特集1:課題解決工場
2017年2月号
AIビジネス市場、2030年度に2兆円超へ拡大する見通し
2016年4月、総務省情報通信政策研究所が、今後日本が目指すべき社会像として「智連社会(WINS(ウインズ)※)」を打ち出した。これは“智慧(ちえ)”の連結により新たな製品・サービスやビジネスモデルの創出を目指すものだ。その中核が「AI(人工知能)」のネットワーク化である。同省はAIネットワーク化の経済効果(直接的効果のみ)が、2045年に121兆円に上ると試算。併せて同年の名目GDPが68兆円増加すると推計している。
※ Wisdom Network Society の略
現在、AIを活用したビジネス市場が拡大しているという。富士キメラ総研がまとめた予測結果によると、2015年度のAIビジネスの国内市場は1500億円。これが20年度には約1兆円と6.7倍に拡大し、30年度では2兆1200億円に達する見通しだ。(【図表3】)
2030年度時点の市場規模を需要業種別に見ると、最も市場規模が大きいのは「金融」(対15年度比11.8倍の5860億円)。次いで「公共/社会インフラ」(同29.2倍の4520億円)、「情報通信」(13.6倍の3680億円)、「製造」(10.6倍の3340億円)などが続く。
同社はAI活用製品・サービスの注目市場(30年度)として、「需要予測」「コールセンター」「映像監視」「コミュニケーションロボット」「ネットワークセキュリティー」の5つを挙げている(【図表4】)。このうち需要予測市場(2015億円)については、BI(ビジネス・インテリジェンス)ツールやデータマイニング、統計解析など、企業内で生成される各種データを蓄積するためのシステムにAIを組み合わせ、需要予測機能を搭載する動きが今後広がるとみている。
またコールセンター市場(1870億円)では、オペレーターの業務支援やVOC(顧客の声)分析でのAI活用が進むほか、映像監視市場(1600億円)では撮影した映像データの分析・解析を目的にAIを組み込む動きが本格化する見通しだ。ソフトバンクロボティクス『Pepper』が先行するコミュニケーションロボット市場(600億円)については、現在、試作機を開発中の企業が製品を投入する2018年以降、市場拡大が進むと同社はみている。