②幹部は経営会議で育つ、③新人教育と幹部教育のサンドイッチ作戦(中堅社員が自然に育つ)、④新人は社長自ら関わる、⑤理念やビジョンと一貫性ある目標設定、⑥情報共有の機会、褒められる機会、会議で発言する機会、損益感覚や具体的な数字による管理の機会を与える、⑦成長にフォーカスした個人面談を実施
セレンディップ・ホールディングス:「経営の近代化」を実現するホールディングス経営
1.会社概要
・製造業に特化した事業投資会社として、「事業承継」と「地方創生」を積極的に推進。具体的には事業承継プラットフォーム構築、中小企業の経営近代化、M&Aによる業界再編を手掛ける。パーパスは「100年企業の創造 日本の中堅・中小製造業に経営革新をもたらし、中小企業の未来を創る」。
・経営者の高齢化、事業承継という社会課題を起点に事業を構想し、ビジネスモデルを確立させ、2021年6月東証マザーズに上場。
2.M&Aにおけるリアリティ
・企業成長には、①オーガニックグロース(自助努力による成長)、②レバレッジグロース(外部資源活用による成長)の2種がある。②にはIPO、M&Aなどの手段がある。
・日本の中小企業はM&Aへのマイナスイメージが強く、心理的阻害要因になっている。欧米では経営と所有の分離が一般的だが日本は分離されていない。M&Aにまつわるトラブルとして、業績、新経営体制と成長戦略、取引先や従業員の理解、創業の精神・企業文化、準備不足、などがある。
・M&Aにおけるリスクとして、①十分なデューデリジェンス※ができていない(グループ全体での明確な成長戦略が描けていない)、②のれんの減損リスク、③資金調達・M&Aファイナンス、④ガバナンス・コンプライアンス・法務問題、⑤偶発債務・追加投資の必要性、⑥チェンジオブコントロール(有能な人材の離反、顧客・取引先の離反)などがある。
※M&Aのための買収価格を決定する際、買収者が買収対象企業の財務などに関する情報を入手し、その情報が真実かどうかを調査すること
3.プラットフォーム型ホールディングスの構築方法
・ホールディング経営は異なる複数の事業体を経営していく上で、最も合理的な経営手法だが、運営の難易度は高い。
・導入ステップは、①異なる業界慣習、異なる歴史、異なる企業文化・価値観を1つの目標や考えでまとめる、②ホールディング会社と事業会社の役割の違いを明確化する、③共通プロセスで組織を共有化する、④標準化と独自化、となる。
・セレンディップの「モノづくり事業承継プラットフォーム」は、事業承継に必要な全てのソリューションをワンストップで提供する。特に製造業のバックオフィスは最も業務革新が進んでいないため、新たに買収した企業に対し、業務支援サービスを提供。標準化したオペレーションにより、高い品質と生産性を実現する。
4.買収した企業の統合
・M&Aアプローチは、①デューデリジェンス、②統合プラン、③PMI(M&A後の統合プロセス)、④シナジーの実現、の順となる。攻めのPMIとして、キャッシュフローの最大化を行う(売り上げの拡大、オペレーションコスト低減、運転資本の提言、設備投資の回収)。守りのPMIとして、リスク最小化を行う(コア社員のつなぎ止め、GRC※の構築、内部統制の導入、事業計画の蓋然性)。
※ガバナンス、リスク管理、コンプライアンス
・M&Aの一番の難所は、従業員の抵抗(人は変化を恐れるのではなく、喪失感を怖がる)。人間関係、自分の領域、ストラクチャー、将来、意義、コントロールなどが喪失しないと示すことが大切。
タナベ経営:10年先を見据えたグループ経営の在り方
1.今、なぜホールディングス・グループ経営が重視されているのか
①経営環境の激変・マーケットニーズの多様化・意思決定できない官僚型組織による中央集権体制(ワンマン経営)の限界、②中堅・中小企業の事業承継期、③M&Aマーケットの活性化、④各種法改正 →事業ポートフォリオと経営システムの刷新が不可欠。ホールディングス・グループ経営によるマーケット直結の変化対応体制づくりが求められる。持続的成長のためにはミッションを軸に、ソリューション(事業や事業会社)の数を増やす必要がある。
2.ホールディングス・グループ経営とは
ホールディング経営とは、「存続の技術」と「成長の技術」を兼ね備えた経営スタイル。「企業の持続性(存続の技術)」とは、継続した経営者育成を可能とし、常に次世代経営体制を確立できる経営スタイル。一方、「企業の成長性(成長の技術)」とは、フレキシブルな戦略判断(M&A)や、新たな成長エンジンの創造を可能とする経営スタイル。 →10年先を見据えた企業の「持続的成長」を実現する経営スタイル
ホールディングス・グループ経営における原理原則
ホールディングス・グループ経営の組織、財務・収益モデル
「組織モデル」とは、一貫したグループ経営理念・方針の下に、スピード経営が実現する“不易流行”体制。また「財務・収益モデル」とは、ファイナンスとオペレーションが分離したシンプルかつオープンな財務構造。
