条件2.【ビジネスモデル】レジリエンスを実現する多角化戦略
事業の多角化・リスクの分散化が、企業のしなやかさ・柔軟性を決める大きな要素になります。今後さらなる変化が待ち受けることを鑑みると、事業の多角化は必要不可欠です。単なるリスクヘッジではなく、変化に対してしなやかに業績を伸ばす“攻め”の戦略であることも視野に入れなければなりません。
最もポピュラーな多角化戦略は、サプライチェーンの多角化です。市場が衰退しない限り、多角化を突き詰めることでリスクヘッジは理論上、100%に近づきます。ここで、多角化戦略について「守り」と「攻め」の視点で見ていきます。
守りの視点での多角化戦略の意義とはリスク分散であり、自社の価値の広義化が方向性を定める切り口になります。例えば、飲食店の価値を「安心・安全な食生活の提供」と捉えるなど、自社の製品・サービスが消費者にとってどのような価値があるのかを見直すことで、不変的な市場での自社のポジションが見えてきます。
自社の広義の価値を明確化できたら、次は広義でのサプライチェーンの多角化を進めます。既存事業の市場縮小が見込まれる場合、増加が予測される事業領域を選定する必要があります。
一方、攻めの視点での多角化戦略の意義とは「ポートフォリオで成長する」ことであり、自社の強み(存在価値)を生かした社会課題への展開、これまでになかった付加価値の創造に着目すべきです。
そのために企業が取るべき戦略は、広義化された市場内の課題に対し、自社の強みを当てて、網羅性を高めるとともに自社の強み(=付加価値創造の可能性)を高めることです。したがって「攻め」という視点で見ると、中長期的な視点で「事業を育てる」思考が前提となります。
条件3.【組織モデル】変化対応力のあるフレキシブルな組織モデルの構築
新しい戦略やビジネスモデルが構築されても、実行がうまくいかないときには、戦略と既存の組織モデルが不整合を起こしている場合があります。過去に成功した事業と組織が成功体験の呪縛を解けず、環境変化に対応できず機能不全に陥っているのです。
組織に求められる条件は「しなやかさと強さ」です。日本企業の組織の多くは、「決まった製品・サービスを、決まったオペレーションで提供することを前提とした組織設計」です。意思決定についても、オペレーションレベルは現場に委譲されているものの、基本方向の意思決定は組織全体で行われることが大多数。こうした組織は、単一製品・サービスの提供には効率的ですが、「非連続に高速変化する」環境下では対応力が課題となります。
しなやかな組織を運営するのは、まぎれもなく人材です。今後は現場レベルで「カスタマーサクセス(=顧客が求める付加価値をスピーディーに実現する)」を実現するため、臨機応変に意思決定し、事業を推進する「経営者人材」をどれだけ多く備えているかが重要な課題となるでしょう。多様な価値観、能力、特性を持つ人材は、新たな環境に対する対応力の源泉となります。