2030年に向けたこれからの10年、中堅企業が最もアップデートする必要があるのは「組織」である。
中小企業から中堅企業へは、ニッチ領域の発見と特化による経営資源の集中、販売網や設備投資の拡大、チームワークと社員の一人三役の活躍により成長することが多い。しかし今、その成功体験から抜け出せず、成長の止まる中堅企業が散見される。
なぜ、成長が止まるのか。私がコンサルティングの臨床経験から診た真因は、「戦略と組織の不整合」だ。
誤解を恐れずに言うなら、年商300億円、経常利益率5%の企業の経営者に、同業の年商50億円、経常利益率1%の企業の組織図を見せると、何が課題かはすぐに発見できる。しかし、自社が年商500億円、経常利益率10%の企業になるための組織をデザインすることはできない。多くの経営者にとって組織は、未来を決定する重要事項でありながら、未見の領域であるがゆえに、決断が遅れてしまうのだ。
組織のアップデートに対する提言は次の4つ。
1つ目は、「戦略と組織は同時である」。戦略を変えるなら、組織も変えることだ。
2つ目は、「ライン・スタッフともに水平分業型(水平専門型)へ組織を変えていく」。すなわち、一人三役からの脱皮である。専門性を掘り下げることで戦略推進が高度化し、スピード化する。
3つ目は、「収益の要であるKPI(重要業績評価指標)に対しては、プロフェッショナルな組織×DXで挑む」。例えば、在庫の圧縮が収益の決め手となる事業があるとしよう。この事業に対し、営業部と生産部と購買部のプロジェクトで成果を上げようとするのが中小企業である。
しかし、在庫圧縮は、営業部には機会損失、生産部には稼働率低下、購買部には仕入れ単価アップにつながりかねない。どの部門にとってもトレードオフの関係が発生するのである。こうした場合に有効なのが、在庫を圧縮する専門組織の設置と、その実行をサポートするDXへの投資によって可視化を図り、マネジメントスピードを上げることだ。
4つ目は、「ルーティン業務の縮小、コア業務への集中化」である。ルーティン業務に必要な人員をDXによってゼロにする。そして、その人的資源をミドルオフィスへと振り向けてバリューチェーンの一角を担わせ、フロントオフィスはコア業務に集中させて付加価値を上げていくのだ。
さあ、2030年に向け、組織をアップデートしよう。