「はかる」を究めて全世界・全産業に挑む「勝てるニッチ市場」創出戦略 A&Dホロンホールディングス
A&Dホロンホールディングス 代表取締役執行役員社長 森島 泰信氏
タナベコンサルティング・石丸(以降、石丸) 家庭用ヘルスケア製品から自動車産業・航空宇宙産業用の最先端測定システムまで、幅広い製品を世界各地で提供する株式会社A&Dホロンホールディングス(以降、A&DホロンHD)は、1977年の創業以来「はかる」技術に徹してこだわり、磨いておられます。世界中に新たなニッチ市場を創出し、経常利益率13%を超える高収益企業に成長させた森島社長にお話を伺います。まず、これまでの歩みをどのように振り返られますか。
A&DホロンHD・森島氏(以降、森島) 47年前、創業メンバーは14名でした。当時から今のような会社を想定してスタートしたわけではなく、「当社の技術で作れるものは、何でも作ろう」と必死に道を切り開いてきた結果として今があります。
最初は電圧計、つまり電子計測器からスタートしたのですが、なかなか日の目を見ませんでした。そのような中、計量器の電子化が求められたタイミングに、顧客からロードセル変換器(荷重を検出して電気信号に変換するセンサー)の開発を依頼されたのです。好機に恵まれ、この事業が一気に花開きました。
それからは、とにかく計量器であれば何でもやろうと、1987年に売上高100億円まで急成長し、事業の基盤を築きました。その後、血圧計を手掛けていた会社と統合し、バブル崩壊後は「当社の技術が生かせるならば」と、自動車産業を含めて新しい事業に幅広く挑戦し続けてきました。私はもともとメカニカルエンジニアなのですが、学生のころから、将来はエレクトロニクス産業が伸びるだろうと肌で感じていました。
石丸 社員の方々とお話しすると、漏れなく「自社の強みは『はかる』技術です」と断言されます。この共通認識は、どのように浸透していったのでしょうか。
森島 「はかる」技術は、産業のマザーツールとも言われます。あらゆる産業において「はかる」ニーズが存在する。ただし、個々の産業別に見ると、市場は決して大きくありません。
例えば、電子天びんは世界的に見ても1000億円前後のマーケットです。大手企業にとっては市場規模が小さくてターゲットにならない場合が多いのです。しかも、市場規模とは裏腹に、深くて新しい技術が求められる。
私たちは「技術屋集団」ですので、新しい技術に対する好奇心や挑戦する力を持っています。理屈ではなく肌感覚で、当社の技術で成功すると感じたマーケットには積極的に挑戦してきました。その結果、現在はさまざまな「はかる」事業を展開できています。しかし、いま手掛けている分野は、全体のごく一部です。まだ十分に開拓の余地があると思っています。
石丸 小さくてもマーケットを見いだして、自社のコア技術を展開することで成長されてきたことが分かりました。顧客とはどのように向き合ってこられたのでしょうか。
森島 まず、当社が強みとする「8つの基盤技術(アナログ回路技術、デジタル回路技術、金属膜・箔技術、信号処理技術、ソフト開発のためのツール技術、計測データ管理技術、CAEを用いた設計技術、物理現象のモデル化技術)」を常に磨いて進化させながら、顧客ごとにそれぞれ異なる「アプリケーション技術」を取り入れて、開発スピードや生産効率の向上に貢献してきました。
事業が軌道に乗り始めてからは、より意識的に基盤技術とアプリケーション技術を分けて考えるようになりました。アプリケーション技術は「お客さまありき」です。顧客のニーズをいち早く理解し、現場の評価を得ながら磨いてきました。
石丸 「現実」「現場」「現品」を大切に、いわゆる「三現主義」で事業を進めてこられたのですね。
金融機関にて10年超の営業経験を経てタナベコンサルティングへ入社。クライアントの成長に向け、将来のマーケットシナリオ変化を踏まえたビジョン・中期経営計画・事業戦略の構築で、「今後の成長の道筋をつくる」ことを得意とする。また現場においては、決めたことをやり切る自立・自律した強い企業づくり、社員づくりを推進し、クライアントの成長を数多く支援している。