【第6回の趣旨】
タナベコンサルティングのマネジメントDX研究会は、デジタル戦略のケーススタディー・ワークショップを通じてデジタル戦略のロードマップを描くことを目的としている。「従来の見える化手法とDXを横断し、マネジメントをアップデートする」という今期テーマの下、第6回は「デジタルインベストメント(デジタル投資)」について学んだ。
この投資は「システム投資」に限らず、人材の採用・育成・活躍・定着などの「人的投資」や「働き方(環境整備)」の投資も含まれる。研究会参加者は、最新のAI技術を活用したDX実現のための価値共創拠点「RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE TOKYO」(以降、 RICOH BIL TOKYO)の視察を行い、リコーの考えるAI活用について、同社 AIインテグレーションセンター所長・梅津良昭氏の講話を聞いた。
開催日時:2024年7月23日(東京開催)
デジタルサービスビジネスユニット AIインテグレーションセンター 所長 梅津 良昭 氏
はじめに
1936年設立のリコーは感光紙事業やカメラ事業を展開し、1955年に事務機分野へ進出。1974年に世界で初めて事務用高速ファクシミリを発売した。その後、「機械にできることは機械に任せ、人はより創造的な仕事をするべきだ」という思いから、1977年に業界で初めてOA(オフィスオートメーション)を提唱し、オフィスの生産性向上を支援してきた。
環境変化で働き方が変わった今、改めてOAの考え方にも通じた「“はたらく”に歓びを」を宣言。未来起点で顧客へ新しい価値を提供するため日々活動している。
企業理念「リコーウェイ」 出所:リコーのコーポレートサイト
まなびのポイント1:体験と対話から生まれるアイデアや未来構想
品川駅にほど近いRICOH BIL TOKYOは、リコーが蓄積してきた多分野にわたる現場のナレッジへアクセス可能で、新しい視点を提供している。AIをはじめとする、リコーの技術を体験できるのはもちろん、経験あるファシリテーターとの対話でビジネスの課題を深掘りして変革への意識を醸成し、共創による課題解決を探索する。
RICOH BIL TOKYOのロゴは山をモチーフにしており、各施設の名称も登山に由来している。「共創DX」を登山にたとえ、ビジョンに共感できるメンバーが山登りのようにパーティーを組み、課題解決という山頂を共に目指していくのである。新たなアイデアを創造するためには「同じビジョンをもつメンバー」と「ビジョンを達成するための情報と環境」が必要ということだ。
また、EmoTAG(センシングデバイス)でうなずきと発話量の収集、エリアごとの活動データの可視化や分析なども行い、さらなる創造の場としての進化し続けている。
RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE TOKYOのデモエリア
まなびのポイント2:リコーの強みで新たな価値をデジタルから生み出す
リコーのAIの強みは画像空間認識系と自然言語系である。ドキュメント領域で培った「アナログデータのデジタルへの置き換え(デジタイゼーション)」から、「データの活用(デジタライゼーション)」を経て、「新たな価値創造(DX)」へとつなげている。
例えば、リアルタイム映像解析技術は、暗黙知であったベテランの業務を可視化し、ロールモデル化することで、技能伝承の円滑化や業務効率化へつなげることができる。
RICOH BIL TOKYOは、リコーの画像空間認識技術を体験し、収集したデータをどう活用すれば自社の課題解決につながるかを考えることができる絶好の環境である。
昨今、データ利活用の重要性と活用できる人材が注目されているが、その基盤となるデータ収集技術や収集のポイント(例えば骨格データや点群データなど)を押さえるのが重要であることを体感できた。
出所:RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE TOKYOホームページ
まなびのポイント3:リコーが提供する生成AI(使い勝手の伝承者)
生成AI市場は、「ChatGPT」で情報収集する段階から、企業特化のLLM(大規模言語モデル)を作成し、セキュアで使い勝手の良い、実務で使えるAIソリューションへと変化している。
リコーでもRAG(検索拡張生成)技術を活用して社内ドキュメントを要約し、営業活動の効率化や高度化を実現。汎用LLMでは得られない「使い勝手」を自社で体験し、社内実践の経験値を提供する“伝承者”として顧客価値向上に寄与している。
企業内に散在しているナレッジやドキュメントをAIで利活用するリコーの「仕事のAI」の一つにRAGと生成AIを組み合わせた「RICOHデジタルバディ」がある。社内データ活用サービスであり、社内データを登録するだけで、部門・業務単位のAIエージェントを構築できる。
社内規定について知りたい時、顧客に提案する商材を探したい時、過去の事例を参考にしたい時など幅広いシーンで、業務付加価値を高める“相棒”となる。
梅津氏の講話の様子