その他 2023.02.01

顧客創造投資:長尾吉邦

日本企業は「総下請け体質」であり、最大の課題は「新しい顧客の創造力」である。

 

思い返せば、タナベ経営(現タナベコンサルティング)の「ファーストコールカンパニーフォーラム2015」(2015年6~7月開催)で提言した「収益力:売上高経常利益率10%を実現する5つの条件」は次の通りであった。

 

第1の条件:オンリーワンポジションの確立
第2の条件:提供方法の独自化とブランディング活動の強化
第3の条件:リピート・紹介を重視したベースモデルの確立
第4の条件:収益の変動と格差の解消
第5の条件:顧客創造投資

 

この提言も参考にしていただきながら、各社は改善努力を積み重ねてこられた(日本の一企業当たりの売上高経常利益率:2019年度4.8%⇒2020年度5.0%、経済産業省「2021年企業活動基本調査確報-2020年度実績-」)。ところが、企業物価高(原料・材料・部材)の環境下において価格転嫁が遅れ、再び収益率が悪化傾向にある。

 

「顧客から価格アップを認めてもらえない」「顧客が離れるのが怖い」「既存チャネルを失うと売り上げが見込めない」。この3つが理由の大半を占めている。コストダウンや生産性アップ、アセットライト(保有資産を必要最小限にすること)で悪化を補おうとしているのが、いまの実態だ。

 

しかし、よく考えていただきたい。これらで得た利益は本来、社員の給与アップや未来投資に振り向けなければ、企業は“ジリ貧”へと向かい未来を失っていく。刺激的な表現ではあるが、思考も行動も「下請け体質」であることが本質的な課題なのだ。

 

いま、日本企業の課題は「新しい顧客の創造力」である。いわば、下請け体質からの脱皮だ。

 

そこへの投資が必要である。①商品・サービス開発への投資、②マーケティング・セールスリソースへの投資(営業担当者の増員、営業サポート担当者の増員)、③ウェブマーケティングへの投資(国内外の新規顧客リードをウェブで獲得する仕組みの構築)、④ブランディングへの投資(広告宣伝、広報)など、蓄積してきた自己資本も活用して顧客創造投資をかけていく。

 

筆者が考える“自立企業”の目安は「新規顧客の売上高比率40%」「新商品・サービスの売上高比率40%」。①~④の投資により、この2つの目標を実現していただきたい。

 

PROFILE
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長尾 吉邦
Yoshikuni Nagao
タナベコンサルティング 取締役副社長。タナベ経営(現タナベコンサルティング)に入社後、北海道支社長、取締役/東京本部・北海道支社・新潟支社担当、2009年常務取締役、2013年専務取締役を経て、現職。経営者とベストパートナーシップを組み、短中期の経営戦略構築を推進し、オリジナリティーあふれる増益企業へ導くコンサルティングが信条。クライアントの特長を生かした高収益経営モデルの構築を得意とする。著書に『企業盛衰は「経営」で決まる』(ダイヤモンド社)ほか。