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研究リポート
建設ソリューション成長戦略研究会
人件費・資材の高騰、地方の衰退など、外部環境の変化に合わせて提供価値を進化させている企業を研究し、建設業界の発展に寄与する機会を作っています。
研究リポート 2024.11.01

持続的成長のための経営戦略 SOEIホールディングス

【第1回の趣旨】
建設ソリューション成長戦略研究会では、秀逸なビジネスモデル・経営ノウハウを持つさまざまな企業の現場を「体感」する機会と、経営改革・業務革新のヒントを提供する。また昨今、建設業界で喫緊の課題となっている働き方改革実現にあたり、長時間労働や人手不足、技術の伝承など、様々な課題に対して、働き方改革の本質の理解と課題へのアプローチ方法について学ぶ。第1回は「人材育成強化」や「独自システムの構築」「DXの推進」等、先進的な取り組みを行っている企業にご講演いただいた。

 

 

SOEIホールディングス株式会社
代表取締役
 若山 圭介 氏

 

はじめに

 

SOEIホールディングス株式会社は地盤改良工事や高圧噴射攪拌杭の施工、各種グラウト工事、深礎工法などを行う事業会社を束ね、これら専門工事会社の経営を主導している。

祖業は1977年設立の双栄基礎工業における薬液注入工事で、その後営業所を関東圏内中心に展開。2007年若山社長就任後、2016年にホールディングス化を実施、2018年に東京都認定の職業訓練校を設立し人材育成を強化することや、M&Aを中心に事業を拡大してきた。その結果、2024年2月期は売上高70億円を超え、人員数352名にまで成長を遂げた。

ホールディング経営によるポートフォリオの最適化や人材育成に注力しながら、今後は海外事業の展開や構造物の維持補修等隣接事業への多角化を推進していく。

 

まなびのポイント 1:ホールディング経営による事業ポートフォリオの最適化

 

祖業である地盤改良工事の企業1社にさまざまな事業と管理の機能を持たせることにリスクを感じていたことや、世襲だけではない事業承継の選択肢を持ちたかったことなどを背景に2016年、ホールディングス化を実施。資本と経営、ストックとフロー、事業と管理を分離しながら、事業のポートフォリオ最適化を図った。

また、人材採用から人材活躍・派遣まで、シナジー効果の高い企業であることを前提に、一部出資やM&Aを実施することによってグループ企業の拡大を図ってきた。今後はグループ会社を拡大する中で、“経営者”というキャリアプランを選ぶことができ、経営者の育成にも力を入れていくことで、経営者を“活かし”“育てる”仕組みづくりを推進する。

 

ナンバーワンブランドを実現する事業ポートフォリオの最適化を図る。 人材採用から活躍、派遣までのバリューチェーンで、専門工事会社メガプラットフォームを目指す。
ナンバーワンブランドを実現する事業ポートフォリオの最適化を図る。 人材採用から活躍、派遣までのバリューチェーンで、専門工事会社メガプラットフォームを目指す。

 

まなびのポイント 2:オリジナル収益管理SOEIシステムの導入

 

企業が成長し人員が増加する中、属人化した管理会計で全体把握が困難になり、管理会計と財務会計の一致に時間がかかる、経営会議でも数字が合わないといった問題が多発していた。そこで、SOEIシステムというオリジナルのデータベースを導入し、扱うデータを一本化していった。

既存のシステムをつなぎ合わせる方法だと技術者が多数いる現状には合わないため、オリジナルでの導入に踏み切った。構想から約1年半、様々な階層の社員で構成されるプロジェクトチームを組成し、途中段階から試験的に使用しながら改善を繰り返し、あるべき姿や導入後の効果は社長自身が示しながら導入まで至った。その結果、1人あたり400万円、残業工数換算で約6,400時間を削減でき、導入から3年で投資額を回収することができた。

 

オリジナル収益管理「SOEIシステム」導入により、生産性向上を実現
オリジナル収益管理「SOEIシステム」導入により、生産性向上を実現

 

まなびのポイント 3:職業訓練校と階層別教育によるSOEI教育体系

 

人材育成のための「SOEIグループ職業訓練校」を2018年に設立し、若山社長自ら理事長を務めている。社長就任当初、教育システムは一切整っておらず、現場でのOJTにおいても旧態依然の状態であったことが、職業訓練校を設置するきっかけとなった。東京都と雇用能力開発機構から認定を受けた職業訓練校は入社後11日間で実施され、未経験であっても一から作業を学ぶことができる。また、文系の採用も多く、この職業訓練校があるという理由で入社を決めた社員も少なくない。

階層別研修では一部社長自らが登壇し、講師として教育を行う。現場の教育とは切り離した状況で、中期経営計画やキャリアプラン、経済・業界動向について話す場を設け、対面でのコミュニケーションを重視しながら、社長業の中でも教育に多く時間を割いている。

 

SOEI教育システムの一環である「職業訓練校」。11日間の教育を実施し、未経験でも現場に入りやすい環境をつくる
SOEI教育システムの一環である「職業訓練校」。11日間の教育を実施し、未経験でも現場に入りやすい環境をつくる