SAGA COLLECTIVEの新作ギフトコレクション「The Sense of Touch」。組合企業でものづくり体験ができるスタディツアー(視察)も開催している
—— SAGA COLLECTIVEは10業種11メーカーで構成された佐賀の異業種協同組合で、現在はカーボンニュートラル商品を企画・開発されています。同組合が発足した背景をお聞かせください。
樺島 私は、父が立ち上げた家具メーカー・レグナテックを27歳で継いで以来、佐賀の伝統的な地場産品である「諸富家具」の認知度向上のため、また地元を盛り上げるために、さまざまなPR活動をしてきました。
2017年、海外輸出に取り組む地場企業が集まる異業種交流会に参加したことでより熱が入り、知り合った経営者たちに声をかけ、販路開拓を軸としたプロジェクト(有志団体)として、SAGA COLLECTIVEを発足させたのです。
—— 参画企業が手掛ける事業には300~400年の歴史を誇る分野もあり、どの企業の商品も品質の高さで支持されています。
樺島 私は、佐賀のものを使った上質な暮らしを世界へ提案したいとずっと考えていました。異業種なら互いに取引先を紹介し合い、販路開拓につながると考えたのです。2018年には、佐賀県知事とともにシンガポールで佐賀県のプロモーションイベントを実施し、異業種連携による海外販路開拓を行いました。
約5年間の活動を経た2021年、プロジェクトを財政面・体制面から持続可能なものとすべく、11社で出資して協同組合として法人化し、販路開拓活動でお世話になった元ジェトロ(日本貿易振興機構)の山口真知さんを事務局長に迎え、新体制で活動をスタートしました。
—— 東京出身の山口さんが、なぜジェトロを退職し、事務局長に就任されたのですか。
山口 2017年に佐賀赴任となり、佐賀県産品の輸出を支援するジェトロの職員として多くの企業との付き合いがありました。その時に感じたのは、歴史と伝統を守る風土が根付く佐賀の企業の奥深さです。
その後、私はインドへ転勤になりました。そして、2020年のコロナ禍で自分を見つめ直した時、頭に浮かんだのが、仕事に打ち込めていた佐賀での日々でした。そこで樺島社長に「事務局長をさせてほしい」と願い出たのです。
樺島 それから活動が本格的になりました。まず、協同組合としての活動目的を新たに定めるために、山口事務局長がマーケティング会社や広告代理店、大学関係者に掛け合い、3つの方針を提示してもらって、組合員で議論を行ったのです。
その中で候補に挙がったのは「大学とのエシカル・ブランディングの強化」でした。長年、自然と地域社会に寄り添って事業を行ってきた各社にとって、「エシカル※1」という概念が感覚的にぴたりとハマりました。そこで、慶應義塾大学メディアデザイン研究科とともに、エシカル・ブランディングに取り組むことになりました。
しかし、初めは会議でなかなか意見が出ませんでした。個別に話を聞き、11社が持ち回りで理事会を開いて議論を重ねるなど、まず自社の存在意義を見いだすことを徹底的に行いました。この会では、各産地や各社の歴史、こだわり、戦略などを学び合い、互いを深く知り合えました。
すると、エシカルに対する組合員の意識はもともと高く、昔から時代に合わせながら、各社とも人に優しい、環境に優しい事業を行ってきたことが分かりました。レグナテックでも、木材チップを粉砕して地元の畜産農家に提供したり、端材をデザイン雑貨などに活用したりしています。
そこで、組合の目的と手段を再整理し、2022年にSAGA COLLECTIVEとしての使命とビジョンを掲げました。使命は「地域の力(自然、伝統、技術、コミュニティ)を次に繋げる」「安心して継承する舞台を整える」、ビジョンは「地域の環境を守り、未来の産業を守る」です。
※1 環境・人・社会などに配慮し、良識に従って考え、行動しようとする概念