Session3 SDGsメビウスモデルで「間仕切り」を通じた社会課題の解決へ
1.コマニーの「SDGsメビウスモデル」
コマニーは1961年にキャビネットメーカーとして創業。業界のリーディングカンパニーとして成長を続けていたが、2008年のリーマン・ショックの影響で赤字に転落。これをきっかけに経営理念に立ち返り、自分たちの事業や会社がどうあるべきなのかを考え直した。
そして、人々の幸せの創造を支える事業開発や投資を継続的に行えるようにしたいとの思いから、2016年に「サステナビリティ方針」を制定。さらに、この考え方がSDGsと通じることに気付き、SDGsの17ゴールを指針にしたサステナビリティのための行動計画を策定。SDGsの9番目「産業と技術革新の基盤をつくろう」をレバレッジポイント(テコの力点)に置いた「コマニーSDGs ∞(メビウス)モデル」を2018年9月に制定した。
(1)ガバナンス
①従業員の人間性尊重の経営
安全・安心な職場環境の構築、従業員教育やダイバーシティー&インクルージョンの推進など
安全・安心な職場環境の構築、従業員教育やダイバーシティー&インクルージョンの推進など
②サプライヤー(取引先)との共存協栄
技術交流会による相互学習、取引先満足度調査の実施、公正な取引のためのCSR調達促進、安定供給のためのBCM(事業継続マネジメント)など
技術交流会による相互学習、取引先満足度調査の実施、公正な取引のためのCSR調達促進、安定供給のためのBCM(事業継続マネジメント)など
③地球環境との共存
SBT※目標設定によるCO2削減、太陽光発電システムの導入、エコ商品の拡大、脱プラスチック活動など
SBT※目標設定によるCO2削減、太陽光発電システムの導入、エコ商品の拡大、脱プラスチック活動など
※SBT(Science Based Targets)イニシアチブ:産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑えるための、科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標達成の推進を目的として、CDP(旧名:カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)、国連グローバル・コンパクト、WRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)の4団体が2015年に共同で設立した国際的なイニシアチブ
④地域社会への貢献活動
石川県小松市とののSDGsパートナー協定、災害ボランティア活動、カンボジアの村の自立支援など
石川県小松市とののSDGsパートナー協定、災害ボランティア活動、カンボジアの村の自立支援など
(2)プロダクト・サービス(開発事例)
①震度7相当に耐える高耐震の間仕切り「Synchron(シンクロン)」
②避難所で安心・安全・きれいに過ごすための、工具なしで組み立てられるブース「Mamoroom(マモルーム)」
③抗菌・抗ウイルス・アレルゲン物質の分解などの効果があるコーティング事業「Health Bright Evolution®」
2.インナーブランディング(社内PR)の施策、社員の意識変化
①社内で「コマニーSDGs新聞」を不定期発行(ニュースとして社内の取り組みを発信)
②全社員参加で「SDGs記念イベント」を開催(記念グッズを配るなど楽しい雰囲気を醸成)
③SDGs5周年記念オンラインイベント「SDGs WEEK」を開催(社員が講師としてチームの取り組みを紹介するなど)
⇒活動で浸透させていくことで、社員がSDGsを「自分事化」。自部門の改善に自主的に取り組み始めた(プラごみの削減など)
3.SDGsに取り組んだ効果
①新たなビジネスへの挑戦機会を得た
②選択と集中の明確化(やめる事業を決めた)
③事業活動の高次化
④ブランディングとしての役割(→新卒採用に好影響、「大学生就職人気企業ランキング(北陸部門)」で2位など)/国連グローバル・コンパクト「日中韓ラウンドテーブル」の招待を受けて発表、SDGsビジネス賞や各種アワードなどを受賞)
⑤パートナーシップの可能性の拡大(有名女性誌の編集長から「避難所に設置する個別ブースのニーズがある。自誌は女性の声を聞くネットワークを持っているから協業しよう」と声がかかり、新製品開発につながったなど)
コマニー株式会社 取締役 常務執行役員 経営企画開発統括本部 本部長
塚本 直之氏
1981年石川県生まれ。成蹊大学経済学部経営学科卒。スタンレー電気(株)、トヨタ自動車(株)出向を経て、2010年コマニー(株)へ戻る。現在は、コマニーが目指す「関わるすべての人の幸福に貢献する経営」を実現するため、同社の経営にSDGsを実装したサステナビリティ経営を推進。2018年には、広島SDGsビジネスコンテスト 優秀賞、SDGsビジネスアワード グローバルイノベーター賞を受賞。
Session4 SDGsを経営統合する具体策
1.SDGs経営実現の3つのポイント
SDGs経営とは「事業を通じて社会に貢献すること」。SDGs経営の3つのポイントは次の通り。
①トップのリーダーシップのもと全社員がSDGsの意義を理解し取り組む
②ドメイン(事業領域)の再定義で事業を進化させる
③社会のサステナビリティと企業のサステナビリティの両立に取り組む
2.SDGsにはこのように取り組む!SDGs推進ステップ
3.SDGsで中期ビジョンをブラッシュアップしよう
中長期ビジョンとSDGsの共通キーワードは「2030年」。SDGsのフィルターを通した中期ビジョンにアップデートし、本業で社会課題を解決するビジネスモデルを構築しよう。
株式会社タナベ経営 ストラテジー&ドメイン大阪本部 本部長代理 SDGsビジネスモデル研究会 リーダー
巻野 隆宏
2007年タナベ経営入社。2021年より、ストラテジー&ドメインコンサルティング大阪本部本部長代理兼SDGsビジネスモデル研究会リーダーに就任。専門分野は事業戦略の立案をはじめ開発・マーケティングなど多岐にわたる。企業の持続的な変化と成長のサポートに取り組み、志ある企業・経営者のパートナーとして活躍中。「高い生産性と存在価値の構築」を信条とし、明快なロジックと実践的なコンサルティングを展開。建設業、製造業を中心に中長期ビジョン構築において事業の選択と集中で高収益ビジネスモデルへの変革を数多く手掛けてきた。