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コラム 2024.09.04

約4割がCFO(最高財務責任者)を配置するも、約4割は採用予定なし 「2024年度 企業価値向上に向けた取り組みに関するアンケート調査」リポート

タナベコンサルティングは、上場企業を中心とする全国の企業を対象に実施したアンケート調査結果(有効回答数:186件)を基に、2024年7月、「企業価値向上に向けた取り組みに関するアンケート調査REPORT」をまとめた。調査結果の一部を抜粋して紹介する。

 

調査結果サマリー
1.半数以上が中期的(3年~5年)な経営戦略・経営計画を策定・公表。さらに、その半数以上は「長期的な経営戦略」も策定・公表。2.約4割の企業が最高財務責任者(CFO)を配置している一方で、約4割は「(CFOが)いない/当面採用(育成)する予定はない」と回答。3.売上高が大きい企業ほど、「人的資本」と「気候変動対策」に注力。また、約7割が「働き方改革」、約6割が「社員エンゲージメント調査」に取り組んでいる。

 

 

半数以上が中期的(3年~5年)経営戦略・経営計画を策定

 

52.7%が「中期的(3年~5年)な経営戦略や経営計画を策定し、社外に公表している」と回答した。しかし、33.9%の企業は「策定しているが社外には公開していない」と回答。「策定していない」「今後も策定する予定はない」との回答は計13.5%だった。持続的成長のため、戦略立案が急務であるとともに、社外への情報発信も重要である。

 

 

 

 

 

 

中期経営戦略を策定・公表している企業の半数以上は「長期的な経営戦略」も策定・公表

 

「中期的な経営戦略を策定し、社外に公表している」企業のうち、54.1%が「長期的な経営戦略も策定し、社外に公表している」と回答した。一方で、「中期的な経営戦略を策定しているが社外には公開していない」企業では、長期計画を策定・公表している企業は1.6%にとどまった。

 

中期的な経営戦略を公表している企業ほど、長期的な計画を公表している割合が多く、ステークホルダーとの情報の非対称性の解消を目指し、透明性を高める努力を行っていることがうかがえる。

 

 

 

 

 

 

約4割の企業がCFO(最高財務責任者)を配置する一方、約4割は「当面採用する予定はない」

 

財務戦略を主管するCFOが社内に存在する企業は全体の40.3%だった。一方で、11.3%の企業はCFOがいるものの十分に機能していないと回答。また、38.7%の企業は「いない/CFOを当面採用(育成)する予定はない」と回答した。

 

 

 

 

 

 

企業価値向上にはCFOの存在と適切な機能が不可欠

 

CFOが存在し機能している企業は、CFOが存在しない企業と比べて「投資回収期間法」(42.7%)や「投下資本利益率(ROIC)」(32.0%)、「内部収益率(IRR)」(24.0%)を重視しているという結果になった。このことから、CFOが存在する企業では、資本効率や収益性を重視した投資判断が行われており、財務戦略の整備が進んでいることが分かる。

 

一方で、CFOが存在しない企業は「投資判断基準が存在しない」(32.2%)という回答が多く、統一された投資判断基準が欠如していることで、投資判断の一貫性や精度に課題があると考えられる。したがって、企業価値向上にはCFOの存在と、その適切な機能が不可欠と言える。

 

 

 

 

 

 

企業価値向上に向け、6割以上が「人的資本戦略の充実」を重視

 

「企業価値向上に向けての経営戦略」として、「人的資本戦略の充実」(60.8%)が最も重視されていた。これは、優れた人材の確保と育成が企業価値向上に直結すると考えられているためと推察できる。次に多かったのは「事業ポートフォリオの見直し」(47.8%)であり、これは経営資源の最適配置と成長分野への集中が求められていることを示している。

 

「価値創造ストーリーの策定」(46.8%)も重要視されており、企業のビジョンや使命を明確にすることで、ステークホルダーとの信頼関係を強化する狙いがあるようだ。また、23.1%の企業が「M&A戦略」を重要と考えており、これも成長戦略の一環として注目されている。こうした結果より、人的資本の充実と戦略的な資源配分が、企業価値向上において重要な要素であることが示唆されている。

 

 

 

 

 

 

売上高が大きい企業ほど、「人的資本」と「気候変動対策」に注力

 

売上高1000億円以上の企業は「人的資本(ダイバーシティー含む)」(27.8%)や「気候変動(TCFD、カーボンニュートラル)」(22.2%)を重視していることが分かった。これらの企業は、多様性と持続可能な環境対策に注力し、高い企業価値を維持していることが示唆される。

 

一方、売上高が50億円未満の企業は、「人的資本」(22.8%)や「従業員の健康と安全」(22.8%)を重視。これらの企業は、人材の多様性と働き方の見直しに力を入れているものの、気候変動対策への取り組みは相対的に低い。

 

売上高が500億~1000億円未満の企業も、「人的資本」(27.9%)や「気候変動」(21.3%)を重視しており、大企業と同様の傾向が見られる。以上より、売上高が大きい企業ほど、人的資本と気候変動対策に注力していることがうかがえる。

 

 

 

 

 

 

約7割が「働き方改革」、約6割が「社員エンゲージメント調査」に取り組んでいる

 

人的資本に関する取り組みは、「働き方改革(テレワークなど)」(68.3%)が最多で、「社員エンゲージメント調査」(57.5%)が続いた。柔軟な働き方と従業員の意識向上が重視されていることが分かる。

 

一方で、「人的資本KPIの設定とマネジメント」(23.7%)や「人材ポートフォリオ計画の策定と運用」(9.7%)といった具体的な数値目標や計画の設定の回答は、比較的少なかった。総じて、企業は柔軟な働き方と従業員の意識向上に注力しているものの、数値目標や具体的な計画の設定には、さらなる取り組みが必要と考えられる。

 

 

 

 

 

 

専門コンサルタントによる総括

 

近年の上場企業における企業価値向上の取り組みは多岐にわたる。これは、従来の財務価値の向上に加えて、ESGの観点、つまり環境負荷の低減、社会貢献活動、ガバナンスの強化など、ステークホルダーから求められることが多様化しているためである。このような背景から、持続可能な経営を推進する企業が増えている。

 

企業価値向上に向けた取り組みは、企業の持続可能な成長と競争力の強化に不可欠である。まず、財務戦略においては、CFOの存在が企業価値向上に大きく寄与することが示されている。特に、株価純資産倍率(PBR)が高い企業ほどCFOの役割が明確であり、戦略的な財務管理が行われている。

 

逆に、CFOが存在しない、または十分に機能していない企業は、財務戦略の欠如が企業価値の向上を妨げている可能性がある。

 

ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みも重要な要素である。企業は、人的資本(ダイバーシティーを含む)や気候変動、コーポレート・ガバナンスなど、幅広いESGテーマに取り組んでいる。特に、PBRの高い企業はこれらの取り組みを積極的に行い、ESG情報の開示も多様な媒体を通じて行っている。これによって企業の透明性と信頼性を高め、投資家やステークホルダーとの関係強化につなげている。

 

 


【調査概要】

調査名称 企業価値向上に向けた取り組みに関するアンケート調査REPORT
調査主体 株式会社タナベコンサルティング
調査手法 インターネットによるアンケート調査
調査対象 全国の企業経営者、役員、経営幹部、経営企画部責任者・担当者など186件(有効回答数)
調査期間 2024年5月13日~2024年5月31日

※各図表の構成比(%)は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。


「企業価値向上に向けた取り組みに関するアンケート調査REPORT」の全体版は、こちらから無料ダウンロードいただけます。