「常に人々の健康の増進と生活文化の向上に奉仕する」を社是に、事業で提供する価値によって社会課題を解決していくサンスターグループ。自らが進むべき方向性を「長期ビジョン」として宣言し、持続可能な社会にも貢献する「グループサステナビリティ活動」に取り組んでいる。
「この世で一番重要なことは、自分が『どこ』にいるかではなく、『どの方向へ』向かっているかだ」
19世紀に米国の詩人が残した言葉は今、太平洋を越えて体現されている。創業100周年となる2032年に向け、自社のありたい姿を長期ビジョン(【図表】)として宣言したのが、世界20カ国に拠点を構え、製品・サービスを約100カ国に供給するグループ&グローバル経営を行うサンスターグループだ。
【図表】長期ビジョン:2032年のありたい姿(CSVの観点)と4つの重点領域(CSRの観点)
「中期経営計画策定の社内議論で、売り上げの伸長だけでなく、CSV※1やCSR※2の観点から長期的な視点で会社を進化させていくために、サステナビリティ推進の機能が必要だと訴えたところから始まりました。全社の動きを見渡せ、社外の報道にも敏感な『感度』の高さから、その機能を広報部が担うことになりました」
そう語るのは、執行役員で広報・サステナビリティ担当兼日本エリア広報部長の鈴木久美子氏である。「感度」とは、社是を現代にふさわしい表現へ翻訳し、自社の強みを生かして社会課題解決に寄与する新事業を創造する行動につなげやすくしようという意識だ。もう1つは、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点から見たとき、社会の要請に応えきれていないという危機感からくる気付きである。
この気付きをきっかけに、サンスターが将来どのような会社になりたいかを、経営トップや役員、幹部で議論して深め、社是をより具体化して長期ビジョンに落とし込んでいった。
「サンスターがあって良かった」。そう言われて選ばれる存在になり、ステークホルダーと良い関係性を築きながら発展を遂げていく姿を、2019年に長期ビジョンとして発表。その実現を下支えし、社会の要請に応える活動として、重点的に取り組む4つの領域「パートナーシップ・人財・環境・経営基盤」も定めた。
「長期ビジョンは、CSVによる新事業創造という攻めの要素と、社会の要請に応える守りの要素で構成されています。社内ヒアリングや他社ベンチマーク、取引先から見たCSR分析のレーダーチャートといった多様な視点から、『サンスターの強みを生かしたCSV』『CSRの強みと弱み』を明確化し、その中で強化が急がれる4つの領域を優先的に始めました」と、広報部サステナビリティグループ長の草野彰吾氏は話す。
真っ先に着手した取り組みが「環境」だ。2020年1月、「グループ全体でグローバルに取り組む」とグループ代表の金田善博氏が宣言。1年間の社内議論を経て2021年3月に7項目の数値目標を発表した。
消費財事業の容器・包装材は、植物由来/リサイクルプラスチックの使用比率50%、使用後のリサイクル/リユース可能な材料比率100%などを、2030年までに達成することを目指している。
「品質や価格だけではなく、どれだけ環境負荷を軽減できているかなど、お客さまの選択基準が変わり始めており、若い世代ほど顕著です。これからさらに、サンスターが社会に対してどのような貢献をするのかが問われていくでしょう」(鈴木氏)
※1…Creating Shared Value:共通価値の創造。事業で社会課題解決に貢献すること
※2…Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任