“情報端末化”する自販機、“自販機化”に向かうコンビニ
一方、自販機の設置場所が飽和状態にある中で、コンビニがオフィス・工場などへのインドア設置を強化している。ファミリーマートは飲料やおにぎり・サンドイッチ、菓子などを販売する「自販機コンビニ」の設置台数を増やしているほか、セブン‐イレブン・ジャパンもおにぎりやパンなどを販売する「セブン自販機」のテスト設置を東京都内で開始し、17年度中に100台設置する予定という。
コンビニが自販機設置を強化しているのは、店舗を出店するには至らないものの、一定のニーズが見込める「マイクロ・マーケット」(極小商圏)を、人手をかけずに取り込むことが狙いだ。これは、オーバーストアと人手不足が背景にある。
コンビニ主要8社の合計店舗数は5万5322店(2017年12月末時点)。日本の総人口で割ったコンビニ1店当たりの人口は約2300人となり、コンビニの標準的な商圏人口といわれる3000人を割り込む。コンビニは明らかに飽和状態に陥っている。さらに、コンビニは人手不足が深刻だ。今後は、半径350~500mの狭小商圏に有人店舗を展開する従来の競争から、オフィスビルや工場、物流センター、学校、待合室、食堂などの極小商圏に無人自販機を設置する競争が激しさを増すかもしれない。
東京商工リサーチの調べによると、2017年(1~12月)に発生したコンビニ倒産件数が51件(前年比24.4%増)となり、5年連続で前年を上回った。これは同社が調査を始めた2002年以降、最多の53件(2003年)に迫る過去2番目の水準である。(【図表3】)
同社によると、コンビニの倒産件数は2012年まで3年連続で減少していたが、コンビニ各社が出店攻勢を強めて競争が激化した2013年を境に増加へ転じたという。
また、オーバーストアによる競合激化に加え、人手不足による従業員確保と人件費上昇も追い打ちをかけ、業績不振に陥る店舗が増加している。このため、休廃業・解散に至るFC(フランチャイズチェーン)オーナー企業も増えている。2017年のコンビニ休廃業・解散件数は155件(前年比7.6%増)と過去最多を記録した。倒産との合計件数は2011年から7年連続で前年を上回り、2017年(206件)は初めて200件台に乗せた。
これまで右肩上がりで成長を続けてきたコンビニ業界だが、地域内競合の激化と人手不足によって厳しい局面を迎えている。大手チェーンの間では人手不足を背景に24時間営業を見直す動きも出ており、従来からのビジネスモデルを転換する潮目に差し掛かっているともいえそうだ。