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コラム
TCG副社長メッセージ
タナベコンサルティンググループの副社長・長尾による連載。経営環境や市場トレンドを踏まえ、企業経営の未来に向けて提言します。
コラム 2026.01.17

今、必要な2つの価値観転換 長尾 吉邦

デフレ時代が終わりを迎えた今、経営者は「成長」の意義を転換する必要がある。ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正氏の言葉「成長しなければ、死も同然」は、決して刺激的な表現ではない。


現在と未来の経営環境は、2つのキーワードに集約される。「インフレ」と「人口減少」だ。日本が初めて体験する「インフレ×人口減少」という環境下での企業経営は、すでに始まっている。


インフレ時代において、経営者にはデフレ時代の価値観をリセットすることが求められる。インフレ率以下の成長は実質的な売り上げ減少であり、存在感や相対的なシェアの低下を意味するからだ。


また、人口減少で人材獲得競争が激化すると、人件費の継続的な上昇は避けられない。賃上げ率が毎年5%ならば、それ以上に売上高(付加価値)を上げなければ、生産性が低下する。すなわち、自社の未来を創る人材を獲得できないことにもつながる。


一方で、「インフレ×人口減少」が引き起こすチャンスもある。それは、企業も社会全体も人口減少は課題であり、「人材不足マーケット」が拡大することだ。また、逆説的に聞こえるかもしれないが、インフレに対して「コスト競争力」「投資力」は大きな武器となる。


このマーケット環境下での経営について、経営者に2つの価値観転換をお願いしたい。


1つは「成長への意思」を強く持つことだ。まれに「わが社は成長しなくてよい」「拡大は追わない」と言う経営者もいるが、前述の通り、賃上げ率が毎年5%となる環境下での2~3%の成長は「衰退」を意味する。生産性においても、現状維持では人材に大きな負荷をかけることになり、限界がある。成長の中での戦略の方が、はるかに生産性向上の実現性が高い。


もう1つは、「独り善がりではいけない」ということだ。環境変化に機敏に対応する経営能力にリソースを割くべきである。簡単に言うと、「きちんと外を見て経営しよう」。世界を見る、顧客を見る、異業種を見る、現場を見る。さまざま変化や新しい知見や技術を吸収し、経営していく必要がある。


次回(2026年5月号)は、「インフレ×人口減少」という経営環境で高成長を遂げていくための「3つの戦略オプション」について説明したい。

PROFILE
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長尾 吉邦
Yoshikuni Nagao

タナベコンサルティング 取締役副社長
北海道支社長、取締役/東京本部・北海道支社・新潟支社担当、2009年常務取締役、2013年専務取締役を経て、現職。経営者とベストパートナーシップを組み、短中期の経営戦略構築を推進し、オリジナリティーあふれる増益企業へ導くコンサルティングが信条。クライアントの特長を生かした高収益経営モデルの構築を得意とする。著書に『企業盛衰は「経営」で決まる』(ダイヤモンド社)ほか。