3.ホールディングス・グループ経営の課題
中堅・中小企業のグループ経営では、グループとしての経営方針や戦略が不在のままグループ経営が行われているケースが多く見られる。背景として、その時々の判断で分社化やM&Aを進めた結果、子会社数が増加する一方、その管理が難しくなっていると考えられる。
日本の多角化企業においては、各事業会社の権限・影響力が強く、各事業会社の「部分最適」が優先される傾向がある。グループ本社(ホールディングカンパニー)において、グループ全体の司令塔として各事業会社に「横串」を通し、経営資源の最適配分や事業評価などの実効的な経営管理のための共通プラットフォーム機能が十分に発揮されていないという組織構造上の課題もある。
グループ経営のスタイルの選択についても、グループとしての基本的な方向性と、実際の取り組みに整合性のない場合が多く、「自律分権」を掲げながらも、実際には「放任」に陥っているケースが多く見られる。
4.ホールディングス・グループ経営における原理原則
グループ経営とは、複数の企業(事業)がグループとして活動することにより競争力を高める経営スタイル。分社化やM&Aでグループ会社(事業会社)数を増やすだけではグループ経営とは言えない。
資本的なつながりだけでなく、本当の意味でのグループ経営を実践するには、グループ会社をコントロールするための経営システム導入が必要。特に、海外子会社を有している企業や上場企業レベルの体制構築を目指す企業には不可欠。
5.ホールディングス・グループ経営の5つの機能と判断基準
【図表】ホールディングス・グループ経営の5つの機能
ホールディングス・グループ経営の判断基準は、「何を目的にホールディングス化するのか」とひも付く。一般に、事業承継対策、グループシナジーの発揮、キャッシュアウトが発生しない、経営の効率化などの切り口がある。
タナベ経営:事業を生み出し、経営者を育む、プラットフォーム型ホールディングス
・ホールディング経営モデルの全体像として、成熟経済化でも持続的に成長する「事業ポートフォリオ戦略」、企業成長と円滑な資本承継を両立させる「グループ資本承継戦略」、経営者人材を継続して輩出する「権限移譲システム」、グループ資金の調達・運用を最適化する「ストック・フローの分離モデル」の4つの側面がある(マルチ・パーパスを同時並行で達成する)
・ホールディングス化はあくまで手段であり、その先に何を目指すのかを明確にすべき。ホールディングス化のビジョンは多様化してきている。
・グループ規模が拡大するにつれ、本社機能を強化する必要性が生じる。各事業の強い推進力によりグループが成長・進化する。本社は各事業を強い求心力で束ねる。セグメンテーションの拡大、バリューチェーンの最大化という二軸の遠心力で拡大。⇒推進力を得ることで、求心力と遠心力がバランスする
・人事制度もグループ目線に進化させる必要がある。標準キャリアとしては、原則として各社が直接雇用して各事業領域で専門性とリーダーシップを磨く。ステップアップを目指す人材にはいつでもグループキャリアにチャレンジできる制度を備えておく。
・グループキャリアとしては、グループ総合職として、①将来の事業会社経営者またはホールディング会社の幹部としてグループ全体で活躍する人材、②全事業会社への機動的な異動・全国への転勤が可能な人材を育成。ホールディング会社で雇用し、賃金はグループで一番高い水準に設定する。グループ経営職としては、事業会社の経営者・経営幹部またはホールディング会社の経営幹部として活躍する人材を育成。 →経営者人材を育む。“誰もが乗れる”速いエスカレーターをつくるイメージ
・ホールディング経営には政府も注目。ホールディングス化を通じて新しい価値を生み出し、スケールアップさせる事例も多数。企業主導の業界再編で競争力を再構築する時代となっている。
タナベ経営:企業価値向上とサステナビリティを実現するポイント
1.企業価値向上の概念
・企業価値には経済的価値と社会的価値があり、両方を高めることが必要。
・企業価値を高める上で、株主価値、顧客価値、従業員価値、社会的価値、パートナー価値をいかに最大化するか、価値毀損要因(コンプライアンス違反など)をいかに排除するかを経営課題として検討することが大切。
・企業価値向上には、経営システムの各機能強化が必須。
・ミッション、ビジョン、バリューという理念体系を軸に、ガバナンス機能、マネジメント機能、経営企画機能、コーポレート機能をしっかりと強化することが、経営テーマへの組織での対応につながる。
・グループ経営システムを構築するに当たり、「経営システム段階別チェック項目」なども活用すべき。タナベ経営ではホールディング経営コンサルティング、グループ経営システム構築コンサルティング、ホールディングス・グループ経営モデル研究会を展開しているので、適宜活用していただきたい。