ビジネスモデルイノベーション研究会では、「両利きの経営」における「知の探索と深化の融合・結合の実践」をテーマに様々な分野における秀逸なビジネスモデルを構築し、成功している優良企業を視察訪問している。
第11期第3回のテーマを「ドメインの再定義で挑む新たなステージ」とし、サブテーマに下記3点をおいて、ゲスト企業の視察を実施した。
- 不変のパーパスとアップデートするドメインが提供する新たな価値
- CXを最大化する体感・体験価値の共創
- DX実装によって描く企業・自治体の進化型
研究会参加者は、ワークマンの講話、前橋まちなかエージェンシーの講話、前橋のまちなか視察、ヤマダホームズの講演、スマートハウスの視察から、新たな領域への可能性を感じ、ドメインを再定義し成長し続ける企業の要諦について学びを深めた。
開催日時:2024年6月19日(群馬開催)
株式会社ヤマダホームズ
代表取締役 兼 社長執行役員 清村 浩一氏
ヤマダホームズは、ヤマダホールディングスグループが掲げるコンセプト「くらしをシアワセにする、ぜんぶ。」のもと住まいづくりを中心として顧客のより豊かな暮らしの実現をサポートする総合ハウスメーカー。創業70年の安心をもとに、高いデザイン性と確かな建築技術による全国約17万棟の家づくりの実績と全国100以上の展示場のネットワークを有する同社が展開する「くらしまるごと」戦略を学ぶ。
前橋吉岡展示場のスマートハウス
2009年~2011年に省エネ家電を推奨するために実施されたエコポイント制度を背景とした家電ブーム・地デジへの転換期に、ヤマダデンキは最大の売上を上げた。当時(2011年)の家電の年間需要は例年需要の8兆円の倍近くとなる15兆円規模まで拡大していたが、翌年に需要のピークを超えて市場規模は6兆円へと縮小した。
そのような厳しい環境下で創業者である山田会長は従業員を守るため、主事業である電気と「衣食住」の中で親和性のある「住」に注目して新領域である住宅事業への展開を進めた。1つのシンボル的なブランドを構築し、売るものを限定し、効率を求めて新事業を拡大させた。その後デンキセグメントを中心として「住」に親和性のある事業領域においてM&Aを繰り返すことで「住建・金融・環境・その他」とセグメントを拡大し、「くらしまるごと」戦略を推進する中で人々の暮らしを支える体制を整備している。
EV販売と協業したことをきっかけとして、「EVと家をセットにして、新たなヤマダのスマートハウスを誕生させよう」という山田会長の構想をもとに1週間と経たないうちに原案が完成した。ヤマダのスマートハウスの特徴としては、「動く蓄電池としてのEV車」を標準セットしていることと併せて、太陽光発電、V2Hを組み合わせることで環境にも配慮し、かつ自然災害にも対応可能な“自給自足の生活”を実現可能にしているというところである。
ヤマダのスマートハウスは「創エネ・蓄エネ・省エネ・EV」を中心として「エンタメ・健康・セキュリティ・繋がるIoT」という8つのポイントを詰め込んだ次世代の住宅となっている。
EVを蓄電池としたスマートハウス
ヤマダホームズが年間500棟~1000棟の販売を目指すのはYAMADAスマートシティ構想を実現するためである。家で発電した電気を電気が⾜りない家庭に直接供給できる VPP(バーチャル・パワー・プラント)社会はすぐそこまで来ている。そのような中でヤマダホールディングスグループが手掛ける住宅で、日中に蓄えた電力を限られた範囲のみならず、遠く離れた街同士でも、まるでひとつの街のように必要なところに電力を供給し合うことを可能とする、仮想電力会社の役割をヤマダグループが担うことを目標としている。
スマートハウス1000棟分のネットワークで小水力発電所1基分ほどの発電量を補うことができるため、各家庭でつくった余剰電力を足りない家庭に回すことで、再生可能エネルギーを循環させるまちづくりを目指す。