【第1回の趣旨】
ビジネスモデルイノベーション研究会では、「両利きの経営」における「知の探索と深化の融合・結合の実践」をテーマにさまざまな分野における秀逸なビジネスモデルを構築し、成功している優良企業を視察訪問している。
第12期のテーマを
「The Intersection of Business Sense
~ビジネスモデル イノベーションを実現するための感性を磨く交差点~」
とし、ゲスト企業の視察を実施した。
研究会参加者は、マネーフォワード、アール・エフ・ヤマカワ、カーツメディアワークスの講話・現場視察から、「コ・クリエーション戦略(企業と利害関係者(ステークホルダー)が協働して新たな価値を創造する戦略)」について学んだ。
開催日時:2025年3月5日(東京開催)
はじめに
ナレッジラボは、2013年に公認会計士・税理士のメンバーにより、事業再生コンサルティングの領域を主業として創業し、課題を抱える多くの中小企業を支援してきた。
そんな中、マネーフォワードが提供するクラウド会計と出会い、コンサルティングの場面で活用した。多くの現場でバックオフィスの改善成果を生み出し、事業領域を「クラウドで中小企業を支援する」ことに注力し、2018年にマネーフォワードグループに加入した。
2024年、マネーフォワードは新会社のマネーフォワードクラウド経営管理コンサルティング(MFCC)を立ち上げ、ナレッジラボと協業し、経営管理領域における事業拡大に向けて本格的に始動した。
マネーフォワードのミッション
ファーストステージ:種をまくことから始める
ナレッジラボは、会計士や税理士が集まり設立された会計コンサルティング会社であり、事業再生を主軸に活動を開始した。主に、売上高5000万円から10億円規模の中小企業を対象に、地方での案件から実績を積み重ねている。
事業再生では、現状把握のためのデータ整理を行い、収益構造を分析し、中期計画や月次計画を策定する。経営者だけでなく社員も巻き込み、計画実現に向けた具体的な行動を支援した結果、多くの企業が業績改善やV字回復を果たし、200社中190社を再生に導いた。
ナレッジラボのアプローチは、経営者の「経営に対する解像度」を高めることに重点を置き、経営の見通しを明確にすることで、リスク回避やコントロール範囲の拡大を可能にした。また、業界特有の課題を主張する経営者に対しても、普遍的な経営パターンを見い出し、コンセンサスを大切にしながら課題の解決に取り組んでいる。
事業再生にはクライアント先に深く入り込む必要があり、それぞれに会計知識や経営者との信頼関係構築能力が求められる。事業拡大を目指す中で、コンサルタントの増員だけでは限界があると判断し、自社のノウハウを生かしたSaaS型システムの開発に着手した。当時、日本には類似のシステムが存在せず、他社に開発を依頼することができなかったため、同社自ら開発を進めることで新たなステージへと進んだ。
ナレッジラボ創業当時のオフィス
セカンドステージ:芽を育てる
2018年、ナレッジラボは「Manageboard」をリリースし、ビジネス拡大のために資金調達を模索した結果、同年にマネーフォワードグループへ加入。加入によるシナジーとして、両社はビジョンや方向性が一致しており、ナレッジラボがマネーフォワードのユーザーであったこと、スタッフ間の事前交流、カルチャーの相性確認などがスムーズな統合を後押しした。
統合後、マーケティングではマネーフォワードブランドの活用やユーザーへのサービス紹介、営業では全国の営業担当者による販売支援、プロダクト開発では会計ソフトと予算管理ソフトの機能共同開発やエンジニア間の交流が進んだ。顧客基盤の共有がシナジーの鍵となり、ストーリー性や違和感のない連携を可能にした。
また、ナレッジラボはビジネスモデルを転換し、従来のコンサルタント個人の信頼に基づく案件獲得から、デジタルマーケティングやSaaS型の「The Model」組織へ移行した。コロナ禍では、訪問型からオンライン面談型のサービス提供への変革も行った。統合によって、マネーフォワードグループの成功例や失敗例を学べる環境が手に入ったことも成長の鍵となった。
2018年、ナレッジラボはマネーフォワードグループへ加入
サードステージ:⼤⽊を⽬指す
ナレッジラボは、表計算ソフトやインストール型ソフトを使用していた従来の業務をクラウド型へ転換し、急成長する経営管理領域のSaaS市場に進出した。この市場は、予算・経費・サブスクリプション管理の分野で2022年から2027年にかけて約2倍の成長が予測されている。市場の成長に対応するためには短期間で市場シェアを拡大する必要があり、ナレッジラボはいくつかの重要な決断を下した。
まず、これまで61%だったマネーフォワードによる持分を100%化し、完全子会社化を進めた。また、エンタープライズ企業向けサービスを提供するアウトルックコンサルティング社をグループに迎え入れ、マネーフォワード内の連結プロダクト事業を経営管理領域に統合した。さらに、経営管理領域のグループ再編に伴い、マネーフォワードクラウド経営管理コンサルティングを設立し、経営管理領域での事業基盤を強化した。
同社は、急成長する市場での競争力を高める体制を整え、グループとしてさらなる価値提供を目指している。

マネーフォワードクラウド経営管理コンサルティング株式会社 取締役