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コラム 2025.01.29

過半数の企業がブランディング戦略を「未策定」と回答 「2024年度 ブランディングに関するアンケート」リポート

タナベコンサルティングは2024年9月、「ブランディングに関するアンケート」リポートをまとめた。本稿では調査結果の一部を抜粋して紹介する。

 

 

ブランディング成功の鍵は全社的な取り組みと明確な目標設定

 

日本経済はデフレからの脱却を迎え、2025年には堅調な成長が見込まれている。この経済環境の変化に伴い、企業は新たに出現するマーケットに対応する必要がある。

 

特に、インフレ経済下での新しい需要に応えるためには、単なる「機能的価値」を超えた「目に見えない価値」をどのように訴求し、顧客に選ばれるかが重要である。
このような環境の中、企業のブランディング活動の現状を見ると、自社の市場を成長市場と捉える企業のブランド投資の方針として、「増加」(54.7%)が最も多かった。企業が成長市場に対して積極的に投資を行い、さらなる市場開拓を目指していることを示している。

 

一方、「横ばい」と回答した企業は35.8%と少なくなく、安定した投資戦略を維持する姿勢が見受けられる。また、自社の市場を停滞市場と捉える企業においては、「横ばい」が66.7%と突出しており、多くの企業が現状維持を選んでいると推察される。

 

 

ブランディング戦略の策定状況について、策定している企業(46.7%)であり、昨年と比較して約7ポイント増加した。一方、策定していない企業は53.3%となった。企業におけるブランドの重要性は高まりつつあるものの、依然として過半数の企業ではブランド戦略が未策定であり、ブランディング活動が十分に進んでいない。

 

 

ブランディング戦略を策定している企業に限定すると、57.0%が「順調に進行している」と回答した。一方、「遅れが生じている」との回答は39.2%であり、約4割の企業がブランディング戦略の実行に支障をきたしていることが分かる。また、3.8%の企業は戦略の進行が止まっている状況である。ブランディング戦略を策定しても、計画通りに進行するためにはさまざまな課題があることがうかがえる。

 

 

 

アウター/インナーブランディングが多面的な成果を創出

 

アウターブランディングの取り組みと効果について、売り上げの増加に効果があった施策は「展示会・イベント出展/開催」(50.4%)と最も多く、次いで「インターネット広告(SNS広告・WEB広告)」(48.8%)となった。市場シェアの拡大においては、「展示会・イベント出展/開催」「インターネット広告(SNS広告・WEB広告)」(共に57.4%)と高い割合を占めている。市場との接点を直接拡大できる取り組みに即効性があると推察される。

 

ブランドの価値向上に効果があった施策は、「広報・PR活動」(61.3%)と最も多く、関連性が深い取り組みとして挙げられる。また、顧客満足度の向上においては、「広報・PR活動」(50.0%)、「コーポレートサイトの運営」(47.8%)、「インターネット広告(SNS広告・WEB広告)」(46.7%)となり、これらが顧客との信頼関係を強化するために重要な役割を果たしていることが推察される。

 

インナーブランディングの取り組みと効果について、「パーパス、ミッション、ビジョン、バリュー(PMVV)の策定」は、企業文化の強化では61.8%、顧客満足度の向上では59.2%の企業が効果があったと回答した。

 

また、「社員向けのイベントや表彰制度の導入」は、離職率の低下では47.2%、社員の生産性向上では45.6%が効果ありと回答していることが分かる。「社内報やイントラネットでのブランドに関する情報発信」に関しても、離職率の低下(46.5%)、社員の生産性向上(42.9%)との回答で、安定した効果があることを示しており、社員との日常的なコミュニケーションを支える重要な役割を果たしている。インナーブランディングは単なる社内コミュニケーション戦略にとどまらず、経営戦略の中核的な要素であることが推察される。

 

 

 

効果測定に課題を抱えている企業は約2割

 

ブランディング活動の評価方法について、「顧客・社員からのフィードバック」(43.2%)、「認知度調査、社員エンゲージメント調査」(42.3%)が上位を占めており、顧客や社員の声を重視する傾向が顕著である。

 

「売上の増加」(39.3%)もブランディング活動の主要な評価指標となっており、ブランディング活動の最終的な成果を経済的観点から測定していることがうかがえる。一方、デジタル指標である「ウェブサイトのトラフィック」(20.4%)と「SNSのエンゲージメント」(14.5%)は低く、デジタルマーケティングの影響力は、活動の評価指標として限定的であることが示唆される。また、「なし」(評価指標を持たない企業)が20.7%と、ブランディング活動の効果測定に課題を抱えている企業が2割あることが明らかになった。

 

広報活動の具体的な取り組み内容について、「自社サイトでの情報発信」(59.8%)が最も多く、次いで、「プレス・ニュースリリースの作成・配信(自社サイト)」(48.8%)、「SNSでの情報発信」(39.6%)と、広報活動においてデジタルコミュニケーション戦略が重要な柱となっていることが推察される。一方、「海外に向けたプレス・ニュースリリースの作成・配信」は4.7%と限定的であり、グローバル展開における広報戦略の課題が浮き彫りになった。

 

 

ブランディング戦略を推進する3つのポイント

 

ブランディング戦略は、企業の競争力を高め、持続的な成長を実現するために不可欠な要素である。しかし、本アンケート調査からも分かる通り、多くの企業が戦略の策定や実行、評価において課題を抱えている。次の3つは、ブランディング戦略を推進する上で重要なポイントである。

 


⑴ 戦略から実行、評価まで一気通貫のブランディングを行う
⑵ ブランドがエンゲージメントを高めて組織を強くする
⑶ 海外PRを活用してグローバルでのビジネスチャンスを創出する

企業がブランド力を強化し、組織のパフォーマンスを向上させ、グローバル市場でのビジネスチャンスを最大化するための指針としていただきたい。

 

 

(調査概要)

    • アンケート名:ブランディングに関するアンケート
    • 調査目的:企業におけるブランディング活動を把握し、後の企業経営の発展に寄与する成長施策を提言する
    • 調査方法:インターネットによる回答
    • 調査期間: 2024年10月15日~11月1日
    • 調査エリア:全国
    • 有効回答数:338件

 


「2024年度 ブランディングに関するアンケートREPORT」の全体版(無料)には、業種別の回答などのより詳細な調査結果と、タナベコンサルティングの提言を掲載しています。