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コラム
TCG副社長メッセージ
タナベコンサルティンググループの副社長・長尾による連載。経営環境や市場トレンドを踏まえ、企業経営の未来に向けて提言します。
コラム 2026.07.30

「それでいいのか?」― 思考の限界を突破せよ ― 長尾 吉邦

企業を取り巻く環境は、かつてないスピードで変化し続けている。デジタル技術の進化、グローバル競争の激化、消費者ニーズの多様化——そのような時代にあって、現状に安住する企業に未来はあるのだろうか。


ある建設会社の創業者は、常に組織にこう問い掛け続けた。「それでいいのか?」。この言葉は、叱責しっせきではない。組織にイノベーションへの挑戦を求めているのであり、次なる可能性への問い掛けだ。その創業者の問いの下、同社は新しい工法・技術を連続して生み出し、急成長を遂げた。そして今、その精神は組織の隅々にまで根付き、「イノベーションが当たり前」という企業体質を形成している。特定の人物が変革をけん引するのではなく、社員一人一人が自ら問い、挑み続ける文化——これこそが、競争力の源泉となっている。


「問い」には、思考の限界を打ち破る力がある。人は問われなければ現状を疑わない。しかし「それでいいのか?」という一言が投げ掛けられた瞬間、思考は動き出す。固定化した枠が壊れ、新たな発想への扉が開く。イノベーションは問い続ける習慣の中から、静かに、しかし確実に育まれるものだ。


ここで一つの落とし穴に触れたい。AIは優秀だ。瞬時に答えを導き出す。しかしAIが得意とするのは「答えを出すこと」であり、「問いを投げ掛けること」ではない。さらに、AIは、「肯定はするが否定はしない」。AIに依存し過ぎる組織は、知らず知らずのうちに現状肯定の思考に陥りやすい。道具としてAIを使いこなすことと、AIに思考を委ねることは全く異なる。問う主体は、あくまでも人間でなければならない。


かつて一世を風靡ふうびした企業が、気付けば市場から姿を消している。成功体験に縛られると、過度な自己肯定からおごりとマンネリに陥る。問うことをやめた企業の行く末だ。


問い掛けよ。あなたの会社は、「それでいいのか?」。変化を恐れず問い続ける文化を育てることも、イノベーティブな風土を創る大切なポイントだ。

PROFILE
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長尾 吉邦
Yoshikuni Nagao

タナベコンサルティング 取締役副社長

北海道支社長、取締役/東京本部・北海道支社・新潟支社担当、2009年常務取締役、2013年専務取締役を経て、現職。経営者とベストパートナーシップを組み、短中期の経営戦略構築を推進し、オリジナリティーあふれる増益企業へ導くコンサルティングが信条。クライアントの特長を生かした高収益経営モデルの構築を得意とする。著書に『企業盛衰は「経営」で決まる』(ダイヤモンド社)ほか。