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コラム 2024.10.17

地域経済の未来を築く「中堅企業」支援 平子 勇心

ポイント


1.中堅企業の定義と支援策
2024年の産業競争力強化法改正により、従業員数2000人以下の企業が「中堅企業」と定義され、さらに、「特定中堅企業者」には設備投資やM&Aを促進する税制措置などの重点支援も行われる。

 

2.中堅企業の地域経済への影響
中堅企業は地域の雇用創出や経済活性化に重要な役割を果たし、地方自治体の税収増加や公共サービスの充実にも寄与する。

 

3.中堅企業が地方自治体に求める支援
中堅企業が中長期的に成長するためには、中期経営計画の策定、人的資本経営、DX推進や資本政策が重要であり、地域の実情を熟知した地方自治体が旗振り役となって推進することが期待される。

 

なぜ今、中堅企業支援なのか

 

2024年2月16日、「新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法」の改正案が閣議決定され、「常用従業員数2000人以下の会社等(中小企業者除く)」が「中堅企業者」と定義され、支援されることとなった。

 

さらに、積極的に賃上げやリスクを取った投資を行う成長意欲の高い中堅企業は「特定中堅企業者」と定義され、設備投資やM&Aを促進する税制措置が講じられている。

 

 

経済産業省は、中堅企業が地域の良質な雇用を創出する重要な存在であると位置付け、「賃上げ促進税制」による支援を実施。また、「中堅・中小成長投資補助金」や「地域未来投資促進税制」を通じて、国内投資の拡大やイノベーションの促進を図っている。

 

こうした支援により、地域経済が活性化され、中堅企業が地域で果たす役割はますます大きくなると考えられる。大企業の規模の経済と中小企業の機動力を兼ね備える中堅企業は、地域経済の新たな柱として期待されているのだ。

 

半面、中堅企業は機動力を失うと中途半端な組織になり、大企業にも中小企業にも劣る恐れがある。したがって、中堅企業の経営者には、環境の変化を敏感にキャッチし、適応していく経営意識を持つことが求められる。

 

 

中堅企業の成長がもたらす地域経済への効果

 

中堅企業の成長が地域にもたらすメリットは多岐にわたる。まず、経済的な貢献として、雇用創出により地元の失業率を低下させ、地元経済の活性化に寄与する。

 

また、地方自治体の税収増加につながり、公共サービスの充実を通じて地域住民の生活満足度向上にも貢献する。いわゆる「三方よし」の効果が期待できるのである。

 

では、地方自治体が中堅企業を支援するメリットは何か。それは、中小企業と比べて経営が比較的安定しているため、「良質な雇用の創出」「取引先である中小企業への波及効果」「国際展開による外需獲得」などが、中長期にわたって期待できることだ。

 

中堅企業は、その規模と柔軟性を生かして地域社会に多くの経済効果をもたらし、地域の持続可能な発展に寄与し、地域住民の生活の質を向上させる重要な存在となる。

 

 

中堅企業が地方自治体に求める支援とは?

 

ユニクロは「山口県の地域優良企業」から「世界のユニクロ」になった。中堅企業は、成長してグローバルな大企業になる可能性を秘めているのだ。そして、次世代の中堅企業は、現在の中小企業から生まれる。地域に中堅企業が増えれば、良質な雇用の創出をはじめとしたさまざまな好循環を期待できる。

 

中小企業庁に設置された「中小企業の成長経営の実現に向けた研究会」は、2024年6月に公表した第2次中間報告書で、「100億企業(売上高100億円以上など中堅企業クラスに成長する中小企業)」創出の加速に向け、成長志向の経営者を増やしていく必要があると述べた。また、経済産業省が2024年8月に公表した「令和7年度 経済産業省関係 概算要求等概要」にも、中堅企業向けの支援が盛り込まれている。

 

直近では、2024年10月4日の「第214回国会における石破内閣総理大臣所信表明演説」において、新たな地方創生施策の展開、中堅・中小企業の賃上げ環境整備、成長力に資する国内投資の促進が掲げられた。

 

今後も重点支援は続き、地方自治体には、各地域の実情に応じた中堅企業の成長支援策(中期経営計画の策定、人的資本経営、DX推進や資本政策)の実施が求められるだろう。

 

日本の国力強化には、中堅企業(および100億企業)が欠かせない存在である。地方自治体には、専門の外部機関のサポートも活用しながら、中堅企業の成長促進に注力していただきたい。

 

北海道から沖縄まで、全国に10拠点を構えるタナベコンサルティングは、「長期ビジョン構築・中期経営計画策定・推進コンサルティング」「人的資本経営コンサルティング」「DXコンサルティング」「事業ポートフォリオ戦略策定支援コンサルティング」などの中堅企業向けソリューションを数多く用意している。各エリアの事情に精通した経営コンサルタントが、それぞれのお悩みに最適なソリューションを提供し、課題解決を支援できる。

 

また、中堅企業を支援したコンサルティングの実例としては、「経営ビジョン策定と次世代人材の育成」「ITとM&Aを積極的に活用したホールディング経営の推進」「ブランディング支援」などがあるので、ぜひご参考いただきたい。

 

中堅企業の成長を地域経済の活性化につなげ、ひいては国内経済の成長と新陳代謝を促進することで、100年先の未来を共に創り出そう。

 

PROFILE
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平子 勇心
Yushin Tairako
タナベコンサルティング 行政/公共サービスチーフ。中央省庁で予算計画・配分や地方公共団体向けの交付金調整業務に従事し、その後、公益法人にて中央省庁の委託事業に携わる。タナベコンサルティング入社後は、中央省庁事業内外で培った経験を強みに行政からの委託事業を推進。公益に資する価値提供をモットーに、官民連携による社会課題解決に取り組んでいる。