【第2回の趣旨】
人的資本研究会は、「人材投資は活育サイクルをどう磨くか!人への投資がこれからの企業価値を決める」を今期のテーマとしている。
第2回では、ゲスト企業2社にご講演いただき、リコー様からは「リコー式ジョブ型人事制度」、ローンディール様からは「越境による組織変革の可能性」についてご講演いただいた。
開催日時:2025年4月18日(東京開催)
はじめに
株式会社リコーは1936年、財団法人理化学研究所における発明の工業化を目的とする理化学興業株式会社から独立し、理研感光紙株式会社として設立された。三愛精神「人を愛し 国を愛し 勤めを愛す」を創業の精神と掲げ、「“はたらく”に歓びを」を「使命と目指す姿」で示している。
感光紙の製造・販売から始め、時代に適応しながら現在までの間に「事務機分野進出」、「OA(オフィスオートメーション)の提唱」「デジタル化・グローバル化」「サービス事業の拡大」、「デジタルサービスの会社へ」と掲げ、 「“はたらく”に歓びを」を実践し続けている。連結売上高2兆3,489億円、関連会社242社・グループ社員数79,544人での国内における「リコー式 ジョブ型人事制度」についてご講義いただいた。
ただの人事制度変更ではなく、「経営そのもの」と位置付ける人事制度の改革
サービス事業に変わる会社で自律的に価値を発揮する組織へ
ただの制度変更ではなく、「デジタルサービスの会社」へ変革させる「経営そのもの」の仕組みとしてジョブ型人事制度の導入に向け動き始めた。
まずは、導入の目的について経営会議にて議論を重ね、「高い管理職比率」「年功的な配置と登用」「若手のやる気減退」といった3つの課題に対して「過去の実績ではなく、現在の実力と意欲によって抜擢され、活躍できるようにする」「難しい仕事へのチャレンジや会社への貢献度が高い人が報われるようにする」「適所適材を実現し柔軟なポジションOn/Offができるようにする」ことを目指した。
導入後、約3年経過した現在、若手の実力に応じた抜擢が進む等、掲げた目標への一定の評価が得られている。
リコー式:ジョブ大ぐくり(ブロードバンド)
機動性・流動性を確保するためのジョブの細分化をしすぎない
一般的なジョブ型では、営業部長・経理部長・製造部長…で個別にジョブ定義を行っているがリコー式ジョブ型人事制度は異なっている。リコー式ジョブ型人事制度は同程度のジョブ・責任を背負っているポジションを大きな括りでグレード化している。そのため、配置転換を行ってもグレード変更は生じにくいため、柔軟な配置がしやすくなる。
また、新制度では、マネジャー・エキスパートからポジションオフした管理職には、アソシエイト・エキスパートとして、3年間を期限に再登用のチャレンジ期間を設けた。
エキスパートポジションは、人の活用の視点で設計するのではなく、戦略上あるべきエキスパートポジションを設計し、そこに適任者をアサインする。そして、空席のポジションも明確にし、チャレンジ・抜擢しやすい構造へ変更した。
リコー式ジョブ型導入による役職定年の廃止
ジョブ型の思想との整合性と新陳代謝の担保
ジョブ型導入に合わせて役職定年(57歳)の廃止と再雇用制度の変更を行った。ジョブ型では年齢にかかわらずジョブに適する人材登用が前提のため、年齢に基づきポストオフする役職定年制度は廃止した。ただし、組織の若返りのために新陳代謝を促す仕組みとして57歳をレビューポイントとし、Better人材がいる場合は、積極的に入れ替えを検討している。
また、再雇用制度を変更し、新たに現役と同じポジションを継続するシニアエグゼクティブという区分を設けた。なお、シニアの区分は最終グレードに関わらず、毎年担うジョブに基づき決定する。同社の持続的な成長に向け、やる気があれば年齢に関係なくチャレンジできる人事制度への変革となった。
