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研究リポート
人的資本研究会
人材を投資により生産性を高められる「資本」として捉え、人的資本と活育サイクル(採用・育成・活躍・定着)の視点で事例研究を進めます。
研究リポート 2025.01.31

レクストHDの「ISO30414取得のストーリー」と「人を大切にする経営」 レクストホールディングス

【第5回の趣旨】
当研究会は、「人材こそ“資本”! 人への投資がこれからの企業価値を決める!」をテーマとしている。今回のテーマは、ダイバーシティー経営の視点や人的資本経営推進の指標となるISO30414認証取得、人材を資本と捉えて企業価値の向上につなげる手法についてご講演いただいた。

開催日時:2024年10月12日(大阪開催)

 

 

はじめに

 

生活総合商社としてリユース事業を中心に多彩な事業を展開するレクストホールディングスは、右肩上がりの成長を遂げている。現在、7社のグループ企業から成る同社は、成長を求める社員が活躍できる環境を整備しており、次世代リーダーを育成するための「ジュニアボード」設置や離職率低減のための施策、新入社員とのコミュニケーションを促進する「メンターシップ制度」などを導入して組織を活性化。2023年には、世界で8社目、日本で4社目、中小企業部門では世界初の人的資本経営の国際規格「ISO 30414」の認証を取得した。ISO30414の取得は、働く人を大切にする取り組みの結果である。人材を資本と捉え、企業価値の向上につなげた同社の経営手法についてご講演いただいた。

 


2023年3月17日にISO30414の認証を取得。世界で8番目、中小企業としては世界初だった。人的資本経営を定量的に分析することで自社の経営課題の発見につながり、さまざまな社員を大切にする取り組みを実施するきっかけとなった

 


 

人的資本経営=人を大切にする経営

 

同社は、人的資本経営を「人を大切にする経営」と捉えている。しかし、その定量化は難しく、基準はあいまいな部分が多い。そのため、人を大切にすることの具体的な数値化を意識しながら、障がい者、性別、国籍など、多様な人々が働ける環境をどのように提供するかを重要な課題として捉え、人的資本経営に取り組んだ。ガイドラインに従って数値を公開するには、対外的に開示できる(恥ずかしくない)データを用意する必要があり、データを過去に遡ったり、無いものはすぐに着手したという。人的資本経営に取り組むきっかけは、社長自身がエンジニアとして23カ国で勤務した経験から、世界水準の経営手法を志向してきたことだった。今後も人的資本経営の取り組みをベースに、海外の先進的な手法を取り入れながら成長を目指す。

 

 

ISO30414取得のための重要なポイント

 

人的資本経営の取り組みは定量化が難しく、どう数値化するか頭を抱える経営者は少なくない。同社もISO30414取得のためには後継者育成などの定量化しにくい項目をクリアにする難しさがあった。2022年6月に人的資本経営に関する取り組みをスタートさせ、11月にはISO30414の申請を行った。新卒社員が認証コンサルタント資格を取得し、社内にノウハウを蓄積したことが取得を大きく後押ししたという。ISO30414の取得には情報不足やデータ管理の統一が必要で、改ざんの恐れを排除するためのシステム整備が求められる。また、社員への浸透も不可欠で、ランダムに選ばれた社員に対する聞き取り調査があるため、全社員が人的資本経営の重要性を理解しているおかなければならない。中小企業として世界初の取り組みを行ったこと自体が採用活動においても大きなフックとなった。

 


ISO認証取得で得られた成果を学生へのPRに活用。ゲーム選考、動画活用、リファラル・アルムナイ採用などの取り組みと併せて、採用においても大きな競争力となった

 

 

「人を大切にする」複合的な取り組みが重要

 

幹部候補生の発掘を目的とした「ジュニアボード」は、ISO取得中に後継者育成が不十分との指摘を受けたことをきっかけにスタートした。現在は、ジュニアボードを通じた次世代リーダーの育成に力を入れている。取得の過程を経て、経営課題を発見できたことが最大の効果であると言える。また、社内インターンシップを通じ、別部門や別会社での就業体験を提供。社員のキャリア形成を支援する取り組みや、「チャレンジベンチャーコンテスト」では、全従業員が社内で起業できる機会を設け、アントレプレナーシップや問題解決力を育成している。この制度には、年間300名の学生が興味を示すなど、採用活動にも好影響を与えている。また、メンターシップ制度を導入し、若手社員が早期にマネジメントを理解できるよう支援している。これらの施策を通じて、レクストホールディングスは人的資本経営を促進し、持続可能な発展を目指す。


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PROFILE
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堀田 信弘 様
レクストホールディングス株式会社
代表取締役