ヒビノ 代表取締役副社長 吉松 聡氏
タナベコンサルティング・森田(以降、森田) ヒビノ株式会社は1964年設立の業務用音響・映像・照明機器の販売・システム設計・施工・メンテナンスを展開する東証スタンダード市場上場の企業グループです。60年の歩みの中で連結売上高は504億円(2024年3月期)を超え、従業員は1477名(2024年3月現在)にまで成長しています。まず、事業概要についてお聞かせください。
ヒビノ・吉松氏(以降、吉松) 販売施工事業、建築音響施工事業、コンサート・イベントサービス事業という3つのセグメントを手掛け、グループ企業は国内26社、海外9社(2024年5月現在)を数えます。当グループの特長は、音と映像、販売とサービスに関する全要素を取り扱っていることです。
森田 3つの事業の詳細について説明してください。
吉松 販売施工事業については、業務用音響機器などの輸入販売およびシステム提案を展開。グループ全体で110ブランドのメーカーと輸入代理店契約を締結し、海外製品を主力としたマルチベンダー対応を行っています。顧客は放送局、スタジオ、ホール、シアター、コンサート音響会社といった「音のプロフェッショナル」で、売上高は前年度比24.8%増の251億円(2024年3月期)です。
建築音響施工については、放送局やスタジオ、ホールといった音楽創造空間から最先端の研究開発施設まで、ハイレベルな音空間の設計・施工を展開。長年にわたる防音・防振・音響技術をベースに、製造業の音に関する研究開発支援や、航空機、高速道路、工場などの騒音に対する防音対策など、社会のより良い音環境づくりに貢献しています。売上高は前年度比16.4%増の92億円(2024年3月期)です。
コンサート・イベントサービス事業については、コンサートやイベントの音響・大型映像サービスのパイオニアとして高評価を獲得。音響や映像の機材を会場に持ち込み、セッティングとオペレーションを行っています。大規模コンサートを主戦場としており、2023年度は569組のアーティストをサポートし、2022年度には主要会場で開催されるコンサートの55%を担当した実績があります。売上高は前年度比16.4%増の160億円(2024年3月期)です。
森田 音と映像の両面で、販売から設計施工、サービスまで一貫して手掛ける唯一無二のビジネスモデルを確立しているのがヒビノグループの特長ですね。次に事業の沿革をお話しください。
吉松 創業者の日比野宏明(現・名誉会長)は、1956年にテレビの販売・修理を営む個人商店の日比野電気を開業します。そして東京都内約500件の喫茶店の音響装置を手掛けるまでシェアを拡大すると、1964年に業務用音響機器の設計・販売を主事業とするヒビノ電気音響を設立。ShureやJBLなど海外製の音響機器を輸入販売し、プロフェッショナル向け音響の市場開拓に乗り出します。1971年にはコンサート音響事業に参入。コンサート用音響機材の貸出と設置・オペレートを行う運用業務を展開し、日本におけるコンサート音響の基盤を確立しました。
1984年には映像分野に進出し、大型映像機器を展示会や博覧会、コンサートなどで運用する大型映像サービスを始動しました。そして2002年には大型LEDディスプレー・システムの開発・製造・販売事業に参入。2006年に発表した世界初の4K対応LEDプロセッサーによる自社ブランド「ChromaLED」は、国内のみならず海外でも高い評価を獲得しました。
60年の歩みの中のターニングポイントとしては、「コンサート音響事業への参入」「映像分野への進出」「M&Aを成長戦略として建築音響施工事業を設置」の3つが挙げられます。
大手アパレルSPA企業を経て、タナベコンサルティングへ入社。ライフスタイル産業の発展を使命とし、アパレル分野をはじめとする対消費者ビジネスの事業戦略構築、新規事業開発を得意とする。理論だけでなく、現場の意見に基づく戦略構築から実行まで、顧客と一体となった実践的なコンサルティング展開で、多くのクライアントから高い評価を得ている。