ヤマダホールディングスが住宅事業に本格参入して13年、くらしまるごと戦略を打ち出して6年が過ぎ、同社は、自ら成長軌道を生み出すことに成功した。そのポイントは、大きく次の3つである。
❶ 圧倒的なスピード感
家電と親和性が高い住まいにターゲットを絞り、持続的な成長とノウハウの取り込みを図るため、「時間を買う」こと目的にM&Aを実施。自社の成長戦略と合致する住宅関連企業のM&Aや、業務提携を積極的に推進することで、住建セグメントは早期に高い成果を上げている。
中でも、高性能の付加価値住宅を提案するヒノキヤグループは、グループインによって相乗効果を発揮し、2023年12月期に過去最高売上高、営業利益を記録するなど好調だ。優良企業ながら単独での成長に限界を感じ、資本力のある企業との未来を模索していたところを、ヤマダホールディングスが子会社化した。この圧倒的なスピード感が、くらしまるごと戦略を推進する要となっている。
❷ 5つのセグメントの有機的な活用
「くらしまるごと」をコンセプトに、5つのセグメントがシナジーを創出して成長戦略を加速している。例えば、家電セグメントの圧倒的な知名度と、全国47都道府県に広がる店舗ネットワークを生かして家電店舗敷地への住宅展示場を拡大するほか、資材調達、住宅施工、物流の効率化など、同社が司令塔となって保有するインフラの有効活用とコストダウンを実現。特に、住宅をバリューチェーンの入り口として各セグメントの商材販売につなげることで、住宅業界のみならず家電量販業界でも独自の地位を築いている。
❸ 「やってみる」企業文化
創業者の山田昇氏が実践し続けてきた「失敗しても良いから、とにかくやってみよう」という考え方が、同社には浸透している。これは、経営理念の「創造と挑戦」に通じており、あくなき起業家精神を表している。
M&Aによる事業拡大や、優れた組織や制度を整備したとしても、成長エンジンとなる変革を起こす人材が育ち、機能する起業家精神や企業文化がなければ、時流や市場変化の荒波を乗り超えることはできない。
創業50周年から新たな50年へ歩みを進めるヤマダホールディングスでは、普遍的価値を伴う経営理念のもと、過去の成功体験にとらわれない未来志向のビジネスモデルへの転換が現在進行形で続いている。
外資系飲料メーカーで戦略的広報、食品製造小売業でMD(マーチャンダイザー)部長、経営企画室長、新規事業開発リーダーを経てタナベコンサルティングへ入社。ものづくり企業を中心に、次世代幹部育成、原価マネジメント、新規事業開発を含めた中期ビジョン策定支援などを手掛ける。また、前職での3000を超える商品開発の経験から、新商品開発から食品工場マネジメント強化まで、食品業界でのコンサルティングを得意とする。