5年で年商規模を2倍にしたワークマンのBuisiness Redefinition(事業再定義)への挑戦
ワークマン
【第3回の趣旨】
ビジネスモデルイノベーション研究会では、「両利きの経営」における「知の探索と深化の融合・結合の実践」をテーマに様々な分野における秀逸なビジネスモデルを構築し、成功している優良企業を視察訪問している。
第11期第3回のテーマを「ドメインの再定義で挑む新たなステージ」とし、サブテーマに下記3点をおいて、ゲスト企業の視察を実施した。
1.不変のパーパスとアップデートするドメインが提供する新たな価値
2.CXを最大化する体感・体験価値の共創
3.DX実装によって描く企業・自治体の進化型
研究会参加者は、ワークマンの講話、前橋まちなかエージェンシーの講話、前橋のまちなか視察、ヤマダホームズの講演、スマートハウスの視察から、新たな領域への可能性を感じ、ドメインを再定義し成長し続ける企業の要諦について学びを深めた。
開催日時:2024年6月18日(群馬開催)
営業企画・広報部 部長 林 知幸氏
はじめに:株式会社ワークマンのご紹介
ワークマンは、作業服、作業関連用品およびアウトドア・スポーツウェアを販売する専門店をチェーン展開する企業。総合スーパーのベイシア、ホームセンターのカインズなどを擁する流通大手であるベイシアグループの一員で、主に現場作業や工場作業向けの作業服・関連用品の専門店として、日本最大手である。
自社が展開する市場を「アスレジャー市場」と定義し「ワークマン」「ワークマン+」「ワークマン女子」「ワークマンPro」など独自で魅力的な業態を全国で展開。独自のマーケティング戦略とビジネスモデルで、業界を席巻する同社のイノベーションに学ぶ。
まなびのポイント 1:ワークマンの変革プロセス
今では「ワークマン」「ワークマン+」「ワークマン女子」と業態を展開しており、一般客にも広く認知されているワークマンであるが、2000年~2010年頃は職人特化型の商品形態で製品開発・販売ともに経験がものをいう、トップダウン型の超属人型風土をもつ企業であった。
しかし、2年連続の減収からPB開発に乗り出し、一般客にも受け入れられる製品を販売するため、データ活用の研修を導入しデータ分析・活用する風土を築くことで徐々にボトムアップ型の組織へ移行し、客層を拡大。作業服市場では団塊世代の引退に伴い、かっこよくてスタイリッシュな作業服が求められるようになった。
そうした中で、お客様の声を聞き、製品を開発・売り場の演出を変えることで市場のシェアを拡大していった。
まなびのポイント 2:幅広い客層が納得する商品を目指す「客層拡大戦略」
2013年に発売された防寒スーツがバイク乗りの最強の冬服として受け入れられたことをきっかけにして、ワークマンは「客層拡大戦略」という一つの目標に向かって進むことになった。作業服としてしか見ていなかった商品を「機能性ウエア」と再定義し、まだ顕在化していない生活者の要望を汲み取る、製品(新用途)開発を実施した。
高機能かつ低価格な汎用性のあるウエアを開発する際、作業服を着て仕事をしない社員には作業服の機能性については語れないと、毎日作業服を着て仕事をする現場のプロ職人の意見に耳を傾け、更に現場で高い機能性を発揮するウエアを開発した。
「声のする方へ進化する」という姿勢を徹底することで幅広い客層の期待に応えている。
アンバサダーの声を取り入れて、作業服としても使える多収納焚火ウエアを共同で開発
まなびのポイント 3:ファンの声を取り入れる「アンバサダー・マーケティング」
同社は普段から製品をアウトドアやスポーツで使用し、その体験をSNS、YouTubeで発信している熱烈なファンを公式アンバサダーに任命し、製品の共同開発、製品情報、体験価値の拡散をしている。
アンバサダーはワークマンの製品を誰よりも早く発信でき、その発信により自身の認知度向上、フォロワー数の増加による収入の増加というサイクルが回り、かつ、製品開発というプライスレスな体験を通じて、より充実したライフスタイルを送ることができる。アンバサダーが社外取締役へ就任しているケースもあり、女性ユーチューバーの社外取締役は世間の注目を集めた。
多くのアンバサダーが熱烈な発信を継続することで、広告費用をかけずとも製品の情報がお客様に認知されており、新製品は店に並ぶとすぐに完売してしまうことも少なくない。また、アンバサダーが街中でも製品を使用するため、プロ領域を専門としていた製品はタウンユースまで領域を拡大している。
アンバサダー・マーケティングを通じてより近い顧客の声を取り入れる販売戦略を実現するワークマンは、今後もさらなる成長が期待される。
製品の熱烈なファンであるアンバサダー