特集1:戦略ロジスティクス
2016年11月号
物流17業種の市場規模、2016年度で20.7兆円(予測値)
システム物流と普通倉庫がけん引
国土交通省の推計によると、国内物流業界の市場規模は24兆円とされる。では、それぞれの市場の推移はどうなっているのだろうか。
矢野経済研究所が2015年4月にまとめた物流17業種(※2)の市場規模を見ると、2015年度は前年度比1.9%増の20.1兆円、16年度は20.7兆円と、2年連続の拡大を予測している(【図表2】)。なお、同社の値が国交省の推計値より小さいのは、国交省が営業収入(本業以外の収入を含む)ベースで集計したのに対し、同社は売上高(運賃、保管料、荷役料、関連サービス料など)ベースで算出している違いによるものと考えられる。
※2 海運、システム物流、(国内)宅配便、特別積合せ運送、普通倉庫、フォワーディング、一般港湾運送、冷蔵倉庫、引っ越し、航空貨物輸送、鉄道利用運送、軽貨物輸送、国際宅配便、鉄道貨物輸送、トランクルームおよび周辺、バイク便輸送、納品代行
同社が推計した17業種総額の推移を見ると、リーマン・ショックの影響で世界経済が停滞した2008~09年度、東日本大震災で物流の断絶が生じた2011年度、消費税率8%引き上げで駆け込み需要の反動減があった2014年度を除き、全体的には緩やかに拡大傾向を続けていることが分かる。
17業種のうち増加基調にあるのが、「システム物流」と「普通倉庫」である。システム物流とは、共同配送や3PL、ロジスティクス提案など、特定荷主の物流業務を一括して請け負う業務をいう。2008年度と16年度予測を比べると、システム物流は3.3兆円から4.2兆円、普通倉庫も1.7兆円から約2.2兆円と、いずれも約1.3倍の伸びを示している。
一方、最も市場規模が大きい「海運」は微減(約3%減)、「(国内)宅配便」と「特別積合せ運送」は横ばい、「フォワーディング」(国際貨物輸送・通関業務)と「一般港湾運送」は微増で、物流市場の拡大はシステム物流と普通倉庫がけん引している。
システム物流企業は、荷主の物流業務(輸配送・荷役など)を包括的に受託し、物流の効率化と品質向上を両立させる高付加価値化につなげている。普通倉庫企業も保管中心の業務から脱却し、梱包や包装、簡単な部品の組み立て、洗浄・メンテナンスなど流通加工サービスに事業領域を広げ、市場拡大に寄与している。
近年はインターネット通販を筆頭に、高齢化の進展に伴って需要が増加しているメディカル分野、コンビニエンスストアにおける低温食品分野などで物流需要が拡大している。こうした成長分野で物流価値を付けていくことが、事業拡大の鍵になりそうだ。