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コラム
FCC FORUMリポート
タナベコンサルティングが年に1度開催する「FCC FORUM(ファーストコールカンパニーフォーラム)」のポイントをレポート。
コラム 2025.09.30

全社員が経営力を養う人財育成 フォーモストブルーシール

高い知名度を誇る沖縄発のアイスクリームブランド

―― フォーモストブルーシール株式会社は、アイスクリーム販売をメーンに展開する沖縄県のシンボリックな企業の1つです。まずは会社の歴史についてお聞かせください。

 

米国に本社を置くフォーモスト社が、1948年に沖縄で駐留する米軍関係者へ乳製品を提供する目的で基地内に設立したのが当社の始まりです。その後、1963年に牧港まきみなと本店がある浦添市牧港に拠点を移し、沖縄発のアイスブランドとしての歴史がスタートしました。

 

企業理念は「アイスがもたらす、笑顔のために」。商品を通して人々の笑顔に出会えることを誇りに思いながら、100年以上続く企業を目指して日々の活動にまい進しています。

 

―― 渡嘉敷さんは、新卒採用の1期生とお聞きしました。

 

60周年を迎え、100年企業を目指していく施策の1つとして2009年に新卒採用がスタート。私は、その第1期生として入社しました。2025年に在籍16年目を迎え、現在は「人財育成・採用」のリーダーを務めています。

 

―― 人財育成に関して、人財に対する思いと人財育成、採用の3つのテーマについてお聞きします。2020年から、現在運用している人事制度の再構築に着手されました。タナベコンサルティングも支援していますが、制度を見直すきっかけや背景についてお聞かせください。

 

社風を変えたいと思ったことが一番の理由です。県内におけるブランド力が高まる一方、知らず知らずの間にブランド力に甘えて保守的になっていました。また、賃金制度の陳腐化や管理職のプレーイングマネジャー化といった課題がある中、社風や制度を見直す必要がありました。

 

 

人事制度の再構築で「求める人財像」を明確化

―― 再構築した人事制度の特徴をお聞かせください。

 

最初に企業理念・経営理念があり、それを実現する人財像について議論を重ねました。成果を処遇につなげ、課題を育成テーマにつなげる循環を回しながら、求める人財像に近づけていく制度であり、人財像や行動指針、人財育成ポリシーを含めた人財ビジョンを打ち出したところが大きな特徴です。

 

―― 求める人財像についてお聞かせください。

 

1つ目が、自社を誇りに思い、新しい取り組みへ主体的に挑戦し、成長・発展しようとする人財。2つ目に、お客さまの笑顔を生み出すことに喜びを感じ、高い品質の商品・サービスを提供し続ける人財。3つ目が、社員への思いやりを持ち、チームワークを大切にし、業務に取り組む人財です。

 

―― そのような人財を育成するために教育制度も再構築されました。

 

フォーモストブルーシールから頭文字を取って、「FBSアカデミー」という企業内大学をつくりました。企業理念や求める人財像、経営方針、人財ビジョンも踏まえ、階級別に必要なスキルや能力を整理した上で、評価制度や昇給基準をひも付けながら計画的に研修を実施しています。

 

―― 人事制度を変えたタイミングで、キャリアパスも整備しましたね。

 

入社後、2年間は店舗配属する形に変えました。お客さまと接することで「アイスがもたらす、笑顔のために」という企業理念を体感してもらい、店舗経営を通してマネジメント感覚を身に付けてもらうためです。

 

1年目は店舗のオペレーションを中心に学び、2年目にマネジメントを習得するスケジュールで実施していますが、新たに動画マニュアルを作成し、場所や時間を問わずオペレーションを学べる仕組みを整備しました。新入社員が必要なスキルを早期に習得できるだけでなく、教える側の負担軽減というメリットも感じています。

 

 

世界観を統一し全社員を巻き込む採用活動を展開

―― 採用活動についてお聞かせください。

 

新卒採用を始めて15年になりますが、年を追うごとに応募者数が減っており、直近では応募人数が未達成の年が続いていました。今回、採用活動を見直したことで応募者が前年比2.2倍に増加し、多様な人財に応募いただけるようになりました。

 

ポイントは2つあります。1つ目は、採用ブランディング。ホームページや企業説明会、会社のパンフレットなどのデザインに牧港本店の世界観を反映して統一感を持たせたほか、当社が求める人財像をPR活動の1つとして打ち出しました。

 

2つ目は、全社採用活動へのシフトです。その一例が、1Dayタイプのインターンシップ制度の導入です。部署ごとに5コースを用意し、学生が興味のあるコースを選べるようにしました。また、若手社員や管理職との座談会の場を設けるなど、全社的な協力の下で採用活動を展開しています。社員が採用に関心を持ち、学生を通して当社が求める人財像を確認する機会になっています。多くの社員が採用に関わることで、ミスマッチが起こりにくくなると考えています。

 

―― 最後に今後の展望をお聞かせください。

 

おかげさまで創業77年目を迎え、業績も好調に推移していますが、さらなる成長に向けて鍵を握るのは人財育成だと考えています。今後も人財育成に注力し、売上高40億円、50億円と業績を上げて、100年企業に向けて進んでいきます。

PROFILE
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渡嘉敷 亜梨紗 氏
Arisa Tokashiki
フォーモストブルーシール 経営管理部 人事総務課
2009年、フォーモストブルーシール株式会社に新卒1期生として入社。営業部、マーケティング部の広報・企画などを経て現在の人事総務課に課長として勤務。PB商品の開発やBigDip看板PJT、アイスパーク事業のコンテンツ立案、牧港本店事務所PJTへも参画。新人事制度の立上げ、FBSアカデミー整備に携わり、学び喜びあえる文化を社内に浸透するべく日々取り組んでいる。また小さい子を持つ管理職ママとして育児との両立の難しさを実体験しながら「これからの働き方の確立」、当社に合った「採用活動の確立」を目指し日々奮闘中。