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コラム
FCC FORUMリポート
タナベコンサルティングが年に1度開催する「FCC FORUM(ファーストコールカンパニーフォーラム)」のポイントをレポート。
コラム 2024.10.01

環境変化を成長機会と捉える社会価値創造戦略 林崎 文彦:TOPPANホールディングスの戦略解説

 

世界中の課題を「突破=TOPPA!!!」する企業へ

 

2021年、「Digital & SustainableTransformation」という経営方針を同社は掲げた。「事業ポートフォリオの変革」「経営基盤の強化」「ESGへの取り組み・深化」に取り組み、世界の社会課題を解決するリーディングカンパニーとして企業価値の最大化を目指すという。

 

具体的には、「情報系成長事業(DX)」「生活系成長事業(国内SX・海外生活系)」「新事業(フロンティア)」という3つの成長事業が、2026年3月期に営業利益の半数を超える構成比を目指していく。収益率の低い既存印刷業が大半を占める「売上高」ではなく、「営業利益」をベースに事業ポートフォリオを変革して、利益体質の改善を見える化した点が大きな特長である。

 

2023年にはビジョン実現に向けたロードマップを策定。経営基盤を強化する「基盤構築フェーズ」、変革と深化を加速させる「成果獲得フェーズ」、変革と深化を実現・発展させる「持続成長フェーズ」の3ステップで、最終的にはROE(自己資本利益率)8%以上の高収益企業体へ変革していく計画を打ち出している。また、そのためにもROIC(投下資本利益率)の管理を強化しているところだ。

 

「成果獲得フェーズ」に当たる2024年現在、同社はリ・ブランディングにも全力を注いでいる。コーポレートカラーは従来のトッパンブルーに「新鮮さ」「アクティブさ」「活気」を連想させるオレンジを追加。120年の歴史の中で初めてテレビCMも放映し、「マーケティング」や「デジタル」など新たな成長領域にシフトする強い意志を打ち出した。「印刷だけの会社ではない」という大々的な広報活動は、従業員の意識改革や重点事業を担う人材の獲得、企業ブランドの向上にも良い効果をもたらしている。

 

2023年10月の新体制移行を機に、同社はグループ理念「TOPPAN’s Purpose & Value」を定めた。グループ全体の利益を最大化するためには、共通の価値判断基準が必要だからである。書かざる意志は実現しない。同社のように目指す姿を明示し、シンプルかつ丁寧に戦略に落とし込んで社内外に発信していくことは、戦略実装の大きな要となる。

 

PROFILE
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林崎 文彦
Fumihiko Hayashizaki
タナベコンサルティング エグゼクティブパートナー
大手印刷業界でマーケティング・顧客開発担当を経て、タナベコンサルティングに入社。企業のトップと業績に向き合い、常に新しい方法を模索して、地域の特色を生かした成功事例を次々に生み出している。中堅企業をメインに、中期ビジョン・中期経営計画の策定、BtoBブランド戦略立案、人材開発体系構築、動画を活用した技術伝承、ジュニアボード運営支援など、幅広い分野で多くの実績を残している。また、幹部や若手社員育成も得意としており、クライアントから高い評価を得ている。