vol.9 働く価値観の変化にマッチしたHR戦略のアップデート
コロナショックは働き方を大きく変化させました。テレワークを代表する「働く場所」の変化、生産ラインの配置の見直しといった「働く組織」の変化、裁量を持って時間から成果で判断される価値観にシフトした「働く時間」の変化などが挙げられます。各社が自社のビジネスモデルと向き合い、ニューノーマル時代における多様化する働き方の制度設計が必要です。まず、働く場所の変化については、次の4つのパターンが考えられます。
◎在宅勤務(原則在宅勤務)
基本は在宅で業務を完結させるが、必要に応じて出社する。
◎在宅勤務(部分的在宅勤務)
週1回の在宅勤務など、可能なタイミングで在宅ワークを取り入れる。
◎サテライトオフィス
自社の出先機関として小規模オフィスを設置し、移動時間を削減する。
◎モバイルワーク
外部のワーキングスペースやカフェなど、場所を定めず自由に選択する。
このような働き方の変化は、社員個人に大きな影響を及ぼしています。
①コミュニケーション不足
テレワーク導入によって、意図的にコミュニケーションを取る必要性が生じています。日本人が得意としてきた「暗黙知」が通用しなくなるのです。そのため、定期的なコミュニケーション機会の設定と、ITシステムを活用したコミュニケーション方法の開発が必要となります。
②メンタル不調
通勤のストレスや、対面によるストレスなど軽減される面がある一方で、長期的なテレワークによってメンタル不調につながる事例が出始めています。要因としては、家庭と職場のめりはりがなくなる、働く方法の変化(慣れないPC対応など)、コミュニケーション不足、評価の不透明感、将来に対する不安などさまざまな要因が挙げられます。
上記に示したコミュニケーション機会を設けるとともに、本人がメンタルの状況を把握して改善が見られない場合には通院させる必要があります。そのため、メンタルヘルスを含めたセルフマネジメントができるように、社内で研修を実施したり、メンタルヘルスガイドラインなどを設けたりなど、予防につなげる仕組みによって解消していく必要があるでしょう。
③業務量やスケジュール調整が困難
自立した働き方が求められる環境において、社歴の浅い人材や自立しきれていない新入社員は戸惑うばかりです。自分がすべきことが見えず、業務量・スピード感に追い付けずにいるケースも少なくありません。そのため、まめな業務進捗報告とアウトプットの確認によって指導・調整をしていく必要があります。
④リモートラーニング
人材ポートフォリオの再設計、ニューノーマル時代の働き方から、「学び方」も大きく変わってきます。対面を前提とした研修だけではなく、オンラインを組み合わせた研修が主流になりつつあります。
次回は新しい働き方に合わせた人事制度と採用戦略について解説していきます。